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5. 闇からの刺客、あるいは「無知なる者たちの悪夢」

その日の深夜。王都のハインツ公爵邸から、十数人の黒装束の影が音もなく飛び立ち、『迷いの森』へと向かった。


彼らは王都の裏社会を牛耳る暗殺ギルドの精鋭――通称『黒い牙』。ハインツ公爵から下された指令は「生意気な平民の魔導師を拉致しろ。抵抗するなら手足をへし折っても構わん」という、いつも通りの簡単な仕事のはずだった。



「ここが境界線か。……ふん、ただの平民が人目を忍んで隠れ家にしているだけだな。結界の気配がするが、この市販の『魔力封じの結界石』でも投げておけば、一般の魔導師ごとの結界など一時間は無力化できる」



リーダーの男が鼻で笑い、懐から安価な結晶石を地面に転がした。

彼らは、この結界が「至高の神々がテリーのニート生活を死守するために張った、神界最高峰の絶対防壁」であることなど、夢にも思っていなかった。当然、結界石は何の効果も発揮せず、ただの石コロとして虚しく転がっただけだったが、暗殺者たちはそれに気づくことすらなく、ニヤニヤと下劣な笑みを浮かべて敷地内へ一歩足を突っ込んだ。



「さあ、サクッと終わらせて酒場に――」



――その瞬間、彼らの頭上から、月光を完全に遮るほどの「巨大な絶望」が音もなく降りてきた。



「グルルルルル……」



暗殺者たちが恐怖で首をギチギチと鳴らしながら見上げた。そこには、創世神獣――白銀の巨虎レオが、牙からよだれを垂らしながら、新しく届いた『玩具』を値吞みするような目で彼らを見下ろしていた。本物の神獣が放つ「神の威圧ゴッドプレッシャー」。



「な、何だこの巨大な化け物は……!? ひっ、身体が、動か――」



ガブッ!!!



「ぎゃあああああああ!?!? 脚が、俺の脚があありませんんん!!」



さらに、家の扉がガラリと開き、パジャマ姿のエクレアが、聖剣をだらしなく引きずりながら非常に眠そうな目で歩いてきた。



「……まったく、夜の十二時以降に勝手に突入してくるなんて、我が家の睡眠規約に対する重大な違反行為です。お前たち、雇い主に残業代も出されてないのに夜これなんて、本当に哀れなブラック労働者ですね。私がその歪んだ根性を叩き直してあげます」


「問答無用です! 覚悟しなさい!」



ドカバキグシャァァン!! という、真夜中の森に響き渡る一方的な蹂順劇。テリーの素性も、この家の異常性も何一つ知らず、「ただの平民一人」をナメてかかった暗殺者たちは、テリーの部屋の呼び鈴を鳴らすことすらできず、神獣の爪と、元聖騎士の容赦ない打撃によって、一瞬で肉団子へと変えられていくのだった。

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