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二度目の「拒絶」

「……愚かな。自ら生を放棄するとは」



至高の女神が眉をひそめ、不快感を露わにする。しかし、異世界の次元崩壊を防ぐための適合者は、前世で「極限の理不尽に耐え抜いた」彼の魂しかいない。神々は即座に二度目の強制転生を執行した。


次に彼が目を覚ましたのは、うっそうとした大森林の中だった。

今度の案内役は、神の血を引くという尊大で屈強な『半神の戦士』だった。



「おい、平民。神々はお前を救世主として選んでくださったのだ。さっさと歩け。これより我が直々に、貴様の惰弱な肉体を鍛え上げて――」


「うるさい。消えろ」



彼は立ち上がり、戦士を完全に無視して歩き出そうとした。



「な、何だと……!?」



神の代弁者として崇められてきた半神の戦士にとって、平民からの侮辱と無視は耐え難い不敬だった。戦士は彫像のように整った顔を怒りで真っ赤に染め、大剣の柄を握る手に凄まじい神力を滾らせた。



「待て、不遜なる平民よ! 我が言葉を耳にしながら足を止めぬか! 神々がどれほどの慈悲をもって貴様に二度目の生を与えたと思っている? 貴様が救うべきは、この美しき世界の無辜の民だ。それを一時の感情で背を向けるなど、どれだけ身勝手なのだ!」


「身勝手なのはどっちだ。頼んでもいない生を押し付けて、ヒーローごっこを強要するなと言っている」



彼は足を止めることなく、冷たい一瞥を戦士に投げかけた。



「世界だの民だの、そんな大きな主語で俺を縛れると思うな。前世でもそうだった。会社の利益のため、社会の歯車として、みんなのために身を粉にして働けと誰もが言った。そうして他人の都合のいい神輿に担ぎ上げられた結果が、あの深夜のオフィスでの孤独な死だ。俺を使い潰したクソ上司どもと、お前たち神の代弁者がやっていることは、何一つ変わらないんだよ」



彼の言葉に込められた底冷えするような憎悪に、半神の戦士は一瞬気圧された。しかし、すぐにそれを己の未熟さへの侮辱と捉え、大剣を引き抜いた。



「黙れ! 神々の崇高な理を、貴様のような矮小な平民の恨み言と同列に語るな! 貴様がそのひねくれた根性を改めぬというなら、我がその惰弱な肉体に直接、神の秩序というものを叩き込んでやる!」


「神の秩序? 笑わせるな。要するに、力で従わせるっていう暴力の別名だろ。前世の『嫌なら辞めろ、代わりはいくらでもいる』っていう脅し文句のほうが、まだ洗練されてたよ。お前たちのやっていることは、ただの不当な拉致と強制労働だ」



彼は戦士に向き直り、そのぎらつく大剣を真っ向から見据えた。



「『神の期待を裏切るな』『お前のために言ってやっているんだ』……前世で耳にタコができるほど聞いた、最高に吐き気のするセリフだ。誰も彼も、俺を自分の都合のいい道具としてしか見ていなかった。お前も、お前をここに遣わした神どもも同じだ。俺の意志なんて最初からどうでもよくて、ただ世界の修復っていう業務をこなす使い捨ての作業員が欲しいだけだろう。だが、あいにく俺はもう、誰の利益のためにも一歩も動かないと決めている。自分の人生を他人に差し出すくらいなら――ここで1秒残らずドブに捨ててやる」


「神々の命を拒み、この我を愚弄するか! ならばその傲慢な魂、叩き直してやる!」



激昂した戦士が、神力を込めた大剣を振り下ろした。本来なら威嚇のつもりだったが、彼は避けることも、神から与えられた防壁を展開することもしなかった。ただ冷たい目で戦士を見つめ、あえてその一撃を正面から受け止めた。


肉体が容易く両断され、彼の魂はみたび神殿へと還る。

その瞬間、神殿には絶対の魔神の凄まじい怒号が響き渡った。



「貴様、何ということをしてくれたのだ!」



神々の怒りは、彼ではなく、彼を殺害した半神の戦士へと向けられた。適合者であるテリーの魂が傷つくことは、世界の崩壊を意味する。

空間そのものが激しく震え、神殿の床に崩れ落ちた半神の戦士は、あまりの神威の凄まじさに平伏しながらガタガタと震え出した。



「お、お許しください、神々よ……! 私はただ、あの平民のあまりの不敬に、少し教育を施しようと……! 殺すつもりはなかったのです! まさか防壁も張らずに、あえて一撃を受けるなどと思いもよらず……っ!」


「言い訳など聞いておらん!! 貴様がどれほどの損失を我らにもたらしたか、その足りぬ頭では理解できんか!」



運命の神の冷酷な声が追いうちをかける。神々の目は冷徹そのものであり、そこには一握りの慈悲も、謝罪を受け入れる余地も存在しなかった。



「世界の楔たる魂を損なうなど、万死に値する。貴様のような愚者に、二度と我が神力を与えることはない」


「ひっ、あ、あああああ……っ!」



戦士は恐怖に顔を歪めながら、弁明の言葉すら遮られ、神々の手によってその場で存在を完全に消滅させられた。光の粒子すら残さず、魂の根本から消し去られる確実な断罪だった。

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