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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
幕間 小休止
72/95

閑話 訓練と振動 (挿絵あり)

晴れ渡る午後の岩地。

広がる空に、遠くの鳥が一声鳴いた。


その中央で、身長22メートルのリアーネが静かに足を開き、開脚ストレッチを始める。


「ふぅ……体を動かす前には、しっかりほぐさないとね」


ぐっと前屈して上体を倒す。その姿勢でもなお、彼女の頭の高さはカイよりも上だった。


見上げるようにしてカイがぽつり。


「……前屈してるのに見上げるって、やっぱりすごいな」


リアーネは小さく笑う。


「私は柔らかいの。筋肉は重いけど、しなやかよ。……さて、始めるわ」


彼女はゆっくりと地面に両手をつき、伏せの姿勢を取る。


「腕立て。いち……」


ぐぅん、と低く唸るような音が岩地に響く。


挿絵(By みてみん)


リアーネの胸筋と肩甲骨が盛り上がり、大地がかすかに沈んだ。

ゴゥン……と土の底から鳴るような重低音が、空気ごと震わせる。


「に……さん……ふぅ。久しぶりだから、効くわね」


地面が押されるたびに、土がふるえ、周囲の虫たちが飛び立っていく。


一息ついて、リアーネは顔を上げた。


「……次はちょっと、負荷をかけてみようかしら。カイ、協力して」


「えっ?」


次の瞬間、リアーネは指2本でカイの脇をひょいと摘み上げ、背中の上にそっと乗せた。


「バランス取るのにちょうどいいのよ。重くはないし」


「……言い方によってはちょっと傷つくぞ」


「じゃあ……いち、に、さん……」


巨大な筋肉が再びうなり、大地が小刻みに震える。


カイは彼女の肩甲骨のあたりで、慎重にバランスを取りながら踏ん張っていた。


「……まあ、悪くない訓練かも。地震の上でサーフィンしてるみたいだ」


リアーネは笑わずに言った。


「“乗る側”の練習にもなるの。いつか、本当に私の背中に立つときのために」


カイは一瞬だけ黙り、静かにうなずいた。



午後の後半、カイは草原の中央に立っていた。


数メートル先、リアーネが真っ直ぐ立って彼を見下ろしている。


「次は足踏み訓練。まずは軽めにいくわね」


ドンッ!


一歩。

草が押し潰され、空気が重くなる。

ズゥゥン、と地面の奥で何かが鳴った。


「うっ……!」


カイはすぐに膝を曲げて重心を落とし、衝撃を逃がした。


「姉ちゃん、軽めでそれ!? もうちょっとだけ優しく……!」


「これでもかなり抑えてるのよ? 少しずつ強くしていくわ」


ドンッ! ドンッ!


足踏みのたびに、足元の草が吹き飛び、小石が跳ねる。

音だけではない。空気そのものが上下に揺れ、肺の奥をノックするような衝撃が襲ってくる。


「ヨシ……これくらいならまだ!」


リアーネの表情が変わる。


「なら、もう一段階いくわよ」


ズシィン! ズシィン! ズシィン!!


巨大な足が交互に地を打つ。そのたびに3.5メートルの足跡が土に刻まれ、巨大なくぼみがいくつも出現する。


「うっ……くっ……!」


体の奥が震える。

だがカイは、食いしばったまま崩れなかった。


「……よく耐えたわ。じゃあ――」


ズッシィィィン!! ズッシィィィン!! ズッシィィィン!!


とどめの三連踏。

風が爆ぜ、耳の奥が揺れる。

振動の波が足元をすくい、カイの身体が一瞬浮く。


そして、膝をついた。


「……はぁ、ああもう、これ……本当にトレーニングになるのか?」


荒い息のまま問いかけるカイに、リアーネは涼しい顔で答えた。


「体幹を鍛えるのは大事よ。戦場で私の横にいるなら、ね」


彼女の声は、いつもよりわずかにやさしかった。


カイは目を細め、笑う。


「はいはい……でもそのうち、“振動耐性”ってスキルがつきそうだ」


「それ、良いスキルよ? 案外ね」


風が吹いた。


草の海に、ふたりの影がゆらいで揺れていた。

開脚ストレッチのイメージ図


挿絵(By みてみん)

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