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3. スープの土台、最凶のオークキング狩りと「アク」との総力戦

麺の目処が立ったところでテリーが次に取り組んだのはスープのベースとなる「動物系ダシ(チャーシュー用の肉)」の確保だ。彼が求めるのは、前世の家系ラーメンを凌駕する濃厚でありながらも一切の臭みがないクリーミーな骨物質の抽出である。



「普通の豚の骨じゃあの魔力小麦で作った強靭な細麺の存在感に負ける。もっと野生の、凶悪な魔力の詰まった骨が必要だ。……よし、エクレア。裏山(迷いの森)の奥へ行くぞ」


「はっ! ついにテリー殿が魔王軍の残党狩りに!? この元聖騎士エクレア、命に代えてもお供します!」



ガタッと聖剣を掴んで目を輝かせるエクレアだったが、連れて行かれたのは一国を飢饉に陥れるとされる災害級の巨豚魔獣『オークキング』の巣の目の前だった。


「グルゥァァァ!」と、家ほどもある巨体で突進してくるオークキング。テリーはダルそうにため息をつくと、右手を軽くかざした。



「『重力足枷グラビティ・アンカー』」



一瞬にしてオークキングの周囲の重力が数百倍になり、巨獣は悲鳴を上げて地面にメリメリと陥没し身動きを封じられた。



「よしエクレア、そいつの太ももの骨と適度な脂身のあるバラ肉だけ聖剣の神速で綺麗に解体しろ。あ、絶対に肉を恐怖で緊張させるなよ、味が落ちるから。それと、血抜きは現場で徹底的にな」


「……えっ? 聖剣の奥義『ルミナス・スラッシュ』を、チャーシューの仕込みのために放て、と……?」



不憫な元聖騎士は激しく葛藤したが、テリーの目が本気(職人の目)だったため涙目で奥義を放ち完璧な肉と骨を切り出した。


しかし、本当の苦労はここからだった。持ち帰ったオークキングの巨大な骨をキッチンの大鍋で煮込み始めたところ、魔獣特有の「漆黒の禍々しいアク」が尋常ではない量、噴き出してきたのだ。放置すれば、スープ全体が呪いの毒沼と化してしまう。



「おい、アクの噴出速度が俺の計算を超えてる! シルフィ、火力を限界まで上げつつ空間隔離の魔法でアクだけを秒速で間引き続けろ! エクレア、お前は手動でおたまを持って表面の細かい油膜とアクを1秒に3回のペースで掬い続けろ!」


「は、はい! 聖騎士の全力の動体視力、ここで使わせていただきます! フンッ、フンッ、フンッ!!」


「ああっ、エクレア、油まで掬うな! 旨味が消える! 濁ったアクだけを狙え!」


「無理を言わないでくださいボスー!!」



キッチンは文字通りの戦場と化し、三人がかりで丸一日魔力と肉体を酷使してアクと戦い続けた。その結果、ついに禍々しさは完全に消え去りオークキングの骨髄から抽出された白濁とした信じられないほどクリーミーで濃厚な「奇跡の骨スープ」が完成したのだった。

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