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「いやー、助かったわ。ほんとにいきなりどこか分からないところに飛ばされたんだもん。このまま永遠に迷子かと思ったー」
夜の空の中、紐でがんじがらめにされたハイネが吊るされ、運搬されている。紐の端を持って運んでいるのは、七枚羽根で飛ぶ天使、ミクダスであった。
「貴様が迂闊だから得体のしれない連中の転移魔法を食らうのだ。あのような山奥まで飛ばされおって」
「ところでこの紐の巻き方雑すぎない?」
「贅沢を言うな! 私の仕事に文句をつける気か! 」
「分かった分かった。それにしても転移を使ってくるなんてなぁ」
「……」
「失せろって言われたから浄化の魔法でわたしを消すつもりかと思ったんだけど…それなら効かなかったのに。あいつらにはわたしは祓えないでしょう」
「当然だ。だが先刻、転移魔法は効いた。貴様に魔術が効いたということが問題なのだ」
「はあ?じゃあ、だから助けに来てくれたってこと?」
「そうではない、私の主が判断なさったからだ。貴様とあの赤毛の子供、そして天使の赤子は共にいなければならないと…」
「?」
「ところでさ、あんたら天使はこの国の事情は把握してる?」
「私の主はご存じだ」
「国土が呪いで汚染され、国民が苦しんでいることも」
「ああ」
「あの子が救世主として期待されていることも」
「ああ」
沈黙が訪れた。
「……どうにかならない?」
「馬鹿を言え。天使は生者に過剰に干渉することはできん。掟を破ればどうなるか、知っているだろう」
「……堕天」
「その通りだ。私は悪魔になるわけにはいかん。他の天使も同じ考えだ」
「…そうだよな…」
下を向いたハイネの眼に、飴色の塔が見えた。中庭の上空についたのだ。
「戻ってこれた!」
塔の中は混乱していた。人が騒がしく動き回っているのが見える。その中に、赤いドレスの女王もいた。
「あっ、ここで地面におろしてくれないか…」
見上げた途端、天使はやにわにハイネを縛っていた紐を切った。
「知るか。ここで解放する、あとは貴様自身でどうにかしろ」
「ひどい!」
抗議の声もむなしく、ハイネは塔のすくそばに墜落した。




