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四人の男

アデリアが歩き出すと、ローウェンとテオもすぐに付き従った。


二人とも気に入らないという顔をしていた。


特にローウェンはそうだった。


「お嬢様」


「うん」


「まず状況を確認します」


アデリアがうなずいた。


「そうして」


ローウェンが一瞬意外そうに彼女を見た。


素直に受け入れるとは思っていなかったらしい。


アデリアはその反応が少し悔しかった。


自分だって理由もなく危険な場所に飛び込む人間ではない。


むしろ逆だった。


危険かどうかは確実に把握しておく必要があった。


そうしてこそ動くか動かないか決められるのだから。


ローウェンがテオに目配せした。


テオが自然に人混みの中へ入っていった。


アデリアとミレイユは少し離れた場所に立ち止まった。


ミレイユが小さな声で尋ねた。


「お嬢様」


「うん」


「本当は何をなさるおつもりですか?」


「まだ分からない」


「そのような表情でおっしゃっても信じがたいです」


アデリアがミレイユを振り返った。


「私の顔がどうかした?」


「楽しそうです」


「そう?」


ミレイユは答えなかった。


そのほうがより確かな答えのようだった。


アデリアはまた店のほうへ視線を戻した。


地面に倒れていた中年の男は、今は立ち上がっていた。


だが状況が良くなったわけではなかった。


彼の前を四人の男が塞いでいた。


一番体の大きい男が、中年男の胸を指で押した。


「昨日までに用意するって言っただろ」


「一日だけ待ってください」


「昨日もその台詞聞いたな」


「本当です。


今日の夕方まで待っていただければ――」


ドスッ。


男の拳が中年男の腹にめり込んだ。


中年男が体を折って座り込んだ。


周囲から小さなため息が漏れた。


だが誰も前に出ようとはしなかった。


アデリアの目が少し細くなった。


〈言い争いじゃないわね〉それだけは確かだった。


しばらくしてテオが戻ってきた。


「確認しました」


「何なの?」


テオがアデリアのそばに近づき、声を落とした。


「あの店の主人が金を借りたようです」


「あの男たちに?」


「正確には、あの男たちの後ろにいるところから」


「どこ?」


「この辺りで高利貸しをしている連中だそうです」


アデリアが眉を少し動かした。


「高利貸し?」


「正式な金融商会を通さず金を貸す者たちです。


利息が高く、返せないとああやって取り立てるようです」


「違法なの?」


テオがしばらく答えをためらった。


「金を貸すこと自体は違法ではありません」


「じゃああれは?」


店主が再び胸ぐらを掴まれた。


テオが答えた。


「あれは当然問題です」


「衛兵は?」


「誰かが呼びに行ったようです」


「どれくらいかかりそう?」


「近くの詰所からなら、そう長くはかからないはずです」


アデリアがうなずいた。


だとすれば、あえて自分が出る必要はない。


衛兵が来れば解決することだ。


まともな判断ならそうだった。


だがアデリアは、もう一度四人の男を見つめた。


四人。


武器を抜いている者はいない。


服の下に小さなナイフくらいは持っているかもしれないが、少なくとも目に見えるものはなかった。


動きも専門の戦闘員には見えなかった。


何より、後ろにはローウェンとテオがいる。


二人とも王宮で自分の護衛を務めるほどの騎士だ。


何かあってもあの四人くらいすぐに制圧できるだろう。


〈大丈夫そうね〉アデリアの頭の中で結論が出た。


「ローウェン」


「はい」


「あの四人、強そう?」


ローウェンの視線が男たちへ向いた。


ひとりずつ短く見定めた。


「そうでもありません」


「どれくらい?」


「訓練を受けた兵士の水準にも及びません」


「四人とも?」


「はい」


アデリアが満足げにうなずいた。


やっぱり。


「じゃあ大丈夫ね」


ローウェンの表情が強張った。


「何が大丈夫だとおっしゃるのですか?」


アデリアは答える代わりに前へ歩き出した。


「お嬢様」


ミレイユが低い声で呼んだ。


「大丈夫よ」


「何が大丈夫なのですか?」


「ローウェンが弱いって」


「それとお嬢様ご自身が行かれることとは別の問題です」


「そうね」


アデリアが振り返った。


そして、あまりにも当然だという顔で言った。


「だからあなたたちがいるじゃない」


ミレイユが口をつぐんだ。


ローウェンがこめかみを一度押さえた。


テオだけがほんのわずかに口角を動かしたが、ローウェンの視線を受けてすぐに表情を戻した。


「今日中に返せないなら店を出せよ」


体の大きい男が言った。


店主が首を振った。


「この店を手放したら、うちの家族は行くところがありません」


「そんなの俺の知ったことか」


「元金はもうほとんど返しました!」


「それで?」


「利息が高すぎ――」


男の手が再び振り上がった。


「あの」


澄んだ声が割って入った。


男の手が止まった。


四人が同時に振り返った。


周りで見物していた人々の視線も一斉に動いた。


アデリアは少し離れた場所に立っていた。


淡い灰色のワンピース。


濃紺のマント。


華美な装飾品ひとつない格好だった。


それでも平民には見えなかった。


四人の男の視線が彼女の服と顔を眺め回した。


一番前にいた男が眉をひそめた。


「なんだ?」


アデリアが尋ねた。


「あの人、なんで殴るんですか?」


あまりに平然とした質問だった。


男は一瞬答えを忘れた。


