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中位精霊

地面が沈むように震えた直後、巨大な塊が滑るように前へ出た。土色の濁りが波打ち、周囲の低位精霊が呼応するようにざわめく。ガラティアが半身で構え、大剣を低く引く。クローディスは一歩前へ出て間合いを測る。空気の重さが明らかに違う。圧がある。

土属性。間違いない。一瞬だけ呼吸を整え、剣にまとわりつく流れを解く。次の瞬間、空気の質が変わった。軽さが消え、代わりに湿り気のある流れが剣と身体に沿う。防具の表面にも同じ流れが張り付く。風は消え、水が宿る。

精霊魔法の属性切り替え。消耗は大きい。だが土属性には、風よりはマシだ。

「切り替えたか」

ガラティアが横目でそれを捉えた。

「風では相性が悪い」

巨大な中位精霊が動く。前触れなく腕のような塊を振り下ろした。地面が抉れ、土が弾ける。クローディスは横へ跳ぶ。ガラティアは逆側へ地を蹴る。大剣を振り上げ、その腕へ叩きつける。手応えが重い。硬い。完全には崩れない。

同時に、周囲の低位精霊が一斉に動いた。呼び寄せられ、数が増える。

ここで数を削る。魔力の残りを確かめる。余力はまだあるが多用はできない。

息を落ち着けながら、最低限の力を絞り出した。

「空より落ちる風よ重撃となり敵を打ち据えよ――ウインドフォール」

風が落ちた。周囲の低位精霊がまとめて弾き飛ばされる。肩がわずかに落ちる。これ以上は連発できない。

「支援します!」

春月さくらが前へ一歩出る。帯から春鏡を取り出し、そっと触れた。淡いピンクの光が鏡面に広がり、桜の音色が静かに鳴り響く。次の瞬間、足元に淡い光が広がる。春月さくらはくるりと一回転し、舞い始めた。

「軽風の舞!」

桜色の光が舞い、二人の身体に触れる。その瞬間、身体が軽くなった。ただ軽いのではない。動きの切れが、明らかに違う。

ガラティアが低く呟く。

「……なんだ、これは」

思わず一歩前へ出る。身体が軽い。自分の動きに、一瞬だけ驚いた表情が浮かんだ。

前を向いたまま答えない。だが足元の感覚が研ぎ澄まされていくのが分かった。

春月さくらは舞いながら、震える声で言った。

「支援します!……精一杯」

中位精霊が再び腕を振るう。今度は速い。だが紙一重でかわす。間合いを詰め、刃を走らせる。

「アクアスラッシュ」

水をまとった斬撃が走り、巨大な塊の表面を切り裂く。内部の濁った流れが揺れる。だが浅い。まだ足りない。

ガラティアが続く。大剣を振り上げ、振り下ろす。重い一撃が同じ箇所を叩く。衝撃で表面が崩れる。完全には砕けない。

低位精霊が再び寄る。二度目の呼び寄せ。数が戻る。

数を処理しつつ、本体へ圧をかける必要がある。

春月さくらの舞が切り替わる。春鏡に触れる。桜の音色が鳴った。

「増力の舞!」

今度は桜色の光が濃くなる。軽風の舞とは違う。身体の芯から力が満ちてくる感覚だった。剣を握る手に重みが加わり、一歩一歩が地面に深く刻まれる。

ガラティアが大剣を握り直す。いつもより重心が安定している。

「……さっきとは別の力か」

低く呟き、そのまま前へ出た。

「押すぞ」

「ああ」

二人が同時に地を蹴った。中位精霊が低く唸る――反撃の前兆だ。

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