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プロフィティエスヒストリー  作者: Seydlitz
第一章 第三次世界大戦
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第四話 救世主

8月21日。

その日は異様だった。

誰もが皆戦争が始まり、また昔のような空襲に怯える日々が続くと信じて疑わなかった。

しかしその日一日を通して空襲警報がなることは一切なかった。


逆に人々はそれを恐れた。

大規模な空襲が行われる際、その3日ほど前からプツリと攻撃が止むためだ。


しかしこの間の時間を利用しない手はない。


人々はこぞって灰の降る旧市街へ出て遺体収容に取り掛かる。

すでにかなりの時間放置されていた遺体からは腐臭がして、蝿がたかっている。

でもそのまま放置せずにせめて焼いて土に埋めてやりたいという戦中での人々の善意がそこにはあった。


もちろんアイリーンもその考えに大いに賛成であり、積極的に手伝おうとした。

しかし大人たちは「こんな幼い子供にこんな仕事はさせられない」と思い、そのかわり市民に食料を運ぶ係を任された。


小さな子供が元気に食べ物を渡してくれる。

そんな小さなことでも人々は希望を持つことができた。


そんな中、アイリーンは一つの不信感に囚われていた。

「なぜわたしたちがこんなに困っているのに父は来てくれないのか」と。

母や義姉に聞いてもはぐらかされすばかりであり、つい昨日言われた母の「お父さんが来てくれたよ」という言葉を出しても同じだった。

アイリーンはだんだんと顔も知らない父を憎んでいくようになっていった。


でもそれを母たちに言うわけにはいかない。


潮や可奈美、すずは前大戦経験者であり、すずに至っては被爆者である。


そんな古傷を掘り返されている最中の母たちに追い打ちをかけることなど少女には到底できることではなかった。

青空の下、焼け残った電柱の先で、切れた電線だけが風に揺れていた。

その電柱の先から小さなローター音が聞こえてきた。

少女は最初その音が何者が出すものなのかがわからなかった。

そうしているうちに空襲警報が鳴り始め、アイリーンは防空壕へと大急ぎで走って行く。

しかし防空壕周辺の大人たちは中には入らず首を傾げていた。

「どうしてみんなこのなかにはいらないの?」

アイリーンはその中のひとりに聞いてみた。

「ああ、お嬢ちゃんかい。空襲っていうのはね、飛行機でやるものなんだ。『積載量の少ないヘリなんかでやるかね?』ってみんな考えてるのさ」

50代ほどの男性はそう説明してくれた。

そう言われてもアイリーンにはわからないし恐ろしいものに変わりはない。

そうして防空壕の中に入ろうとしたとき、ヘリの側面に白に囲まれた赤丸が見えた。

「ねえ、あれ」

アイリーンが指を指す方向に人々の視線は釘付けになる。

「日の丸?海軍のヘリなのか?あれは…」

「なんだっていい!ついに助けが来たんだ!俺達は助かったんだ!」

不審がる男を横目に若い男性は歓喜の声を上げヘリの着陸場所へ走っていった。

「若いのはすぐに答えを欲しがる、もう少し考えるということをしないのか」

その後をゆっくりついていく男のつぶやきをアイリーンの幼い耳はしっかりと聞き

取っていた。

 *  *  *

三機のヘリが着陸した地点では大勢の人だかりができていた。

ヘリからは大量の物資が運び出され、人々に分け与えられていく。

そのヘリの横に書いてある日の丸の横にはアイリーンには英語でこう書かれている。

『The Neptune’s Fleet』と

彼らは紛れもなく市民にとっての救世主だっただろう。

 *  *  *

アイリーンは母と義姉、そしてシードとともに人だかりのできているところとは反対

のところに来ていた。


アイリーンはなぜここにいるのかがわからない。


しばらくするとヘリから一人の男が降りてきた。


「お久しぶりです、潮さん」

その軍人は簡潔に一言だけ挨拶を述べた。

「ええ、本当に久しぶり。でももっと早く来ても良かったんじゃない?」

母は軍人に向かって鋭い目つきをして質問する。

「もちろん我々だって早く来たかった。しかし気づくのが遅すぎた、地球からSOS信

号を受けたときにはすでに世界中に核兵器がばらまかれていました。我が司令官をの

未来予測は全く違う未来を伝えてきましたからね。本当に悔しい限りですよ」

その軍人は手を握りしめ顔をこわばらせながら話す。それは怒りが肉体を突き抜けて

襲ってくるのではないかと思うほどだった。


「おかあさん、このひとだあれ?」

アイリーンはその雰囲気に少しも感することなく母に聞いた。

「僕はハインリヒ。君のお父さんの部下だよ」

ハインリヒと名乗ったその男は簡潔にそういった。

父の部下。アイリーンに嫌悪感を持たせるには十分な単語だ。

ハインリヒは続ける。

「みんな僕達のことを救世主だと思っているかもしれない。でもそれは違う。僕達は

真の救世主の手足でしかないんだ。その救世主は他でもない、君のお父さんなんだ

よ」


少女の心がざわめく。

あんなにもどうして来てくれないのかと問いただしたい相手がすでに来ており、それ

に自分たちを救った救世主だった。

少女の頭はひどく混乱してしまった。


そんな中アイリーンは鳥たちの様子がおかしいことに気づいた。


頭は混乱していても山の中での経験はそれを超えて全身に伝わる。


それは鳥たちだけでなくすべての生物が危険を感じたときにする行動。


大声を上げ猛スピードで逃げてゆく行動。


次の瞬間、空は赤と黒とオレンジの縞模様に覆われた。


それは海でなにかとんでもないことが起こっていることを人々に伝えた。


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