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4. 海の覇者「クラーケン」の乾燥バグと、潮風の超遠征

動物系のダシだけでは、スープに「奥深さ」が足りない。テリーが目指すのは、動物系のガツンとしたパンチと魚介系の繊細な旨味を掛け合わせた前世で一世を風靡した『Wスープ(ダブルスープ)』の再現だった。


最高級の昆布と煮干し(魚介ダシ)が必要だが、内陸の王都周辺で手に入る乾燥魚はどれも生臭くダシの概念がないためドロドロに腐りかけたものばかりだった。



「あー、ダルい。ダルすぎるけど……海、行くか。シルフィ、東の果ての未開海岸の座標を指定するから、一発で転送頼む」



一瞬にして空間が切り替わり潮風が吹き抜ける辺境の断崖絶壁へと降り立ったテリーたち。

テリーが海面を見下ろすと彼の膨大な魔力に引き寄せられ、船乗りたちに「動く巨大島」として恐れられる伝説の超巨大イカ魔獣『クラーケン』が、無数の触手をのばして海面を割り、咆哮とともに浮上してきた。



「ちょうどいいや。前世でもイカの乾燥ダシって最高のコクが出るんだよね。素材クラーケンの確保は一瞬で終わらせる」



テリーは広範囲氷結魔術を展開。半径数キロの海面ごとクラーケンを一瞬でカチコチの氷漬けにした。ここまでは完璧だった。


しかし、テリーがその巨体を乾燥させようと時間操作魔術で脱水プロセスを強制加速させた瞬間、想定外の事態が起きた。クラーケンの細胞内に含まれる「濃厚な魔力塩分」が急速な乾燥によって結晶化し、水分と一緒に旨味まで全て外へ弾き出してしまったのだ。出来上がったのはカサカサの何の味もしないただの巨大な白い消しゴムのような物体だった。



「あ……失敗した。魔力持ちの生物は、地球の干物の理論じゃ乾燥できないのか……!?」



テリーは頭を抱えた。水分だけを抜き旨味の成分(アミノ酸)を細胞内に定着させるには特殊な「浸透圧の逆転数式」を魔法陣に組み込む必要があった。



「シルフィ、結界の構成を変更。乾燥させるんじゃなく、クラーケンの周囲の『空気中の湿度をマイナス100%』に固定し、さらに重力で水分だけを下へ引き抜く。エクレア、お前は聖剣の熱量で、クラーケンの表面が焦げないように絶妙な温風を送り続けろ」


「温風!? 聖剣はドライヤーではありませんよボス! ……ああっ、でもこれ、角度と熱量の調整がめちゃくちゃ難しいです……!」



吹き荒れる潮風の中、テリーは魔法陣のパラメータを何度も微調整しエクレアは汗だくになりながら聖剣の出力をコントロールした。


数時間の格闘の末、ついに海の上には極限まで旨味が凝縮され引っ張ると黄金の粉が舞うような至高の『クラーケンの特製巨大煮干し』と、海岸の岩場から奇跡的に採取した『魔力昆布』が完成した。テリーの服はすっかり塩まみれになり「二度と海には来ない」と心に誓うのだった。

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