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チャンピオンとチャレンジャーたちと 第1話

ホテル滞在2日目。

スーパー・ポジティブ・スクワッドの皆さんは堀田さんを除いてそれぞれ仕事があるというのでお昼前に移動しました。また何かあったらと連絡先を交換し記念にと一緒に写真を撮りました。よっぽど気に入られたようね、とは堀田さん。

「特にあの3人は仕事以外の写真は撮りたがらないのよ。もうすっかり友達ね」

そうらしいんですけど、ふと思いました。私って芸能人と連絡先を交換して一緒に写真まで撮っちゃった!どうしよう、今になって急に大それたことをしてしまったようです。それをジト目で見る堀田さんは「私も一応そういう人なんだけど?」なんて言われてしまいましたが、毎日会ってるしおしゃべりもしているのでちょっと違うのですよ。芸能人というよりも苦楽を共にしてきた大切な同期のひとりなんですよね。


そうだ!上田さんの承諾次第ですけど、Honey or Trapのこと紹介してみようかな?最近は私たちのコスチュームだけでなくゲームやアニメのも手がけるようになって、オーダーメイドを受け付けたりゲームのデザイナーさんやアニメの製作者さんからも依頼があって、その出来栄えに「まるで原作の中からそのまま出てきたようだ!」なんていう評価を受けているので、向こうの世界に行けた時用に、自分たちがしたい装備を作ってもらって雰囲気だけでも楽しめたらどうかしらね。

ただ、素材はこっちの世界のものなので魔法の効果は期待できません。固く加工したかわのよろいや全身を覆うような金属の鎧、鉄砲の弾や刃物を通さない特殊な繊維でできたマントやローブ、刀鍛冶の技術で作った剣なら次の次の町くらいまでならいけると思うんですよ。でも物価が高いので180ゴールドや40ギルで買えるかどうかですね。も、もちろん剣は模造刀のようになると思いますけど。


そんなことを堀田さんと話しながらホテル内を移動していると、最新マシンが揃ったジムの一角で上田さんと渡辺さんが月刊女子プロレスともう一社の取材を受けているのが見えました。月刊女子プロレスは多分ネクストオールスターの時のことを改めてだと思うのですが、もう一社はどこでしょうか?

「あれはね、プロ野球の雑誌のシーガルズ担当の人だって」

工藤さんが後ろからやってきました。どうやらこちらも同じことと、特に横綱プレスことを聞かれたみたいです。ポーラの中の人ってバラされちゃったみたいですね。だったら私の方が適任じゃないですか?でも本当に聞かれたら困っちゃいますけど。

「晴ちゃんのことも話したんだけど、記事になるかわからないから私だけ取材を受けたんだけどよかったかしら?」

多分私がいても緊張して上手く話せなくて、工藤さんに丸投げしてしまいそうなので大丈夫です。それにしても、こんなところにまで来てお仕事に追われる上田さんも渡辺さんも大変ですね。


「よお、あなたたちも汗流してく?」

立野さんと山田さんがそのジムの中からやってきました。まさか利用してたんですか?わざわざホテルで鍛えなくてもって、昨日はプールでトレーニング的なことをやってましたねそういえば。せっかくなので使い心地だけでも試してみましょうか。

おお、見た目からして道場のとは違いますね。どこを鍛えたとか心拍数とか消費カロリーとかのデータを保存しつつ安全で効率的に鍛えられる最新型ですか、へえ〜。なんやかんやと小一時間体を動かしてしまいました。


そこから汗を流そうと大浴場へ5人で向かいます。初めて合宿所でみんなでお風呂に入った頃はかなり恥ずかしくていろんなところを隠していましたが、今は特に意識しなくなりましたね。地下1500メートルくらいから湧き出す温泉の泉質は強食塩泉で、保湿、保温効果や神経痛、冷え性に効能があるそうです、とうさぎちゃんみたいに説明してみたり。

他にも打たせ湯、酒風呂、薬草風呂、サウナなどもありゆっくりと楽しむことができます。これが山の方の戦国武将の隠し湯とかだったらなーとか思ってしまいます。そういうところの温泉って擦り傷、切り傷、打撲、ねんざに効能があるとかいうじゃないですか。プロレスはコンタクトスポーツなわけですから、戦国傍証並みに体を動かしてますからね。骨折以外は怪我のうちに入らない気持ちで試合に出ています。各自メンテナンスをしていますが、こういう形で体を休めることができるのはいいことです。


