Act14 光を求め
『で、でたーーーッ! ドラゴン野郎!』
タツミが叫ぶ。
突如現れた異星人は、ヒューマノイド型とはあきらかに違い、さらに巨大で、長い胴体の背中には蝙蝠のような翼。四つの手脚の先端には鋭い鉤爪が伸びていて、それはまるで竜のような形態をしていた。
『っ、セツ先輩っ!』
心配そうな表情でセツの腕を掴んだのはユミナだった。
『僕は大丈夫だ、ユミナ』
宥めるようにセツは言う。
ユミナの不安はもっともだ。
何故なら、現れたドラゴン型をした異星人は、かつて魔法少年アマカゼ・サクラが、最後に戦った敵だからだ。
アマカゼを傷付けた敵。
その時からセツは、憎悪にまみれた鬼神のごとく、復讐のためだけに戦ってきた。
その姿をユミナはずっとそばで見てきたのだ。
(けれど、もう大丈夫……)
『本当に大丈夫なんだ。言ってなかったけれど、アマカゼは目覚めた。それに……今日は言葉も交わしたんだ』
『えっ!?』
お互いに魔法少年の姿ではなかったけれど、おそらくアマカゼは「セツ」だと気付いてくれたはずだ。
『良かった……、本当に良かったですね、セツ先輩』
『ああ、だからどんなに憎くても、もう無茶な戦いはしないよ。ずっと心配をかけたねユミナ。ごめん』
セツが謝ると、ユミナは泣きそうな顔で微笑んだ。その隣にはタツミがいる。
二人ともセツにとって大切な仲間だ。
絶対に守り抜き、無事に帰らなければ。もう一度、アマカゼに会うためにも。
とはいえ、敵は一筋縄では撤退してくれないだろう。
『目醒めを促す異星人たちよ──』
セツは想念を飛ばす。
『何度も言うが、僕らに干渉するのはやめてくれ』
ドラゴンの無機質な双眸に、セツから溢れ出す金色の光が反射する。──聲がした。
ソノ光
ソノ光は──
アノ者と〝同じ光〟──
『アノ者とは、いったい誰のことだ』
ア マカゼ——
『な、んだとっ!?』
アマカゼ サクラの……
『っ、軽々しくその名を呼ぶな! おまえがっ……、おまえたちが、アマカゼを傷付けたくせにっ!』
セツのなかから黒い感情が靄のように生まれるが、同時に金色の光によって掻き消される。
ドラゴンは食い入るように「その光」を凝視していた。
『アマカゼを、いや……もう誰も傷つけさせるものかっ!』
強いセツの想念が、三次元を動かす。
暗闇のなかに漂っていたガスや塵を舞い上げ、渦巻く衝撃波が異星人たちを襲う。
『やった!』
『すごいです、セツ先輩!』
しかし巨躯のドラゴンには効かず、ゆっくりと後退しながら、恍惚とした眼差しでセツを見つめている。
ホシイ……
アマカゼ ノ ── ヒカリ!!
ドラゴンが、がばりと鋭い牙を剥いて開口する。
喉奥から吐き出した暗黒物質。
つるりとした鉄球のような、なにか。
(またアレか。いったい何なんだ)
決して良いものでないことだけは、分かる。
宇宙に存在する万物には波動がある。人にも異星人にも、無機物であっても。
エーテル体でいるからこそ物が発する波動には敏感だ。
回収したほうが良いのかもしれない。
しかし、アレを、地球のなかにいれてはいけないとセツの直感は告げている。事が起こってからは遅いのだ。
異星人たちが暗闇の向こうに消えていく。
脅威は去った。




