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スペアは檻の中で座り込んでいた。
何もない空間に、檻がぽつんと一つだけある。気がつくと、そんな場所に閉じ込められていたのだ。
真上に光源があるらしく、スペアの座っている場所だけが煌々と照らされている。だが檻の向こうはどこまでも暗く、何も見えない。
(もう一度試してみるか…)
スペアは立ち上がり、構えた。勢いをつけて足を振る。
ガァン!
檻はびくともしない。
(やはり駄目か。私の蹴りで傷一つつかないとは…ただの金属ではない。そもそもここまで何もない場所は異様だ)
つまり、と考える。
(魔法か…となれば、お手上げだな)
スペアは檻の中で仰向けになった。赤い巻き毛が白い床に広がる。
魔術の類はからきしだ。この空間と檻が魔法でできているなら、対抗する術がない。
(魔法は魂の力だとハイネが言っていた。機械人形の私には、魂はないということなのだろうな…)
唇を噛んだ。
(ハイネや赤ん坊はどうなってしまったんだ? 助けにいかなくてはならないのに)
おそらく檻を作ったのはあの黒服の者たちだろう。赤ん坊を連れていこうとしていた。
(一体何が目的だ? あの子が救世主と呼ばれていたことと関係があるのか。そもそも救世主の意味も聞けていないが…それに、私を閉じ込めた意図も読めない…)
ここに閉じ込められてしばらく経つものの、危害を加えられることはなかった。時折バチバチッと音がして火花のようなものが降ってくるが、どれも檻に届く前に消えてしまう。
(そうだ、あのとき…)
ふと思い出し、握りしめたままになっていた拳を開いた。
赤ん坊に渡されたもの。折りたたまれた紙だった。
(一体何を…)
指先で開くと、そこには黒い文字が並んでいた。




