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激戦

二人が地を蹴った瞬間、中位精霊が動いた。唸りが膨れ上がり、腕の塊が左右同時に振り抜かれる。先ほどまでとは比べ物にならない速さだった。

クローディスは沈み込んで右の一撃をかわす。だが左からの衝撃が肩を掠めた。防具の表面を衝撃が走る。体勢が一瞬だけ崩れる。ガラティアは片方を大剣で受け流したが、押される。足が後退する。

「……っ」

ガラティアが息を飲む。受け流しきれなかった。腕に痺れが走っている。

「癒しの舞!」

春月さくらの声が飛ぶ。帯から春鏡を取り出し、そっと触れる。淡いピンクの光が鏡面に広がり、桜の音色が静かに鳴り響く。足元に光が広がり、舞い始めた。桜色の光がやわらかく広がり、二人の身体に触れる。肩の痺れが薄れる。ガラティアの腕の感覚が少し戻る。今はこれでも十分だ。

体勢を立て直す。距離を詰め、中位精霊の懐へ潜り込んだ。水をまとった刃が低く走る。

「アクアスラッシュ」

一閃で表面を裂き、濁った流れを露出させる。すぐ後ろからガラティアの大剣が叩き込まれる。重撃が同じ箇所に重なり、鈍い破砕音が森に響いた。だが完全には崩れない。硬い。圧縮された塊が内側で粘る。

中位精霊は腕を振り下ろした。至近距離。横へ流れ、地面を滑るように抜ける。ガラティアは受けない。軌道を外し、衝撃を逃がす。腕が地面を抉り、土が弾けた。視界が一瞬だけ遮られる。そこへ低位精霊が雪崩れ込む。二度目の呼び寄せ。土・風・水の濁りが混じり、群れの圧が増す。

一歩下がり、角度を取る。ここで数を削る。魔力の残りも少なく無駄撃ちはできない。息を落ち着け、詠唱へ入る。

「空より落ちる風よ重撃となり敵を打ち据えよ――ウインドフォール」

圧縮風が落ち、周囲の低位精霊をまとめて弾き飛ばす。落とし切れない個体が残が、ガラティアがそれらを押し潰すように前へ出る。

「烈斬破!」

衝撃が円状に広がり、散り残りを吹き飛ばした。

「支援、切り替えます!」

春月さくらの声。春鏡をそっと握る。淡い音色が響いた。舞が滑らかに変わる。

「軽風の舞!」

足元に薄い桜色の光が流れ、二人の動きがわずかに軽くなる。外周を大きく回り込む。正面で受けるのではなく、側面から削る。ガラティアが正面を引き受け、側面を切る。役割が自然に分かれた。

刃を斜めに走らせる。

「アクアスラッシュ」

同じ傷口を狙う。水をまとった斬撃が深く食い込み、歪んだ魔力の流れが露わになる。汚染の滓が逆流するように渦を巻いた。ガラティアがその瞬間を逃さない。身体を滑り込ませ、大剣を振り下ろす。衝撃が集中し、表層が大きく崩れた。だが核には届かない。

中位精霊が反撃する。体ごと押し出してきた。質量で潰す動き。ガラティアは半歩引いて受け流すが、押し出しの勢いが強い。肩口の鎧が衝撃を受け、金属音が響いた。肩口の鎧板が大きく歪み、内側へ食い込む。

「っ……」

ガラティアが歯を食いしばる。体勢は崩れていない。しかし確実にダメージが蓄積している。

「癒しの舞!」

春月さくらが即座に切り替える。春鏡に指を添える。桜の音が流れた。桜の光がやわらかく広がり、ガラティアの身体を包む。肩口の熱が引いていく。呼吸が整う。

足元へ刃を差し込む。低く、速く。

「アクアウェーブ」

横に走る水刃が接地部を薙ぎ払い、滑りを乱す。押し出しの軌道がわずかに逸れる。その隙にガラティアが体勢を完全に立て直し、肩口へ大剣を叩き込んだ。

再び低位精霊が寄る。三度目の呼び寄せ。数は先ほどより少ないが、タイミングが厄介だ。本体への圧が途切れる。

春月さくらの舞が変わる。春鏡が淡く光り、音色が広がった。

「増力の舞!」

桜色の輝きが増した。筋力が底上げされる。ガラティアの一歩が一段重くなる。

「前を押さえる」

ガラティアが言う。

「任せる」

外周へ回り、低位精霊の処理に移る。近接でまとめて捌く。最短動作で斬り、流れを止める。ガラティアは本体へ圧をかけ続ける。大剣の一撃ごとに表層が崩れ、傷が広がる。

低位を捌き切り、再び本体へ戻る。傷口は拡大している。まだまだ浅い。核の位置を探る。視線で追う。濁りの束が一箇所へ収束している。中心がある。そこだ。

「そこ、中心が寄ってる」

一言だけ告げる。ガラティアが目線を合わせ、頷く。二人は同時に動いた。切り開き、ガラティアが叩き込む。連携はより鋭くなる。

春月さくらの舞が再び変わる。春鏡をそっと握る。淡い音色が響いた。

「癒しの舞!」

桜色の光が溢れ、削れた体力と息をわずかに戻す。肩の重さが軽くなる。ガラティアの呼吸も整い、再び瞳に力が宿る。

中位精霊が低く唸る。内部の流れが荒れる。反撃の前兆。一歩前へ出て、同じ傷へ刃を重ねた。

「アクアスラッシュ」

斬撃が深く入る。直後、ガラティアの大剣が落ちる。衝撃が集中し、表層が大きく崩れた。汚染の奔流が乱れ、中心が露出しかける。

「あと一押しだ」

ガラティアが言う。

「ああ」

答えると同時に、足元の感触が変わる。再び低位精霊の気配。四度目の呼び寄せの兆し。時間はない。次で決める必要がある。

三人の呼吸が揃う。春月さくらの舞は維持され、桜光が視界の端で揺れる。刃先に意識を集め、ガラティアは大剣を肩口で止める。中位精霊の中心がわずかに脈打つ。

次の一手を叩き込む。

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