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静止に近い一瞬の溜めのあと、二人は同時に地を蹴った。角度を半歩斜めに取り、核へ一直線に刃を通す軌道を確保する。水をまとった刃が低く唸る。


「アクアスラッシュ」


四度目の斬撃が露出した核へ食い込み、汚染の奔流を断ち切る。直後、ガラティアが重ねた。増力の舞で底上げされた脚力が地面を強く捉え、大剣が振り上がる。


中位精霊が反応する。核を守るように体表が収縮し、腕の塊が横薙ぎに走る。沈み込み、刃の下を滑り抜ける。ガラティアは受けずに角度を外し、軌道の外へ半歩退く。その瞬間を逃さない。


「崩城斬!」


ガラティアの切り札。重心を限界まで落とし、全力を一点へ収束させる一撃。振り下ろされた大剣が、切り開いた裂け目へ正確に叩き込まれる。衝撃が一点に集中し、核の周囲が大きく歪んだ。内部の歪んだ魔力が暴れ、光が不規則に瞬く。しかし――まだ割れない。わずかに足りない。


「もう一度」


息は荒いが、視線はぶれない。春月さくらの舞が切り替わる。春鏡をそっと握る。淡い音色が響いた。


「増力の舞!」


桜色の輝きが増した。二人の筋力がさらに引き上げられる。


中位精霊が低く唸り、体を押し出す。核を守るための最後の抵抗。低位精霊が再び寄る気配。数は少ない。今なら押し切れる。


刃先に水を集中させ、同じ裂け目へ通す。


「アクアスラッシュ」


五度目の斬撃が核へ深く入る。歪んだ魔力の流れが断たれ、中心の光が露わになる。


「今だ」


ガラティアが応じる。踏み込みを最大まで引き上げ、大剣を振り上げる。重心が沈み、力が一点へ収束する。


「崩城斬!」


二撃目。先ほどよりも深く、強く、正確に叩き込まれる。


――割れた。


核が砕ける音は、音というより感覚に近かった。内部の光が弾け、汚染の奔流が一気に外へ噴き出す。中位精霊の体表が崩れ始める。腕がほどけ、塊が崩れ、形を維持できなくなる。


終わりではない。核の残滓がわずかに残る。完全に断つ必要がある。一歩前へ出て、刃先を残滓へ向けた。


「アクアバースト!」


水圧が一点に集中し、命中した瞬間に爆散する。内部から弾ける衝撃が残滓を完全に破壊した。汚染の滓が四方へ散り、次の瞬間、すべてが霧のように消える。


静寂。


先ほどまでの圧が嘘のように消えた。空気が軽くなる。地面の軋みも止まり、木々の葉がわずかに揺れる。


息を吐いた。肩がわずかに落ちる。剣を下ろし、数歩だけ後ろへ下がる。ガラティアも大剣を地面へ軽く立て、呼吸を整える。


春月さくらの舞がゆっくりと止まる。桜色の光が薄れ、消える。


しばらく、誰も言葉を発しなかった。


やがてガラティアが口を開く。


「……終わったな」


頷く。


「長かったな⋯」


周囲の景色が変わり始める。黒ずんでいた草が色を取り戻し、木々の歪みが消えていく。空気の重さが抜け、森本来の気配が戻ってくる。


春月さくらがゆっくりと周囲を見回す。


「……綺麗」


小さく呟く。その言葉は、ここに来て初めて場に馴染んだものだった。


三人はその場に立ち尽くし、しばしの静けさを受け止める。戦いの余韻だけが、まだ身体に残っていた。

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