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プロフィティエスヒストリー  作者: Seydlitz
第三章 学園都市ラディオス
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第三十話 奪還作戦

ユイとの戦闘からはや一日。

アイの左肩の傷は全く治ることはなく、包帯がぐるぐるまきになっている。


怪我の理由は「シタデルの奇襲による怪我」ということになっていた。


あのあと、レイたちのもとに戻ったアイたちはパトロールを中断しユイの捜索を行った。

しかし見つかる気配は一向になく、ただただ時間がすぎるばかり。

このまま見つからないのではないかとみなが諦めかけていた時、聡太が妙なものを見つけた。

(節子と聡太はアイとレイの紹介によってすぐに打ち解けていた)


それは折れた麻酔銃と複数の血痕、そしてタナヴィーの校章が刻まれたM4カービンだった。


ユイは何者かにさらわれたと判断した一行はユイのファンリックから発せられる電波をキャッチすることで位置を掴もうとするも、電波を捉えることはできず、その他の方法でもユイを見つけることはできなかった。


一日が経過した今でもユイの消息はわからないままだった。


 *  *  *


「あ゙〜…。あれ以外のどうやって位置特定の方法があるよ…」


望夢が頭をかきむしりながらつぶやいている。


今は廃校対策委員会の教室で昨日の位置特定の方法をもう一回試しているところだった。

しかし全く成果は上がらない。

最も効果的で簡単なファンリックの電波も当然捉えることはできない。


「ユイちゃん大丈夫でしょうか…。あの子、ああやって男の人らしく振る舞っていますが、根は寂しがりやな子です。どこかで泣いていなければいいんですが…」


カズサが心配そうにうつむきながらつぶやいている。

アケミも珍しく朝早くから来ては、屋上でアンテナを回したりと頑張っている。

シズカは昨日から徹夜でやっていたらしくレイに寝かされているが…。


「あの〜、カズサ先輩…。そんな間抜けたこと言ってる場合ですか?」


アイもタナヴィーのタブレットを使ってユイを探している。

もちろん何も成果はない。


「大事ですよ?ユイちゃんは錯乱すると手がつけられませんからね。さらった人たちのことを心配してるんですよ」

「はあ…」


カズサは笑顔で言うが、そこになんとも言えない強さが上乗せされていた。


「なあ〜、そんな無駄な話ししてんならこっち手伝ってくれよ」

「やってるよ」

「ならいいんだけどよ〜」


望夢も珍しくお手上げモードのようで、机に突っ伏している。

こうなると結構絶望感が来る。


「これ、もしかして電波が弱いんじゃないの?」


アイの後ろからレイが覗き込みながら言ってきた。

その言葉に反応して望夢が勢いよく起き上がる。


「うわびっくりした」

「そうか!どこか地下に閉じ込められているから電波が弱えんだ!」


望夢が大声を上げる。


「アイ!ちょっと手伝え!」

「え?え?なになになに」

「お前の半PM としての力を使いたい。お前の身体とパリロイアを繋ぐあれだ。あの船と接続して屋上でアケミ先輩が使ってる電波の感知知能を増大させる。一瞬だけでも感知させられればどこから来たかわかるだろ?」


急にまくしたてられ一瞬理解に苦しむが、アイの力を使いたいとのことらしい。

というか一瞬でそんな作戦を立てられるとはさすが望夢だなとも思うアイであった。


「わかった。やろう。ユイ先輩を助けるために」


アイの目は固い決意の目となっていた。


 *  *  *


屋上についたアイはアケミから借りたアンテナを両手で持つと、目を閉じ、集中する。

そして、一瞬風が止まった。


その場にいる5人も息を呑む。

望夢の考えがうまく行けばユイの居場所がわかるはずだ。


「解放!(エンゲージ!)」


アイの大声とともに体の周りに三本の碧い巨大なリングが浮かび上がる。


リングは平べったく、その中に幾何学模様が幾重にも重なっているように見える。

そしてリングの中から複数のモニターが投影される。

それらはすべて地図になっており、そのうちの一つに赤く点滅する点があった。


「見つけた」


アイが静かに言う。


「本当か?」

「うん。25分の一秒だけ本当に微弱だけど観測できた。場所はここから3000m北の地下7mの位置」

「地下か…。まあいいや」


望夢は少し考える仕草をしたが、すぐに手を振ってやめてしまった。

そして先輩たちの方に向き直った


「聞きましたね?先輩方」

「はい、直ちにユイ先輩救出作戦を始めましょう!」


シズカの声とともにレイ、アケミ、カズサは階段を降りていった。


「それにしてもずいぶんあっさり見つかりましたね」


シズカはあっけにとられたように言う。

まあ確かに1日徹夜しても見つからなかったのに、レイのアイデアからものの5分足らずで見つけてしまえばそういう反応にもなるだろう。


「でも予想外でしたよ、こんな早く見つかるなんて」

「そうなんですか?」

「先程言いましたが、感知できたのは25分の1秒だけです。それに地下にいるともなればさらに検知するのは難しい。いくらパリロイアの力を借りてアンテナの検知能力を上げたと言ってもかなりの掛けでしたよ、これは」


