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4. 「市場凍結」という名の嫌がらせ

「――主よ。買い出しに向かったリサ殿から、緊急の通信が入っております」



快適なリビングで、いつものようにエクレアが搾った特製醤油を使った「焼きおにぎり」を食べていたテリーに、シルフィが冷徹な報告をもたらした。



「リサが? どうしたの?」


「王都の商業ギルド、および主要な食材・スパイス商店が、一斉に我が家との取引を凍結したとのことです。背後にいるのは、ハインツ・フォン・グラナート公爵。公爵の命令により、テリーという名に関わる者へ物資を販売した店舗は、王都からの追放処分となる、と」


「……は?」




テリーの動きがピタリと止まった。


そこへ、留守番を言い渡されていたはずのエクレアが、息を切らせてリビングに飛び込んできた。彼女は、王都の不穏な空気を察知して独自に動いていたのだ。



「テリー殿! 大変です! ハインツ公爵が動きました! あの男は王都の『中央闇部』をも動かし、冒険者ギルドに対しても『テリーを犯罪者として指名手配せよ』と強硬な圧力をかけています! リサ殿も、窓口業務から更凍され、自宅謹慎処分に追い込まれたとか……っ!」



エクレアの顔は、怒りと不憫な悔しさで真っ赤に染まっていた。


テリーは、ゆっくりと食べかけの焼きおにぎりを皿に置いた。その顔には、いつものダルそうな表情は一切ない。前世のブラック企業で、徹夜明けにシステムを強制シャットダウンされた時のような、底なしの「キレ気味の静寂」が宿っていた。



「……大豆の仕入れだけじゃなく、リサへの嫌がらせ、おまけに俺の指名手配、か。ハインツ公爵だっけ? あのさぁ……俺、ただダラダラと美味いもの食って生きたいだけなんだけど。なんでどいつもこいつも、俺の有給プライベートを邪魔しにくるわけ?」



テリーは立ち上がり、静かに魔導書のページを開いた。



「いいよ。売ってくれないなら、こっちにも考えがある。経済で殺す(ザマァする)って言っただろ。あの公爵の財布、木っ端微塵にしてやるから」

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