2. 第一の調査「難攻不落のセーフハウスと、防衛結界の真実」
王都から遠く離れた不気味な静寂が包む「迷いの森」。その境界線にひっそりと佇むテリーのセーフハウスの周囲にレイ率いる帝国の特級潜入班が息を潜めていた。
「これより対象の邸宅への隠密侵入を開始する。各自、魔力隠蔽の魔導具を最大展開せよ」
レイの指示で4人の工作員が音もなく庭へと滑り込んだ。彼らは一国の王宮すら容易に突破できる、隠密のプロフェッショナルだ。しかし、彼らが庭の芝生に一歩足を踏み入れた瞬間、世界が変貌した。
「――がはっ!? 何だ、この圧倒的な重圧は……!」
突如として、彼らの全身に数トンもの不可視の質量がのしかかった。地面に四つん這いになり、骨がきしむ音に絶叫を堪える工作員たち。テリーが「ゴロゴロしている時に庭の虫がうるさいから」という理由だけで常時展開している、全自動の多層防御結界『アンチ・バグ・システム』に引っかかったのだ。
さらに、レイが命からがら視線を上げると、建物の外壁の隙間に、ミロン単位で刻まれた見たこともない超古代の多重魔導式(ハッキング術式)が青白く不気味に発光しているのが見えた。
「ば、馬鹿な……! 空間そのものが完全に隔離、再構成されている……。この結界の構築難易度は、帝国の誇る大魔導師団が100年かけても不可能なレベルだぞ。潜入など不可能、近づくだけで分子レベルで消滅させられる……!」
レイは、テリーがただ「外界の騒音を100%シャットアウトして熟睡したいだけ」で敷いた最強の結界を「有事の国家間戦争すら想定した絶対防衛要塞」と確信し、恐怖に手を震わせながら記録するのだった。




