10. 閉ざされた真実、混迷を極める帝国のインテリジェンス
翌朝。テリーのセーフハウスのソファには、ピンクのもこもこパジャマを着てだらしなくお腹を出して爆睡している赤い角の少女――『ルビィ』と名付けられた竜王の姿があった。
庭の修繕は、ルビィが「お詫び」として自らの莫大な魔力を大地に還元することで一瞬で元通り(というか、前より肥沃な土壌)に再生され、エクレアの家庭菜園も復活していた。
一方、その頃。
国境周辺で待機していたバルドゥール帝国の作戦本部では、レイやガザが深刻な表情で錯綜する情報を睨みつけていた。
「総監……! 迷いの森で発生した、大焔竜と『謎の超越者テリー』の戦闘データの解析が完了しました。信じられないことに……大焔竜はテリーと相打ち、あるいは奴を巻き込んで【相殺消滅】した可能性が極めて高いです!」
レイが興奮気味に報告する。
テリーは、ルビィを家に引き入れる際周囲への情報漏洩を防ぐため戦闘の最終局面の魔力ログを偽装し、外部からは「両者ともに消滅した」ように見える高度な「情報遮断カモフラージュ(ステルス・パッチ)」を敷いていたのだ。そのため帝国には「テリーがルビィをペットにしている」という真実は完全に隠蔽されていた。
ガザは隻眼を鋭く光らせた。
「……消滅した、だと? 莫迦を言うな。あの怪物がトカゲ一匹と相打ちになるはずがない。これは奴が『死を偽装』し歴史の表舞台から完全に姿を消すための高等な情報戦だ! 奴は今、我々の監視の目を盗み王国のどこかで次の『世界再編』の牙を研いでいるに違いない!」
「では、王国侵攻計画は……?」
「継続だ! 奴が潜伏しているであろう王国を武力で制圧し、焦土の中から奴の身柄を炙り出し我が帝国の軍門に降らせる! 世界の覇権はまだ我が手の中にあるぞ!」
帝国の武力強奪計画は、テリーの完璧すぎる情報隠蔽のせいでより深い「勘違いの泥沼」へと突き進んでいく。
そんな国家の動揺など露知らず、テリーの家では新入り美少女ルビィを加えたさらに賑やかで「絶対に動かない」最高のスローライフが今日もダラダラと続いていくのだった。




