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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
幕間 小休止
74/95

閑話 女騎士レイナ式・鍛錬指南 (挿絵あり)

昼の陽が静かに草原を照らしていた。


リアーネは少し距離をとり、肩越しにレイナへ視線を向ける。


「お願いしてもいいかしら。私が相手だと、ちょっと規格が違いすぎるから」


レイナは無言でうなずき、腰の木剣を引き抜いた。


「いい判断。彼が鍛えられれば、戦場での幅が広がるわ」


カイはその様子を見て、思わず背筋を伸ばした。


レイナの身長は230センチ。対するカイは170センチ。

その頭は、彼女の腰と胸の中間あたりに位置していた。


見上げるたび、しなやかな身体と、鋭くも澄んだ瞳が彼を正面から射抜く。


「……よろしくお願いします」


レイナは短く返す。


「こちらこそ。では、私に“触れる”まで攻撃してみなさい」


*


カイが踏み込んだ。


木剣を低く構え、一気に間合いを詰める。

だが――次の瞬間、レイナの姿が視界から消えた。


「……っ!」


風が動いた直後、肩に軽い衝撃。

振り返れば、レイナが背後に立っていた。木剣の切っ先で、彼の肩を静かに叩いている。


「一手。もう一度」


カイは唇を噛み、再び構え直す。


何度目かの挑戦の末、ようやく数合の打ち合いが成立し始めた。

それでも、レイナは表情を崩さず、すべての打ち込みを無駄なくいなす。


「体格差に惑わされないこと。あなたは、私よりもっと大きな相手と――すでに並んで戦っているはず」


「リアーネさんは……別格です。でも、だからこそ負けられないんです」


「その意志、見せて」


今度は、レイナが動いた。


一閃。重さを殺した精密な一撃が、カイの木剣を打ち払う。

カイはとっさに身体をひねり、転がるように地を滑ってかわす。


手のひらが擦りむけても、すぐに剣を拾い直す。

汗が視界を滲ませたが、それでも、彼は前を見据え続けた。


「……根性はあるわね」


*


次に移ったのは、組み手の鍛錬。


互いの手のひらを押し合わせ、体重と筋力のぶつかり合い。


カイは全身の力を込めて押すが――

レイナは、片手だけでそれを受け止めていた。しかも、ほとんど体重を乗せていない。


「っ……く……っ」


額に浮かぶ汗。首筋が震える。

それでも踏ん張っていたが――


「……君の今の力では、Cランク。私はSランク」


淡々とした声とともに、レイナがわずかに体を前へ乗せた。


その瞬間、地面が軋むような圧がカイにのしかかり――

膝が、思わず沈みかけた。


「この差を埋めるには、技と工夫。そして、鍛錬」


痛みではない。

ただ、自分の足りなさが明確すぎて、悔しかった。


それでも、カイは視線を逸らさなかった。


*


夕方。

訓練を終え、カイは地面に片膝をついて息を整えていた。

肩が上下し、濡れた前髪が頬に貼り付いている。


レイナは静かに木剣を収め、無言のまま手を差し出す。


カイがその手を掴むと、彼女は軽々と彼を引き起こした。


「よくやったわ。あなたは、もっと強くなれる。――リアーネの隣に立つには、それくらいでなければ」


カイは目を伏せてから、小さく笑った。


「……はい」


遠くの木陰では、リアーネが静かにその様子を見守っていた。

その大きな瞳に浮かんだのは、わずかな安堵と――どこか誇らしげな光。


(がんばったわね、カイ)


草の匂いを運ぶ風が、訓練の余韻をやさしくなぞっていった。

身長差イメージ

挿絵(By みてみん)

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