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Chapter 28 : 再生する怪物……そして空を翔ける隊長

静寂が訪れたからといって――


危険が去ったとは限らない。


それは、さらなる悪夢の始まりに過ぎないのかもしれない。



レンはその場に立ち尽くし、工場の床一面に広がる血痕を見つめていた。


重苦しい沈黙が、その場を支配していた――。


その時。


ギィィ……。


鋭い金属音が響いた。


レンは反射的に部屋の奥へ視線を向ける。


部屋の最後にあった巨大な扉が――


ひとりでに開いた。


しかし……


誰も出てこない。


扉の向こうに広がっていたのは、何も見えないほどの深い闇。


まるで光さえ入り込むことを拒んでいるかのようだった。


次の瞬間――


その闇の奥から、一振りの鋭いナイフが凄まじい勢いで飛んできた。


「危ない!」


レンが叫ぶと同時に、レンとカイは互いに反対方向へ飛び退く。


ナイフは二人の間を通り抜け、そのまま壁の中央へ深く突き刺さった。


だが――


その直後、信じられないことが起こる。


ナイフは二人の目の前で徐々に消え始めた。


まるで最初から存在しなかったかのように。


そして……


何もない空間から石の壁が現れる。


壁は少しずつ高くなり、やがて部屋を完全に二つへ分断してしまった。


レンの目が見開かれる。


「そんな……!」


彼は壁へ駆け寄った。


「カイ!」


全力で壁を殴る。


一度。


二度。


三度。


だが、壁はまったく揺るがない。


返事も返ってこなかった。


静寂だけが残る。


レンは歯を食いしばり、不安を押し殺した。


そして、ゆっくりと振り返る。


その瞬間――


彼は凍り付いた。


部屋の奥にあった巨大な扉が消えていた。


代わりに現れていたのは、一回り小さな扉。


だが、その向こうには相変わらず深い闇が広がっている。


そして――


その闇から、何かが現れた。


怪物。


しかし……


レンが今まで見たどの怪物とも違っていた。


巨大な身体から放たれる圧倒的な威圧感。


狂気を宿した赤い瞳。


そして何より――


その怪物は、壁も扉も存在しないかのようにすり抜けて現れたのだ。


「……!」


レンは思わず一歩後ずさる。


(なんだ……この怪物は……!?)


次の瞬間。


怪物が轟くような咆哮を放つ。


工場全体が震えた。


レンは目を見開く。


(あの叫び声の正体は……こいつだったのか!)


怪物は考える暇さえ与えなかった。


恐ろしい速度で突進してくる。


その速さは普通の怪物とは比較にならず、レンは辛うじて最初の一撃を回避する。


怪物の拳が地面へ激突した。


工場全体が激しく揺れる。


レンは息を切らしながら後方へ跳ぶ。


しかし怪物は止まらない。


二度目。


三度目。


猛攻を繰り返す。


そして一撃が工場の外壁へ命中した。


壁は一瞬で崩壊する。


砕けた石が四方へ飛び散り、冷たい風が工場へ吹き込んできた。


レンは思わず息を呑む。


(たった一撃で……!?)


反射的にポケットへ手を入れる。


いつも持ち歩いている化学薬品の瓶を探した。


だが――


何もない。


レンの目が大きく見開かれる。


(そんな……! 来る前に確かに入れたはずなのに……!)


怪物は容赦なく迫ってくる。


レンは一歩ずつ後退した。


その背後には……


もう何もなかった。


壁は壊れ、その先には飛び降りることなど到底不可能な高さが広がっている。


そして目の前では、


怪物が最後の一撃を放とうと拳を振り上げた。


(終わった……)


その瞬間――


上空から一つの影が舞い降りた。


ガキィィン!!


鋭い金属音が響く。


怪物の拳が止められた。


レンの前へ降り立ったのは、一人の少女。


長い鉄製の棒で怪物の攻撃を受け止めていた。


それは……


以前、リオと一緒にいたあの謎の少女だった。


彼女はレンに息をつく暇さえ与えない。


高く跳び上がる。


棒を握り込んだ瞬間、


その両端から鋭い刃が飛び出した。


少女は空中で美しく一回転し――


怪物の両腕を一撃で切り落とした。


しかし……


二人の目の前で、その腕は驚異的な速度で再生を始める。


少女は目を細めた。


「やっぱりね……」


次の瞬間。


彼女は稲妻のような速さで突進する。


胸へ刃を突き立てる。


一撃。


だが傷は塞がる。


二撃。


三撃。


さらに何十回もの連続攻撃。


怪物に再生する隙すら与えなかった。


そして――


怪物は完全に動きを止め、


巨大な身体を地面へ倒した。


静寂が訪れる。


レンは心の底から驚いた表情で彼女を見つめていた。


しかし数秒後、


彼の表情はいつもの冷静さを取り戻す。


「君は……誰なんだ?」


そして静かに続けた。


「どうして空を飛べる? その力はどこで手に入れた?」


少女は小さく微笑んだ。


だが、どの質問にも答えない。


代わりに尋ねる。


「あなたがレン?」


レンは驚きながら瞬きをした。


「……ああ。」


眉をひそめる。


「でも……どうして俺の名前を知っている?」


彼女はその質問も無視した。


初めて、その顔に焦りが浮かぶ。


「ここへ来るべきじゃなかった。」


周囲を警戒しながら言う。


「今すぐここを離れて。」


「さもないと――」


一瞬言葉を止め、


「……殺される。」


レンには何も理解できなかった。


だが、こんな機会は二度とない。


彼は静かに言う。


「わかった。出て行く。」


そして彼女を真っ直ぐ見つめた。


「でも条件がある。」


少女は片眉を上げる。


「まず君が誰なのか教えてくれ。」


少女は微笑み、


あっさり答えた。


「私はユリ。」


そして続ける。


「ファイターズ2の隊長よ。」


レンはわずかに目を見開いた。


彼女はさらに言う。


「空を飛べるのは、化学薬品を飲んだから。」


そして小さく笑う。


「……そのことは、もう知ってるんでしょう?」


その瞬間、


レンは彼女の意味を理解した。


(つまり……リオとの約束を知っているのか。)


さらに質問しようとしたその時、


ユリは短く言った。


「行くわ。」


レンは崖際へ歩み寄る。


しかし足を止めた。


下はあまりにも高い。


その様子を見たユリは微笑む。


「私の手を握って。」


レンは驚く。


(片手だけで俺を……?)


考える暇もなく、


「早く。」


その直後――


ユリの表情が一変した。


目を大きく見開き、


レンの背後を見つめる。


レンも振り返ろうとした。


だが彼女は叫ぶ。


「後ろを見ちゃダメ!」


レンは動きを止めた。


そして彼女の手を握る。


ユリは軽々とレンを抱えたまま空へ舞い上がり、


安全に地上へ降ろした。


レンの足が地面に着いた直後、


ユリは再び工場へ向かって飛び立つ。


レンはしばらく彼女を見上げていた。


その時――


彼の目が大きく見開かれる。


「……カイ!」


カイはまだ工場の中だ。


レンは空へ向かって叫んだ。


「ユリ!」


だが彼女はすでに高く飛び去っており――


その声は届かなかった。


つづく……



新たな出会いは、さらなる謎を呼び寄せる――。


ご読了ありがとうございました。

次回もぜひお楽しみに!

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