3. シルエットの追求、エクレアの「着痩せ」と現代アパレルの数式
素材が揃い、いよいよ仕立ての工程に入る。テリーはリビングのテーブルに、前世のアパレル知識をもとにした型紙のデザインを、青い魔力光で空間投影していた。
「ただ体を包むだけじゃ駄目なんだ。部屋着の真髄は【ルーズなのに、なぜかスタイルが良く見える】という絶妙なシルエットの計算にある。特にエクレア、お前は無駄に騎士の体型として引き締まってるから、ジャストサイズだと肩幅が強調されて硬い印象になる。ここはあえて『ドロップショルダー(肩のラインを大きく落とす)』と、太もものラインを隠しつつ可愛さを演出する『バルーンシルエット(風船のような膨らみ)』を採用する」
テリーは布地を広げ、空間魔術の刃で型紙通りにスパッと裁断していく。しかし、ここで服飾のド素人であるテリーの計算ミス(バグ)が発覚する。
前世の二次元の型紙をそのまま異世界の三次元(しかも魔力を持つ人間の肉体)に当てはめたため、試着したエクレアの服が彼女の身体から無意識に溢れる「闘気」と干渉。右袖だけが異常に膨らんで、ボディビルダーのようなマッスルな形状に変形してしまったのだ。
「ぼ、ボス……! 左はめちゃくちゃ可愛いスウェットなのに、右腕だけが魔王軍の幹部みたいにゴツくなってしまいました……! これではリラックスできません!」
「しまっ……! 騎士の身体特有の、戦闘時の魔力ラインを計算に入れてなかった! シルフィ、すぐにエクレアの闘気を優しく吸収して霧散させる『ストレッチ魔法陣』を生地の裏地にミリ単位で縫い込んでくれ!」
「お任せください、我が主。ファッションの乱れは、我が家の風紀の乱れでございます」
精霊シルフィが目にも止まらぬ速さで魔法の針を動かす。テリーが3Dの魔力グラフィックをその場で修正し、筋肉の動きや闘気の放出に合わせて伸縮する「異世界ハイテク・ストレッチ構造」を編み直した。何度も何度も試着と修正を繰り返しようやくエクレアの身体に完璧に馴染む「理想のオーバーサイズ・パーカー」の形状が固定された。




