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プロフィティエスヒストリー  作者: Seydlitz
第三章 学園都市ラディオス
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第二十八話 攻防

襲いかかってくる銃弾を傍にあった廃車の影に隠れてやり過ごそうとする。

しかしユイは関係ないと言わんばかりに車のうえを飛び越え、さらに銃弾を浴びせてきた。


アイは必死で遮蔽物に隠れながら銃弾をやり過ごしながらユイに呼びかける。


「ユイ先輩!どうして襲ってくるんですか!?一回話し聞いてください!」


だが、その返事はすべて銃弾で返される。


アイも反撃しようとドラグノフを構えようとするも、その瞬間にユイに飛びかかられる。

とっさにルガーを引き抜こうとするも一歩ユイのほうが早く、ルガーを蹴り飛ばされてしまう。

アイはルガーを蹴ったユイの足を掴んでその勢いで後ろへと投げたが、うまく受け身を取られすぐに反撃にさらされる。


もとから接近戦が苦手なアイからすればこの状況は良くない。

しかしユイの攻撃には一切の隙がなく、距離を取ることもできそうになかった。


「取り敢えずユイ先輩をとめないと…」


その時また頭に激痛が走る。


『遮蔽物としていた車の下を通って手榴弾が投げ込まれる』


アイはすぐにその場を離れる。

すると車の下から手榴弾が出てきたことに気づいたその瞬間、爆発した。

その衝撃でアイはシャッターに激突し、そのまま店内まで転がり込んでいく。


それを追いかけるようにユイは走ってくるが、アイは体制を立て直し建物の奥へ逃げる。


狭い屋内であればドラグノフもM4も使いづらい。

少なくとも力任せにやればまだ優位は保てるはずだ。


そうアイが考えるのもつかの間、今度はアイが突き破ってきた入口から手榴弾が投げ込まれてきた。


「ウソっ!」


アイはとっさにテーブルを立て、遮蔽物とすることで衝撃を躱したが、爆発により柱が破壊されアイのいるもとに倒れかかってくる。


「ヤバい…!」


また逃げることを余儀なくされ、奥のリビングと思われるところの窓から外に出ようとする。

しかしそこでユイが立ちはだかり、飛び出してきたアイの首を掴むと、そのまま縁側の床に叩きつけた。


「がっっ…!」


喉の奥から声にならないうめき声が漏れる。

ユイは屋内に手榴弾を投げ込み、追いかけるように見せ、その途中で建物の外へ回り込んでいたのだ。

ユイは再びアイのうえにまたがると、両手でアイの首を絞め始めた。


「…っ!」


アイは手足を必死で動かし抵抗しようとする。

しかし、抵抗すればしようとすればするほどユイの締め付ける力は強くなる。


息もできず、意識は遠くなっていき、視界の端から暗くなっていく。

最後の抵抗として首を絞めているユイの手を少しでも動かそうとしたが、力も入らない。

結果として彼女の手首のリングを掴むことになってしまった。


ー「もう無理だ」


そう思った時、ユイの手に込められていた力が不意に抜ける。

アイの手に心臓の脈動に似た感覚が走った。


ー「いまだ!」


アイは身体を右へ転がす。

首を絞められていた影響で息もうまくできず、頭も朦朧とするため、壁に手をついてよろよろとその場から離れるが、ユイが追ってくることはなかった。


 *  *  *


ユイの手から一時的に逃れた後、アイは少し離れた店の二階に避難していた。


少し休み、安心したのもつかの間、全身に恐怖と疲労が這い上がってきた。


いきなりの奇襲。

急に進化?した未来感知の反動。

ユイの殺意以外の何物も込められていない眼。

生死の境を彷徨う初の実戦。


この一瞬のうちに多くのことが起こりすぎた。


「はぁ……はぁ…」


壁にもたれかかりながら、アイは震える手を抑える。

喉にはまだユイの手の感触が残っている。

息を吸うたびに喉に鈍い痛みが広がり、肺にはまだ十分な空気が入ってこない。


「あと少し遅かったら…」


そう考えだした瞬間、背筋に悪寒が走る。


明らかに自分を殺しにかかっているあの獣のような眼。

室蘭で昔出会った熊と同じような獲物を見るようなあの恐ろしい眼。

