2. 蹂躙される庭園、奪われた「木曜日の恵み」
「あ……」
テリーの口から、魂の抜けたような声が漏れた。
彼が死んだ魚のような目で割れた窓の外を見ると、そこにはあまりにも凄惨なそしてテリーにとって致命的な光景が広がっていた。
古竜が放つ圧倒的な熱波と、着地の一撃によって、テリーが毎日ゴロゴロしながら眺めていた美しい芝生の庭は一瞬で黒焦げのクレーターへと変貌。さらに、エクレアが手塩にかけて育てていた(そしてテリーが近々美味しく食べる予定だった)家庭菜園の完熟トマトや夏野菜の苗が、無残にも踏み荒らされ、焼き尽くされていた。
しかし、何よりテリーの逆鱗に触れたのは玄関前の光景だった。
昨日は木曜日。それは、王都の最高級商会が運営する大陸横断魔導定期便『コプ・デ・リーア』の週に一度の配達日だった。
玄関前の防魔保冷箱に厳重に保管されていたキンキンに冷えた麦酒(発泡魔導酒)の24缶入りケース、大量発注した果汁柑橘酒、そしてテリーが何より楽しみにしていた東方の秘境から取り寄せた期間限定の高級甘味氷の箱が、古竜の巨大な足元でペシャンコに押し潰されていたのだ。
ドクン、とテリーの脳内で何かが弾ける音がした。
いつもなら、どれだけ帝国が裏で画策しようが王国の貴族が騒ごうが「めんどくさい」の一言で切り捨ててきたテリーの瞳に、初めて暗く底知れない「怒りの炎」が宿った。
「……俺のアイス。……俺の麦酒。……俺の、一歩も動かなくていい平和な空間が……。おい、トカゲ。お前、自分が何したか分かってんの?」
テリーはゆっくりと立ち上がった。その瞬間、セーフハウスを中心に空間の質量が爆発的に跳ね上がった。




