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繰り返す夢

暗い。

視界がない。

上下すら分からない空間の中で、クローディスは立っていた。

音だけがある。

遠くから、何かが軋む音。

そして――

声。

男の低い怒鳴り声。

女の、必死に何かを訴える声。

だが、言葉としては聞き取れない。

歪んでいる。

水の中で聞いているように、意味が届かない。

前方に、光がある。

古びた木の扉。

その隙間から、橙色の光が漏れている。

クローディスは歩き出す。

止まれない。

止まるという選択肢が存在しない。

扉へ手を伸ばす。

ゆっくりと、押す。

軋む音。

隙間が広がる。

――覗く。

その瞬間。

視界に入ったのは、

人ではなかった。

片腕が異様に膨張し、

皮膚が裂け、黒い靄が滲み出している。

顔は崩れ、

片目だけが濁っている。

――奇形の⋯人間?

その異形と対峙しているのは、両親だった。

父が剣で押さえ、

母は父のすぐ後ろで必死に声を上げている。

「お願い……!」

震える手を胸の前で組み、父の無事を祈ることしかできない。

必死の戦い。

その時。

母の視線が、こちらを捉えた。

一瞬。

時間が止まる。

「……っ!!」

表情が変わる。

恐怖でも、怒りでもない。

ただ一つ――

守る意思。

「逃げなさい!!」

声が届く。

今度は、はっきりと。

「クローディス!!逃げて!!」

何度も、何度も叫ぶ。

だが、体は動かない。

足が、動かない。

その時。

奇形の人間が、ゆっくりとこちらを向いた。

目が合う。

濁った視線。

認識された。

――次の瞬間。

世界が、黒に塗り潰された。

「――っ!!」

クローディスは飛び起きた。

荒い呼吸。

全身にまとわりつく汗。

心臓が暴れている。

数秒――いや、数十秒か。

時間の感覚が曖昧なまま、ただ呼吸を繰り返す。

「……夢だ」

理解する。

それでも体は納得していない。

胸の奥に残る感覚が、現実を主張している。

「……」

しばらく無言で座り込み、やがて立ち上がる。

「……行くか」

宿の食堂へ向かった。

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