ちょっとのぼせ気味になってきたところでお風呂から上がり、いつもよりちょっとしっとりしたお肌を感じながら着替えると、先に出ていた堀田さんが浴衣を腕まくりした姿でコーヒー牛乳を飲んでいます。世間ではすっかり見るなくなったビンから口を離すとプハー!っと一言。

「もうこれがないと温泉に入った気がしないのよねー、次はフルーツ牛乳!」

お風呂上がりの火照った体に冷たい飲み物は五臓六腑に染み渡りますよね。釣られて私もコーヒー牛乳を一本。


「堀田さん、この休みが終わったらいよいよタイトルマッチですね」

「そうなのよ。この休みでだいぶリフレッシュできたから、明日からは気合を入れて挑みたいわね。宇野さんも調子良さそうだし、みんなの協力もあってラブリーペア対策もできたから余程のことがない限り負ける要素はないわね」

あれから毎日のように練習しましたもんね。試合中でもどことなくそれを意識した動きがあったり、それらが上手くハマっていたことからこれ以上ないくらいの手応えと自信がついての強気の発言なのでしょう。それ以外にも私たちに内緒で何かやっていたようなので、新しい技か連携があるのかもしれません。これは期待できますね。


そこへ立野さん、山田さん、工藤さんもやってきて、ファイト一発系の炭酸栄養ドリンクを飲んでいます。そういえばタッグで立野さんと工藤さんもタイトルマッチが控えています。

「江利花さんてまた体が大きくなってません?」

「そりゃあね、みづきさんたちと比べるとどうしてもテクニックじゃ敵わない分、パワーで押し切る方が手っ取り早いしこれしか思いつかなかったのよ。そんなわけで今度こそベルトをベルトを手に入れてみせるから覚悟しておいてね」

「負けるつもりはこれっぽっちもないけど、お互いに悔いのない試合にしましょう」

「晴子さん、こういうのって友情・努力・勝利って感じがしていいですね。私たちもおいて行かれないようにしないといけませんね」

どこかの少年雑誌のキャッチコピーみたいなこと言ってくる山田さんですが、確かに同期の皆さんがチャンピオンだったり挑戦者だったりする中、タイトルマッチに絡めない私です。皆さんの試合を見てるとね、どうしても一歩引いちゃうというか遠慮してしまうというか…そして私の場合、体重的にクイーン級とプリンセス級のちょうど境目辺りがベスト体重らしく、そこから軽くなっても重くなっても何か違和感がありまして。まあ今回のトーナメントでは実力不足だったこともあり負けちゃったので、私にはまだまだ足りないものがあったんだろうと遠慮していますが、あまりにも消極的すぎると上田さんに呆れられてしまいそうです。そうなる前になんとかしたいと思っている次第です、はい。


8月の最終土曜日にプリンセスのタッグとシングル、日曜日にクイーンのダッグのタイトルマッチが道場大会で組まれたことで、駐車場を解放しビアガーデンプロレスを開催することになりました。

夏休みの最後の思い出にとうちのスタッフさんと商店街の皆さんの協力で大会が開かれるわけですが、お客さんが集まってくれるかちょっと心配です。というのも数週間前に七夕祭りが終わった後だと、「あーこれで夏のイベントは終了、あとは暑いのを我慢しながら日常に戻るのにこのタイミングで?」なんて思われてしまうと考えていたのですが、商店街の皆さんからはなかなかの好感触、プロレスファンからはビアガーデンプロレスを体感してみたいという意見が多かったらしく、いざフタを開けてみたら試合開始前からチケットを求める行列と縁日のような屋台を楽しむお客さんが多かったのです。そしてこの暑い中待たせておくのもいかがなものかと、入場整理券と小さめのビニール袋に氷とスポーツドリンクを入れた者をお渡しして、少しでも熱中症にならないように配慮しました。


夕方6時の試合開始時間にはどっぷりと日が暮れて、照明と屋台から溢れる匂いがお祭り感があってちびっ子たちは走り回り、大人はほろ酔い気分でその雰囲気を楽しんでいます。ピークは過ぎたとはいえまだまだ蒸し暑いですけど、それに負けないくらいの熱い戦いに期待してください。間も無く試合開始です!

次話は5月5日を予定しています

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