いや、あれよりも恐ろしかったかもしれない。


ー「なぜ私を?」


そう考えだしたが、すぐに答えは思い当たった。


最初に彼女にあった時。

いや、彼女たちにあった時

いきなり銃口を向けられた。

その時カズサが口にした自分と同じ名前の人物。


「その人と、なにか関係があるの…?」


だが、今はそんな事を考えている暇はない。


どうすればユイをとめられるか。

そこが今の一番の問題だった。


ー「考えるんだ、まだなにかやれることがあるはず!」


しかし、いい考えのかわりにまた頭に激痛が走ってきた。


『向かいの部屋のガラスが割られ、ユイが銃を乱射しながら入ってくる』


アイはその場からすぐに離れる。

やはり隠れ続けることはできない。


寄りかかっていた壁にあった窓を割り、外に出たと同時にユイが銃を乱射し入ってくる。


「ヤバっ!」


しかも窓を飛び越え外に出ると、そこは路地裏のような場所になっており、アイはそのまま落ちていく。

かろうじて受け身を取ったが、大声を上げたせいでユイに見つかり、飛び降りてきそうになっている。

アイはすぐにその場から走り去ろうとするが、ユイの飛び降りのほうが一歩早く、すぐに撃ってきた。


アイは銃弾を避けようと必死に走るが、一発が足をかすめる。


「痛!」

したたれる血が靴を濡らしていくが、それでも逃げ続け、ギリギリまた別の建物内へはいることができた。


建物内は至って普通の商店街にある精肉屋を彷彿とさせるものだった。

しかし悠長に店内を確認している暇はない。

店の奥へ入り、階段を見つけるやいなや急いで駆け上がっていく。

目指すは少しでも反撃のできる屋上だ。


一応途中の階で隣の建物へと移っておく。

多少の保険だ。


階段の脇には即席の鈴付きワイヤートラップを仕掛けておく。

急ごしらえではあるが、アイを血眼になって探す獣に対しては有効だろう。


屋上に出ると、崩壊した商店街の一角がはっきり一望できた。

しかし、その中にユイの姿はない。

おそらくこちらの意図に気づいてどこか建物の中か遮蔽物に隠れているのか。


いや、いた。

多少の保険が大当たりを当てた。


隣の店の窓際に周囲を探すユイの姿が見える。

しかし、そこは幅3m程しかない路地裏を挟み、高さの差も6mほどある。

あまりにも縦長すぎる狙撃。

だが、やるしか無い。


アイは極力音を立てないようドラグノフを設置すると、ユイに照準を合わせる。

ユイは今まさに隣の建物へ飛び移ろうとしていた。


ー「止めればいいんだ。狙うは右肩!」


ユイが飛び出した瞬間、アイは引き金を引く。

放たれた銃弾は宙にいるユイの右肩を直撃し、地面に叩き落とした。


ー「やったか!?」


だが、ユイは何事も無かったかのように地面に立ち、屋上にいるアイを睨んできていた。


「何で…」


確かに弾は右肩に当たり、ユイは地面に叩き落としたが、右肩には傷一つ無い。

強いて言うならば服が破けた程度か。


ユイはアイを見上げ、そのまま古びれた壁を足場にして、二階、三階と跳び上がってくる。


アイはまた逃げるしかなくなってしまった。


 *  *  *


ユイはまるで重力がないかのような動きで屋上まで襲いかかってきた。


「そんな…」


10m以上あったはずの高低差をものともせずに詰めてくるその姿は人間と言うよりも獣に近いものを感じさせる。


屋上まで上がってきたユイは間髪いれずM4を構え、引き金を引く。


放たれた銃弾はアイには当たらずにコンクリートへと突き進み、大量の欠片を生み出していく。


アイは走りながら弾を避けようとするが、足をかすめた銃弾によって力が入らなくなっている。

やっとの思いで室外機の後ろに隠れ、銃を構えようとする。


しかし、その瞬間また激痛が来た。


『ユイが室外機を飛び越え、後ろの着地するとそのまま撃ってくる』


アイはその未来に従い、後ろを向いてドラグノフを構える。

そしてそこにユイが飛び込んできた。


アイは無我夢中で何度も引き金を引く。

ドラグノフは半自動小銃のため、何度も引き金を引かなければ弾は連射されない。


もはや「ユイを止める」という目的をやってられるほどの暇はない。


[殺らければこちらが殺られる]


