6. 薔薇の伯爵、機能性インナー「ヒートテック」に震撼する
「テリー殿、本日は衣服の仕立てをされていると聞いて我が家の専属デザイナーを連れてきたのだが……」
いつものように定期連絡のために茶室へやってきたローゼンバーグ伯爵。テリーは、完成した部屋着の下に着るための「最後の秘密兵器」を披露した。
「伯爵、ちょうどいいところに。これ、試作で作ったインナーなんですけど皆さんの分もどうぞ」
テリーが差し出したのは、前世の『ヒートテック』を再現した極薄で高密度のインナーシャツだった。
「インナー……? このような薄い向こう側が透けそうな布切れ、冬の辺境では何の役にも立ちませんが……」
伯爵のデザイナーは懐疑的だったが、伯爵自身が試しにそれを豪華な上着の下に着用してみた。そして、茶室の外(雪が舞う森の境界線)へ一歩足を踏み出した瞬間、伯爵は驚天動地した。
「……暖かい。いや、暖かいどころではない! 体内から溢れるわずかな水分と、私の微弱な魔力を熱に変換しこの薄さでありながら最高級の毛皮コートを3枚重ね着しているかのように身体が芯から燃えるようだ……!!」
前世の吸湿発熱繊維の理論に、微弱な火属性の永久術式を組み合わせた『魔力式ヒートインナー』。
「テリー殿……! これがあれば、前線の兵たちは重い鎧の下に、凍えるような防寒着を着込む必要がなくなる! 兵の機動力が数十倍に跳ね上がるぞ! これを我が軍の制式装備として今すぐ国家プロジェクトで――」
「あ、すいません。量産するのダルいんで無理です。これは我が家の『部屋着』用なので」
「へ、部屋着のために、軍事バランスをひっくり返す防寒具を開発したというのか……!?」
伯爵は天を仰ぎ、テリーの「快適さへの執念」の恐ろしさに改めて背筋を震わせるのだった。




