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ごちゃまぜヒーロー  作者: がっかり亭
ごちゃまぜヒーロー編
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18/59

女子高潜入大作戦・3

 しばらく時がたち、オレたち小屋組がヒマをもてあまし、ウノでもやろうかなどと言い始めた頃、唐突に通信が入った。


「映像共有を再開するよ!」


 小声ながらも強い語気のすももの声。

 それに呼応し、持ち込んだモニターに映像が映し出される。


「あっ……!」


 それを見た瞬間、オレ達は声を上げていた。

 同時に、すももがなぜ通信を再開したのかも理解する。

 そこに映し出されていたのは――


「うわあ……」


 セ(・)ー(・)ラ(・)ー(・)服(・)を(・)着(・)た(・)チ(・)ョ(・)ベ(・)リ(・)バ(・)ス(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 20代後半に見えるチョベリバスがその姿なのは、何と言うか、いや、何とも言いようがない。いつもの片眼鏡も異様だ。

 本人が何かノリノリに見えるのも、言葉を詰まらせる。


 PCが並んでいるので視聴覚室なのだろうが、妙に薄暗い。日中だというのにカーテンが閉まっているからだろう。

 そんな部屋の中に、5、6人の女子生徒が集まっている。

 その中心にチョベリバスがいるのだ。


 別に不審者として取り囲まれているというわけではないらしく、むしろ女子生徒たちは好意的なようにも見える。

 いや、むしろ尊敬というか、崇拝するような目で見られているんじゃないか?


 すももはチョベリバスに見つからないように、教室の入り口から覗いている形なので、いまいち見づらい部分もあるが。


「……すもも、奴は何をしているんだ?」


 アオイも面食らいつつ、すももに声をかける。


「……うん、どうも校内で『あるウワサ』が流行っててさ。私が任務で抜けてたここ一週間くらいの間に広まったみたいで、それを調べに来たんだけど……」


「……ウワサ?」


 オレも小声で聞く。


「……そう、それがね、『よく当たる占いをする先輩がいる』って言うの。でも、私たちは3年生だから、校内に先輩なんかいるわけがないのに、でもみんな不思議に思っていないの……」

「なるほど。ジャフウスイの認識阻害能力か。理力を持つ君たちにのみ、その影響を受けず、真実を見抜く事ができるわけだな」


 博士の言葉通り、ジャフウスイは意味不明な作戦をよく行うが、それを被害者がおかしいと認識できないケースが多い。

 それは一定の範囲内でのみ起こり、時間と共に広がっていく。

 奴らは「パニパニ空間」などとふざけた名前でそれを呼んでいるようだが、恐るべき能力だと言っていい。

 多くの場合、そのフィールドを日本全土に広げようとしてくるのだ。


「それで、彼女の目的はなんですかね? 占いをしているだけではないのでしょう?」


 チャンドラはマイペースに踊りながら言う。

 すもももまさかインカムの先に踊っているとは思うまい。


「そうそう。そうなの。何でも、最初はよく当たる恋愛占いって話だったみたいなんだけど、占いをしてもらってから、何でもかんでも占いを頼るようになっちゃうって……まだ数は少ないみたいなんだけど……」


「……そういう事か」


 占いなんかで何をするかと思ったが、依存させるってわけか。

 ただでさえ、奴らは認識に干渉をする。

 きっかけ一つで洗脳するのも、難しくないんだろう。


「それで、エニシは何をしているんだ?」


 姿も見えないし、こちらの会話に参加する様子も無い。


「うん、私はチョベリバスに顔を覚えられているかもしれないから、変装してるミドリちゃんが接触してるの。上手く誘い出せれば、みんなと合流できるし」


 よくよく見れば、取り巻きの少女たちの中に、ミドリことエニシも居た。

 なるほど、あの距離なら下手に喋れなくても不思議じゃない。


「エニシのマイクの感度を上げてみよう」


 博士が機材のツマミを回す。

 すると、チョベリバスの声が聞こえてくる。


「そうね、あなたのラッキーカラーは虹色。ラッキー方位は丑寅」


 確かに、熟練の占い師のような雰囲気を醸し出している。

 PCをどかしたらしい机の上には、水晶ドクロが置かれており、その前にろうそくを持っていき、水晶越しに揺らめく火で占っているらしい。

 異常に凝っているが、チョベリバスは形から入る事が多いように感じる。


 しばらく、女生徒たちを占っていたが、エニシの番がやってきた。


「わ、私も占って欲しいです」


 おずおずと言うエニシ。

 本当に少女にしか見えないし、チョベリバスも全く疑った様子も無い。


「いいわよ」


 チョベリバスの片眼鏡がきらりと輝く。


「あなたは初めてね。じゃあ、ドクロの目を見て」

「は、はぁ……」


 おずおずとドクロを覗き込むエニシ。かがみこむ際、スカートを気にしているのも、妙に慣れているように思うんだが、気のせいだと信じたい。

 そのドクロの眼窩は、向かい側のろうそくの火を映し、無いはずの眼を輝かせる。

 エニシは、バレないように俯き、直視しないようにしているようだ。

 理力で守られているとしても、効かないという保証はない。いい判断だ。


「フフ……あなたの運命は……ふーん」


 チョベリバスは、思わせぶりに笑う。

 バレたか――

 そう思って身構えたが、そうではないらしい。


「あなた、女難の相が出ているわね。しかも相当に酷いわコレ……女の子でこんなに出てる人間見た事ないわ、うわー……」


 チョベリバス引いてるやん!

