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Chapter 27 : 謎の来訪者……そして血の痕跡

ある夜――


たった一人の存在が、すべての流れを変えてしまうことがある。


遠くから見守るだけのはずだったはずが、その瞬間は、想像をはるかに超える真実へと繋がる始まりだった。



レンとカイは工場の向かいにある建物の屋上に立ち、静かに工場の様子を見張っていた。


薄暗い灯りが金属製の壁を照らし、ビルの隙間を吹き抜ける冷たい風の音だけが耳に届く。


その時――


レンの視線が、一人の人物を捉えた。


「……リオ?」


小さく呟く。


そこには、数人の護衛を引き連れ、いつも通り自信に満ちた足取りで歩くリオの姿があった。


しかし、工場の門へ辿り着く直前――


一人の少女が彼の背後から姿を現した。


風に揺れる長いオレンジ色の髪。


そして、何を考えているのか読み取れない、輝く緑色の瞳。


彼女に気づいたリオは足を止め、ゆっくりと振り返る。


そして、レンですら聞いたことのないほど鋭い口調で言った。


「……お前がここで何をしている?」


少女は気にも留めないように肩をすくめ、小さく笑う。


「あなたを見てるのが好きだから。」


さらに一歩近づき、挑発するような声で続けた。


「でも、今回は誰に会うつもり?

私、あなたの秘密はほとんど知ってるのよ。」


一瞬言葉を切ると、目を細める。


「それとも――

みんなが思ってるような“英雄”じゃないのかしら?」


沈黙が流れた。


ほんの一瞬――


その言葉は、リオが誰にも触れられたくない場所を突いたようだった。


いつもの意味深な笑みは、跡形もなく消えていた。


やがて彼は、冷たく言い放つ。


「……もういい。」


そして、有無を言わせぬ口調で続けた。


「お前は一緒には入れない。」


その瞬間、護衛たちが鉄製の門を開く。


リオは工場の中へ入り、護衛たちも後に続く。


そして少女が入る前に、門は固く閉ざされた。


少女はしばらく門の前に立ち尽くしていた。


やがて、小さく呟く。


「……リオ。」


怒っている様子はなかった。


だが次の瞬間、何かを思い出したようにふっと顔を上げる。


その先には、高すぎて普通では到底届かない窓があった。


少女は自信に満ちた笑みを浮かべる。


次の瞬間――


彼女の身体は風を切るように空へと舞い上がった。


驚くほど軽やかな動きで窓まで飛び、一瞬で工場の中へ姿を消す。


レンとカイは同時に目を見開いた。


しかし距離が離れすぎており、二人の会話までは聞き取れなかった。


しばらくして、レンが静寂を破る。


普段の冷静さを保ちながらも、驚きを隠しきれない声だった。


「……どうして、あの子は空を飛べるんだ?」


そして、さらに落ち着いた口調で尋ねる。


「それに……彼女は何者なんだ?」


カイは腕を組み、いつものぶっきらぼうな口調で答えた。


「ケミカルのせいだ。」


「それ以外に説明はつかない。」


そう言って窓を見つめたまま、少し黙り込む。


「正体は知らない。」


目を細めながら続けた。


「だが、あんな能力を持っているなら……

幹部の一人である可能性は高い。」


そして工場へ視線を向ける。


「とにかく――」


「俺たちも、何としてでも中へ入る。」


レンは気づいていた。


さっきまで見せていた迷いは消え、カイはいつもの調子を取り戻していたことに。


レンは少しだけ視線を逸らし――


ほんの一瞬だけ、口元に小さな笑みを浮かべる。


(……元に戻ったな。)


そして再び工場へ目を向けた。


数分が過ぎる。


不意にレンが口を開いた。


「カイ。」


「何だ?」


「ナイフは持ってるか?」


カイは数秒レンを見つめ――


すぐに小さく笑う。


まるでレンの考えを見抜いたようだった。


「なるほどな。」


ポケットから数本のナイフを取り出し、一番最初の一本を窓の下の壁へ投げつける。


ナイフは深々と壁へ突き刺さった。


続いてレンが二本目を受け取り、一段上へ投げる。


三本目。


四本目。


二人は次々とナイフを壁へ突き立てていき、それはやがて窓へと続く小さな梯子のようになっていった。


二人は互いに目を合わせる。


そして同時に跳び上がった。


慎重にナイフを足場にしながら登り、ついに高い窓へ辿り着く。


二人は音もなく工場の中へ侵入した。


中は、想像していた光景とはまるで違っていた。


通路にはほとんど人影がない。


薄暗い闇が施設全体を包み込んでいる。


さらに、ケミカル兵器や薬液の入ったボトル、さまざまな装置が至る所に散乱しており、まるで少し前まで激しい戦闘が繰り広げられていたかのようだった。


その時――


鋭い悲鳴が工場内に響き渡る。


レンはその場で足を止めた。


声のした方向を探そうと視線を巡らせた、その瞬間――


偶然、足元へ目が向く。


そこには――


大量の血が広がっていた。


レンはわずかに目を見開き、


驚きを滲ませた声で呟く。


「……これは、一体……?」

今夜の出来事は、これから始まる物語のほんの始まりにすぎません……。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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