それからにやりと笑った。


「お嬢さんは行く道行きな」


「お金のことでしょう?」


「だったら?」


「いくらなんですか?」


店主が慌てて割って入った。


「お嬢様、大丈夫です。


どうかお行きください」


アデリアが彼を見た。


顔の片側が赤く腫れていた。


「大丈夫そうに見えないけど」


「私どもの問題です」


「そうですか」


アデリアはまた四人の男を見つめた。


一番前の男が少し苛立ったように舌打ちした。


「お嬢さん、いいとこの娘みたいだけど、他人事に首突っ込むな」


「なんでですか?」


「あ?」


「首突っ込んじゃいけない理由があるんですかって聞いてるんです」


男の表情が強張った。


アデリアの後ろに立っていたローウェンの手が腰の辺りへ動いた。


テオも笑みを完全に消した。


ミレイユは何も言わずアデリアを見つめていた。


アデリアは彼らの動きを分かっていた。


だからこそ落ち着いていられた。


〈やっぱり護衛を連れてきてよかった〉一番体の大きい男が一歩前に出た。


「お嬢さん」


「はい」


「大人しく言うこと聞いて行きな」


口調が変わった。


アデリアは彼を見上げた。


近くで見ると確かに大きかった。


自分より頭ひとつ分は大きい。


肩幅も広い。


だがローウェンが弱いと言った。


だったら問題ない。


アデリアが振り返った。


「ローウェン」


「はい」


「まだ動かないで」


ローウェンの眉が動いた。


「何をでしょうか」


「助けないでってこと」


「それは許可できません」


きっぱりとした口調だった。


アデリアが彼を見た。


「危なくなったらして」


「お嬢様が攻撃された後に動けとおっしゃるのですか」


とても小さな声だったが、不満がそのまま滲んでいた。


「攻撃される前に危ないと分かるでしょ」


「その判断は私がいたします」


「うん、それでいいわ」


ローウェンが一瞬言葉を止めた。


アデリアがあまりにあっさり同意したからだった。


「その代わり」


アデリアが付け加えた。


「本当に必要になるまでは待って」


ローウェンは答えなかった。


それは同意ではなかった。


だが今すぐアデリアを引っ張って下がらせることもできなかった。


体の大きい男は状況が飲み込めないのか、アデリアとローウェンを交互に見た。


「何ごちゃごちゃ言ってんだ?」


アデリアが再び彼に視線を戻した。


「大したことじゃないです」


「はっ」


男が笑った。


「後ろに男が二人いるからって強気なんだろうけど」


「ちょっとは?」


アデリアが正直に答えた。


周りで誰かが笑いを噛み殺した。


男の顔が赤くなった。


「この野郎――」


手が伸びてきた。


アデリアの腕を掴もうとする手だった。


その瞬間。


アデリアが一歩横に動いた。


手が空を切った。


男の目が見開かれた。


アデリアは彼の手首を掴んだ。


体をひねった。


王宮で習った動きそのままだった。


完璧ではなかった。


だが相手が予測していない瞬間には十分だった。


「え?」


男の重心が前に崩れた。


アデリアが彼のすねをつま先で蹴った。


「うっ!」


男が片膝をついた。


アデリアはすぐに手を放して一歩後ろに下がった。


周囲が静まり返った。


テオの目が少し見開かれた。


ローウェンは驚かなかった。


アデリアが王族教育の一環として剣術と護身術を学んでいたことを知っていたからだ。


ただ――「お嬢様」


声がさっきよりさらに低くなった。


アデリアは振り返りもせずに言った。


「まだ大丈夫」


膝をついていた男が悪態をつきながら立ち上がった。


「このクソ――」


今度は本当に怒った顔だった。


そばにいた男のひとりが近づいた。


「兄貴、俺が――」


「捕まえろ」


短い命令だった。


残りの三人が動いた。


店主の顔が真っ青になった。


「お嬢様! お逃げください!」


アデリアはむしろ四人の男を見つめた。


さっきのひとりは思ったより動きが遅かった。


自分でも相手できる。


二人までならおそらく大丈夫だろう。


だが四人は違う。


一斉に襲いかかられれば危険だ。


ローウェンとテオが動けば終わる。


それは分かっていた。


だがそれを見るためにここまで来たのではなかった。


アデリアの心臓が少し速くなった。


恐怖だけのせいではなかった。


何日も待っていた瞬間だった。


ついに。


試すことができる。


「ローウェン、テオ」


二人の騎士が同時に動こうとして止まった。


「まだよ」


ローウェンが歯を食いしばった。


「お嬢様」


「本当に危なくなったら勝手に動いて」


アデリアは目の前の男たちから視線を離さなかった。


ひとりはさっき自分にやられた体の大きい男。


ひとりは右側。


二人は後ろ。


自分が二人を相手にすれば――残り二人。


アデリアがごく小さく笑った。


〈ちょうどいいわ〉手を上げた。


虚空に見慣れた画面が現れた。


【人間召喚 Lv.1】

【条件スロット:1】


男たちにはその画面が見えないようだった。


そのまま近づいてきていた。


アデリアはゆっくりと息を吸い込んだ。


そして、この数日間準備していた条件を口にした。


「喧嘩が強い人間」


【条件:喧嘩が強い人間】

【召喚しますか?】


今度はキャンセルしなかった。


アデリアの指がゆっくりと動いた。


そして――


【召喚】


の文字を押した。

第4話です。

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