日々のかけら・1
「カエーン!」
凄まじい爆炎。
炎を操るRE:ショックネスの改造人間・カエンバショウの放つ火球攻撃に、周囲が火の海になる。
くっ、早く辺りに何もないところに移動しないと!
「きゃあっ」
悲鳴が響く。
炎のゆらめきの向こうに、人影が見えた。
倒壊したガレキが燃え上がり、どうやら建物から出られなくなった女性がいるようだ。
「とぅおぁ!」
ミズバショウが炎上しながら立ち上がったかのような姿の、この珍妙な怪人の腹に蹴りを入れ、ひるんだ隙に救出に向かう。
ガレキを弾き飛ばして燃え盛る建物に飛び込んだ。
「大丈夫か!?」
「え? あ……」
煙があまりに濃く、相手の姿はよく見えない。
だが、ホッパーイヤーの力で見失うことはない。
煙の奥の女性を抱きかかえ、外に出ようとするが、玄関の炎上は激しい。炎がドアを沿って伸びあがり、天井まで炎上させている。
そこから出るならオレが無事だとしても女性はただではすまないだろう。
「しっかりつかまってろよ」
「え」
ホッパーエコーで周囲の地形を把握、そのまま煙を突っ切り、階段を駆け上がると正面の窓を突き破る。
ガラスの割れるけたたましい音とともに外へ飛び出した。
まとわりつく煙を突っ切り、太陽の光が――
「は?」
思わず間抜けな声が漏れる。
オレの手の中にいたのは見知った顔だった。
「ちょ……ちょっと痛い……」
「お、お前はチョベリバス……!?」
他に間違えようがない。
こんな露出度高い服来て、今時執事でもつけてないようなモノクルつけた女なんか他にいるか。
二階からの着地の衝撃など、比べ物にならない。
「な、なんで知ってるのよ」
「え?」
言われてみれば、オレは今、仮面ホッパーとして闘っていた。
コイツがチョベリバスというのはゴリュウレッドしか知らない情報だ。
ま、まずい……。
正体がバレたら終わりだ。
「無礼者っ! 軽々しく私の体に触れるなんて」
「時間がない。オレはいく」
「ちょっ……聞きなさいよ!」
わめくチョベリバスをその場に下ろし、カエンバショウのいる方へ走りだした。
後ろで何か喚いている気もするが知らん。
その勢いのまま、まだこちらに気づいていないカエンバショウにキックを放つ。
「うわあああ!? もうなんかおまえのせいだっ!」
「カエ?」
振り返ったカエンバショウの顔面に両足が突き刺さる。
「カエーン!?」
怪人の断末魔が、よく晴れた空に響き渡った。
※
ジャフウスイのアジト。
「災難ござったなチョベリバス。下賤な犯罪組織のテロなどに巻き込まれるとは」
鎧装束の侍に巨大なV字型のヒゲをつけた異様な姿――サゲール将軍が、慇懃無礼な口ぶりで言う。
「フン……炎なんかで私が死ぬわけないわ」
不満げに鼻をならすチョベリバス。
「そんなことより、あの……真っ赤な目の男は何なの?」
「真っ赤な目とな?」
「あの、クールでたくましい仮面の男よ」
「……たくましい? おそらく仮面ホッパーという輩でござろう」
「仮面ホッパー?」
「ああ。諜報部によれば、何らかのサイボーグで、その犯罪組織と小競り合いをしているようだ。ゴリュウジャーに比べれば取るに足らん相手よ。捨ておけばよかろう」
興味もなさげに、サゲールは言った。
ジャフウスイにとっては秘密結社も人類の一部という認識だ。
注視すべき相手でなかった。
同様に、正の気を使えぬ仮面ホッパーも、気にすべき相手ではない。
ないのだが――
「……」
「どうしたチョベリバス?」
「なんでもないわ」
サゲール将軍の言葉に、チョベリバスは背を向ける。
そして小さく呟いた。
「仮面ホッパー……様」
頬を赤らめる、もうすぐ三百路。
同級生はマリア・テレジア(1717~1780)。
そんな女幹部の春であった。




