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巨大女戦士の冒険  作者: ranranslime
幕間 小休止
71/95

閑話 ごはんとゴブリンと巨大な足 (挿絵あり)

昼下がりの草原。

風にそよぐ草の匂いと、鳥の鳴き声が心地よく響いていた。


リアーネは一本の木陰に腰を下ろし、空間収納に指を差し入れる。


「今日は……オーガの肩肉にしようかしら」


ごそっ、と巨人サイズの乾燥肉を引きずり出す。

人の背丈ほどある肉塊を片手で持ち上げ、そのまま歯で豪快に裂く。


バキッ、バキバキ……バリリッ!


遠くで焚き火を囲んでいたカイたちは、その音にほんの少しだけ眉をひそめた。


「……あの音、なんかもう“料理”じゃなくて“破砕”だよな」

ゾルドがパンをひっくり返しながら呟く。


「でも静かに食べてるよ? 音はすごいけど」フェイが笑った。


「リアーネさん、丸呑みじゃないのがすごい」

マリナが感心すると、リュカが低く付け加える。


「噛み砕くたびに木が割れるみたいな音がしてる。……たぶん、骨ごと食ってる」


カイは苦笑しながら、スープをかき混ぜた。


「まぁ、あの体格なら、あのくらいは食べないと」


すると、リアーネがちらりと彼らの方を見て、口元だけ笑った。


「別に恥ずかしくなんかないわよ。私は、私の必要な分を食べてるだけ」


骨を残さず、肉を裂き、最後に喉を鳴らして飲み込む。

その所作には、どこか優雅さすらあった。


「……この間なんて、足りなくて石を齧ったくらいだしね」


カイたちは焚き火越しに顔を見合わせ、全員が何も言えずに首をすくめた。


*


食後、リアーネは立ち上がった。


草原が波打ち、風が巻き上がる。

巨大な影が木々にかかるたび、小動物たちが驚いて逃げていく。


「ちょっと偵察してくる。あの丘の向こう、動きがあった気がするわ」


彼女は足元の土を確かめるように踏みしめ、静かに歩き出した。


ズゥンーズゥンー。


*


数分後、リアーネは森と岩が交差する一帯に立っていた。


足元、わずかな空き地に、粗末な木造の小屋が数棟。

焚き火跡、骨や毛皮の残骸。――間違いなく、ゴブリンの集落だった。


「……十体前後ってところね。索敵も配置も甘い。気づいていない」


リアーネは両足をゆっくり開き、集落を跨ぐように立った。

ズシィン、ズシィン。

挿絵(By みてみん)


巨大な影が、丸ごと覆いかぶさる。


ゴブリンたちがようやく気づいたその瞬間、群れは悲鳴と混乱に包まれた。

逃げ出す者、焚き火に飛び込む者、建物にしがみつく者。

だが、彼らにとってその混乱の猶予は――わずか数秒。


ドンッ。


リアーネの片足が、1棟の小屋を粉砕した。


ブーツの裏にあったはずの住居が、押し潰された乾いた音と共に潰れ、ぺしゃりと土に沈む。


逃げ惑うゴブリンたちの頭上に、さらに大きな影。


ドゥウウウンッ……!!!


二歩目。三歩目。

どの一歩も、まるで地震のような衝撃と、破砕音を残していく。


「……人を襲う以上、仕方ないわよね」


リアーネはわずかに目を細め、最後の一歩を――最も騒がしい建物の上へと、真上から降ろした。


その瞬間、木々が揺れ、岩場が震え、残ったゴブリンたちは身動きすら取れなくなった。


もはや、逃げ場などない。


静寂の中、リアーネは踵を返す。


ズゥンーズゥンー。


振り返った視線の先には、もはや集落は存在しなかった。

跡地には、くっきりと巨大なブーツの踏み跡だけが残っていた。


「……これでひとつ、脅威が減ったわね」


夕陽が差す。

背後に伸びるリアーネの影は、かつてそこにあった命を、容赦なく塗り潰していた。

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