 よっぽど酷いんだろうな。人間とか言っちゃってるし。


「ええ……心当たりがあります……ハハッ」


 その乾いた笑いはやめてくれエニシ。

 なんか心が痛い。


「まぁいいわ。それで、どの男と両想いになりたいのかしら?」


 ふむ。今のは、前フリって事か。

 確かに恋占いって話だしな。


「あ、そ、そうだ。センパイは狙っている人とかいないんですか? もし被っていたらアレですし……」


 ん? どういう事だ?

 エニシの作戦がよくわからないな。


「あら、私は気にする必要はないわ。なぜなら、私の愛しいあの方は、学生ではないのだから」

「え? そうなんですか? どんな方なんです?」


 聞かれた事が嬉しかったのか、満面の笑みを見せるチョベリバス。


「あの方は、真っ赤に燃える瞳にたくましい肉体……他に比類なき存在よ」


 真っ赤な目?

 別にサゲール将軍の眼は赤くないしな……。

 そんな人間はいないだろうし、たぶん化け物なんだろう。


「そ、その人なら、今、カーテンの隙間から、姿が見えたような……」

「なんですって!」


 血相を変えてチョベリバスが窓に向かって行く。

 カーテンなんてほとんど開いてないし無理のある誘導だと思うんだが、まともに見てすらいないのかチョベリバスはそのまま突っ込んだ。

 カーテンを開けるや否や、ガラスを破ってそのまま飛び出して行く。

 その姿が真下に消えた。


「三階だよここ!?」


 すももが大声を上げた。

 そこまで好きな相手というのもすごいな……。

 あの勢いで迫られる相手はたまったもんじゃないだろう……。

 誰だか知らないが……強く生きてくれ。


「おい、ウシオ! ボサボサするな!」


 アオイは既に小屋から飛び出していた。


「お、おう」


 アイツの言うとおりだ。

 チョベリバスの勢いにのまれていたが、エニシの見事な誘導で奴は校庭に釣り出されている。

 アオイの後を追い、オレとチャンドラは飛び出して行った。

 その勢いのまま変身し、一気に校庭に滑り込む。


 すると校庭に緑色の頭を振り回しながら、鬼気迫る形相で思い人を探しているチョベリバスと、その背後の窓から飛び降りつつ変身するエニシとすもも。

 すももがスカートを押さえているのはわかるが、エニシが全く同じポーズだったのは……まさかアイツ下まで……?


 ……いやそんな事はどうでもいい!


「そこまでだチョベリバス!」


 チョベリバスに指を突き付ける。意識をこちらに向ける事で、学校へ被害が出ないようにしなくてはならない。


「ゴリュウジャー!?」


 目を白黒させるチョベリバス。


「お前の企みはここまでだ!」

「うっさい! そんな事はどうでもいいのよ! 来なさい! クリスタルフウスイ!」


 奴の絶叫に合わせ、視聴覚室から水晶ドクロが飛び出してきた。


「あいつらを倒しときなさい!」


 ドクロは光に包まれると、一瞬にして人型サイズに拡大。水晶のボディを持つ、ドクロ頭の怪物へと姿を変えた。


『ドククククク……』


 無機質な鳴き声に、透明の肉体を持つ人間がドクロマスクをかぶったような容貌が相まって、異様とも言える存在感を放つ。

 その透明な頭蓋骨は背後まで見通しているかのようであり、後ろに立つピンクとグリーンも下手に動けない様子で間合いを計っている。


「どこなの~! 私の王子様~!」


 クリスタルフウスイに目を奪われている間に、チョベリバスは走り出していた。

 かぶりを振って、思い人を探しているようだ。

 ダマされた事にまったく気づいていないらしい。


「逃がすか……っ!」


 ブルーがその背を追おうとするも、そこに通信が入る。


「ダメだ! クリスタルフウスイの破壊を優先せよ! それが学生を洗脳する媒体となっている。最優先破壊対象だ!」


 戦闘中に博士からの指令は珍しい。

 だが、それが来た時は必ず的確な指示になっている。


「チッ……だが一理ある。風水獣を優先するぜ!」

「よし、取り囲むぞ!」


 と、構えを取った時、一人グリーンがずいずいと前に出ていく。

 いかに背後とはいえ、あまりにも無防備な動きだ。


「おい! グリーン危ない!」

「ここはわた……ボクにやらせて」


 言い間違いはともかく、静かで、そしてその裏に潜む氷のような鋭さを湛えた声だった。


「あ、ああ……」


 リーダーとしては論外なのかもしれないが、この時、オレは気圧されて頷いていた。


「……お前さえいなければ、ボクはこんな事しなくてよかったんだよね?」

『ドクク……』


 クリスタルフウスイが首だけを180度回転させ、背後を振り返る。

 そして、そのまま固まった。


「悪いけど……おしおきが必要だよね」

『ド、ドク……!』


 無機質なゴリュウジャーのマスク越しに、風水獣は何を見たのか。

 人間性のかけらもないような怪物が、怯えるような声を漏らした。


 そして……いや、その後起きた事の詳細は、語らずにおこう。

 結果として、風水獣は粉々のガラス片となったとだけ伝えておく。


 それから、エニシは怒らせてはいけない、ということも併せて残しておきたい。

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