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4. 庭園の害獣駆除(※一国を滅ぼすレベルの災厄)

「主よ、少々問題が発生しました」



シルフィが困ったように、リビングのテリーに告げた。



「我が家の菜園、特にあなたが楽しみにされていた『現代風トマト』の畑ですが……結界の隙間をすり抜けて侵入した『貪食の魔虫(大災厄のバッタ)』の群れに荒らされかけております」


「何だと……!?」



テリーがガタッと立ち上がった。その顔は、魔王軍が襲撃してきたという報告を受けた時よりも、遥かに凶悪で、怒りに満ちていた。

「俺のトマトだぞ!? 毎日魔力を微調整して、前世の『桃太郎トマト』の糖度を再現しようと、どれだけ苦労したと思ってるんだ! 駆除だ、今すぐ全滅させる!!」


その様子を見ていたエクレアは、ここぞとばかりに胸を張った。



「テリー殿! ついに私の出番ですね! 『貪食の魔虫』といえば、かつて一国を飢饉で滅ぼしたという伝説のランクS魔獣の群れ! 我が聖剣の輝きをもって、その害虫どもを――」


「遅い、お前じゃトマトが巻き添えで潰れる」



テリーはエクレアの静止を無視し、裏庭へ一歩踏み出した。

彼が右手を天に掲げると、その指先に、世界の法則を書き換えるほどの超高密度な「魔力圧縮球」が出現した。それは、ただそこにあるだけで、周囲の空間が歪み、光が屈折するほどのエネルギーの塊だった。



「――『精密消滅領域ピクセル・ディザスター』」



テリーが静かに呟いた瞬間、トマト畑の周囲に、無数の「半透明の立方体」の結界が展開した。

そして次の瞬間、トマトの葉や実には一ミリの傷もつけず、そこに止まっていた何万匹もの魔虫の群れだけが、文字通り「塵」すら残さず、光の粒子となって消滅したのだ。


「な……ッ!?」


エクレアはその場でへたり込んだ。

今、テリーが行ったのは単なる大規模魔法ではない。一国を滅ぼす災厄の群れを認知し、その「標的だけ」を完全に選別して世界の構成データから消去するような神の領域の『超精密即死魔術』だ。そんなものを彼は「トマトを守るためだけ」に息をするように使ってみせた。



「ふぅ……危なかった。数個、葉っぱを齧られたか。シルフィ、すぐに成長促進の術式で補修しといてくれ」


「御意に、我が主」



テリーはほっと胸を撫で下ろし、嬉しそうに真っ赤なトマトを収穫している。

エクレアはその圧倒的な「力の無駄遣い」にめまいを覚えた。



(この男は……本当に、その気になれば世界を一日で救える。いや、作り直せる……。なのに、それをトマトのためにしか使わないなんて……! なんというアンバランス、なんという贅沢な男なのだ……!)



不憫な元聖騎士は恐怖を通り越しテリーの底知れない「不真面目な強さ」に奇妙な憧れさえ抱き始めていた。

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