実際ダメ元だったとはあえて言わないでおこう。

だが、見つけることはできた。

あとは場所が少し予想外な場所だったことだけだ。


「ところで、先程から出てきている『パリロイア』とは何なんですか?」


シズカがタブレットを握りしめたまま聞いてくる。


その質問にアイと望夢は顔を見合わせる。

答えていいのかはわからないが、一応なにか入っといたほうがいいだろうが…。


「仲間のうちにもいくつか秘密を作っておくこと。それが仲を長引かせるコツですよ」


そう言って望夢は口元に人差し指を立てる。


ー「うっっっっわ。キザっ」


これからまた戦闘が始まるというのに気を散乱させられるアイであった。


 *  *  *


暗い。


最初にそう思った。


瞼を開こうとしても、頭が鉛のように重い。


首筋には鈍い痛みが残っていた。


「……ここは」


ユイはゆっくり目を開く。


目の前にはコンクリートの天井。

薄暗い蛍光灯が一定の間隔で並び、白い光だけが部屋を照らしている。


両手首には金属製の拘束具。

足も固定されていた。


「ようやく目が覚めたか」


声がした。


目の前には濃緑色のジャケット。


『Citadel H.School Imperial Troops』


あの路地裏で見た連中だった。


「……殺すなら殺せよ」


ユイは睨みつける。


だがそれを見て女は小さく鼻で笑った。


「安心しろ。我々は貴様に興味はない」

「だったら何でさらった」

「交渉材料だからだ」

「はぁ?」


女は机の上へ一枚の地図を広げる。


そこにはタナヴィー高等学校周辺と、その周囲の校区が細かく記されていた。


「我々が欲しいのは例のタブレット」

「……」

「貴様を返す代わりに、あれを差し出してもらう」

「なんだ?それ」

「何?」


タブレット?

そんな物を持っているなんて話は聞いていない。

まさか先輩が隠していたとも考えられない。


「まあいい。貴様が知らないのならな」


淡々とした返事だった。

感情がまるでない。

そのことが逆に不気味だった。


それから何時間経ったのか。


時間の感覚は完全になくなっていた。


尋問は何度も続いた。



防衛体制。

アケミたちの行動。

知っていることを話せ、と。


ユイは一言も答えなかった。


そのたびに拘束椅子へ座らされ、疲労と緊張を与えるような尋問が繰り返される。


「頑固だな」

「当たり前だ」

「仲間を守るためか?」

「……違う」


ユイはゆっくり顔を上げる。


「タナヴィーは、あたしの居場所だからだ。」


その言葉に、一瞬だけ部屋が静かになった。


「ふん。借金まみれの時代遅れのあの学校がか?我らとともにアヴァンの傘下に入れば生き延びるてもあったろうに」

「なんだと?」


腹の底から煮えたぎるような怒りが湧き上がってくる。


「貴様ら、まさか自らの返している金がなにに使われているかもしらないのか?」

「隊長」


女がなにか気になることを言った直後、兵士が部屋へ入ってくる。


「通信です。」


隊長は受話器を取った。


「……そうか。」


短く返事をすると、ユイへ視線を向ける。


「交渉は予定通り進める」

「勝手にしろ」

「ただし」


隊長は少しだけ笑った。


「貴様の仲間は思ったより優秀らしい」


ユイの眉が動く。


「周辺で不審な通信を確認した。」

「……」

「こちらの位置を探っている可能性が高い」


その言葉を聞いた瞬間。

ユイの胸がわずかに高鳴った。


(まさか……。)


思わず小さく笑ってしまう。


「何がおかしい」

「いや」


ユイは隊長を見据えた。


「あんたら、運が悪かったな」

「?」

「うちの先輩方は、仲間を絶対に見捨てない。」


隊長は無言だった。


だが部屋の外では慌ただしく兵士が走り回る音が聞こえ始める。


「隊長!」


通信兵が勢いよく飛び込んできた。


「北側監視装置が反応!」

「敵襲か?」

「人数不明! 複数です!」


部屋の空気が一変する。


警報が施設内へ鳴り響いた。

赤色灯が点滅し始める。


「全戦闘員、迎撃配置!」


怒号が飛び交う。


ユイは静かに目を閉じた。


胸の奥にあった不安が、少しだけ消えていく。


次の瞬間。


地下施設全体を揺らす爆発音が響いた。

天井から細かな砂埃が降り注ぐ。


誰かが叫ぶ。


「正門が突破されました!」


隊長は舌打ちすると、腰の拳銃を抜いた。


「予定変更だ。人質を移送する」


その言葉を聞いたユイは、小さく笑う。


「もう遅い」


爆発音は、さらに近づいてきていた。

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