という極限状態になり、アイももはやパニック状態だった。


しかし、それでもユイの身体には傷一つつかず、逆に左肩を撃ち抜かれた。


「……!」


もはや声にならないほどの激痛がアイを襲う。


それを見てユイは銃の手を止める。


アイは銃を取り落とし、左肩を抑える。

生暖かい血が止まることを知らずに右手を赤く、そして床を染め上げてゆく。


うなだれたアイの顔をユイが覗き込む。


「どうだ?痛いか?」

「…!」


ユイは顔を近づけて話し出す。


「痛いだろう、叫びたいだろう、泣きわめきたいだろう」

「それがお前のしたことだ」

「死んで詫びろ。あたしたちの仲間に」


そう言って、アイの額に銃口を突きつける。


「何で…」

「あ?」

「何で…こんな事するんですか…」

「は?」

「私は何もしてないですよ…。ここに来たのも初めてですから」


アイが聞こえるか聞こえないかの掠れ声でつぶやく。

それが聞こえたのか、ユイの眼はさらに見開かれる。


「初めてだと?寝言も大概にしろ。プロフィティア。かつて魔王を倒したという一族には必ず未来視の能力がある。もちろんお前にもあるだろう。それがウソの証明だ」


そう言われても、アイは動じずに話す。


「いや、初めてですよ。だって、知らないですから。貴方たちに何をしたのかなんて…」


そう言ってアイは不気味に口角を上げて笑う。


「何引いてるんですか?名前が同じだからってこんなことされたら誰だってしますよこんな顔」


そう言ってさらに口角を引き上げる。


今は相手に不気味に見せて時間を稼ぐ。

まだ、ユイに見せていない奥の手がある。

それをするために、今は体力を少しでも戻さなければ。


ユイは化物でも見たように顔を引きつかせ、目の焦点もあっていない。


どうやら昔彼女が見たなにかの記憶を刺激してしまったのかもしれない。


「お前に…。お前に何がわかる!」


そう叫び、ユイは引き金を引こうとする。


アイもドラグノフを掴んでユイに構えようとしたが一歩及ばなかった。


乾いた銃声が戦闘で荒廃した商店街に響く。


 *  *  *


撃たれた。

そう思った。


しかし、アイには何も痛みも何もなかった。

今、たしかにアイは現世にいる。


「ありゃ〜、こりゃ結構やられちゃったねぇ。アイちゃん」


聞き慣れた声がアイの鼓膜を震わせる。

すでに10年以上共に生きてきたものの声だ。


薄灰色の髪と黒い目。

ゆったりした口調と少し眠そうな顔。


「節子…?」


そう聞くと彼女は優しく微笑む。


「えへへ。おまたせ〜」


そうして節子はゆっくりと立ち上がる。


「誰だ、お前は…」


ユイも突然現れた節子に驚いているようだ。


「ん〜っとね、名乗るほどのものじゃないよ」

「ええぇ…?」

「へへへ、一度言ってみたかったんだよねこのセリフ」


節子はユイの方に向き変える。


「アイちゃんはね〜、優しい子なんだよ。昔っからね。そんな子をいじめるなんてひどいねぇ」


ユイはそれを聞き、笑い始める。


「はははっ。人は見せたくないところは徹底的に見せないもんだ。お前に見せてないだけかもしれないぞ?」

「あ〜、ないね、それ」


節子は即否定する。


「まあこんな話をしたって無駄だよ。取り敢えずわたしが言いたいことはひと〜つ」


節子はそう言って人差し指を立てる

「こんな優しい子をいじめたひとには、ご退場願おうかな?」


そう言って節子はユイを蹴り飛ばした。


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