第19話
地元商店街の七夕祭りの準備をいつものようにお手伝いして、いつものように試合でもお祭りを盛り上げた後、世間はお盆休みが終わり学校がそろそろ始まろうというどこかもの悲しげな八月の終わりのタイミングで、シーガルズのご厚意で親会社が経営しているホテルでナイトプールパシャパシャしております。あ、まだお昼でした。しかも二泊三日!ドリームファクトリーの選手とスタッフさんとです!なんて太っ腹!どうやらネクストオールスター戦の試合が予想以上に評判が良買ったのと、特にオーナーさんが上田さんのファンだったということもあり、これも何かの縁だからと招待していただいたそうです。後からスーパー・ポジティブ・スクワッドの皆さんも合流するそうです。
学校にあるのよりふたまわりくらい小さなプール、ビリヤードや卓球、ダーツなどできるがゲームコーナー、最上階の海が見える天然温泉などの施設からグランピングや遊泳禁止だけど人工的な砂浜も使い放題なんですって!リゾートホテルのような雰囲気もあって素敵なお休みになりそうですが、砂浜で体を埋めたりスイカ割りとかできそうな雰囲気ではありませんね。しないですけど。
そのことを聞きつけた商店街の青年部の皆さんがやってくるとか来ないとか、招待をしてくれってゴネたけど通常のご予約でしたらいつでも空いてますのでと笑顔で毅然と副支配人さんに言われて尻込んだとか、せめてプールだけでもって入場料?を聞いたらそれだけでヒザから崩れたとか、なぜか自分も関係者顔して会長さんがホテルでくつろぎながら教えてくれましたねー。
特に貸し切りではないので一般のお客さんもいるのですが、世間的にはまだ有名でなくとも結構な美人さんや美少女側の人たちが揃うと自然と目で追ってしまう男性もいるわけでして、連れの女性から冷たい視線を浴びたり叩かれたりする人もいて、あとで何か揉めたりご機嫌取りをさせられるかもしれないのは自己責任ということでお願いします。
「お姉さんたち、僕たちに一杯奢らせてもらえませんか」
などと2人の男性に声をかけられてプールサイドのバーで飲み会的なことが始まり、2時間後にはへべれけを通り越した相手が従業員さんに医務室まで連れていかれても、グラスを傾けお代のことは気にせずにとことん奢られている横田さんと宇野さんがちょっと怖く感じてしまったのは内緒の話です。
そんなお二人とは別にビーチパラソルの下ではワンピースのデザインながらも胸元がざっくりと鳩尾のあたりまで開いている上田さんとパレオ付きで背中が半分くらい見えている渡辺さんと普通の三角ビキニでしょうけど色々なところがポロリしちゃいそうなクリスさんが何やらお話をしています。時より笑い声が聞こえてくるのでお仕事のことじゃなさそうですね。
ハイネックビキニの大森さんと上下フリル付きビキニの松本さんとキャミソールみたいなビキニのゆりちゃんとクロスホルターネックのジャスミンさん?ジャスミンさん!がビーチボールでわちゃわちゃしています。お祭りの前から来日していたのは知っていましたがいつの間にか馴染んでますね。
立野さんと山田さんと工藤さんは普通の競泳用水着でプールの側面を行ったり来たりしています。それ何が面白いんですか?え?水の抵抗が負荷になるけど浮力があるから関節に負担をかけないいい運動になる?こんなところにまで来てそんなことしなくてもいいじゃないですか!せめて初日くらいはゆっくり体を休めましょうよ。
バッシャーン!と音とともに水しぶきが上がったと思ったら萩原さんが中野さんをプールサイドからブレーンバスターで投げてるじゃないですか!それは危ないですって!特殊な訓練をしてますけどダメですよ!水の中だからダメージはない?そうじゃなくって!足を滑らせて頭でも打ったらどうするんですか!長谷川さん、西田さん、真似しちゃダメよ?そんな羨ましそうに見てないで他のことで…プールの中でなら危険じゃない?そうかもしれないけど!
...まったく。それにしても皆さん、水着の色もコスチュームと似たような色やデザインを選んでるっぽいのはなんか不思議です。そんな私も人のこと言えたもんじゃないですけどね。
その日の夜はちょっとしたステージがあるパーティ会場でディナーを堪能したあと、飲み物やデザートを楽しみながら余興大会が始まりました。サングラス姿で有名なタレントさんのモノマネで司会進行をする萩原さんの紹介で夕方から合流したスーパー・ポジティブ・スクワッドさんのミニライブがあり、なぜかその5人を従えて松本さんがはっちゃけたり、3人組のテクノポップアーティストの曲を振り付けまで完璧にコピーした中野さんと大森さんと宇野さんだったり調べ物時事ネタを得意とする漫才師のネタを完全再現した立野さんと工藤さんだったり、去年流行ったアニメのコスプレ姿で主題歌のカラオケをした堀田さんだったりテーブルクロス引きを披露する長谷川さんだったり。上田さんが「面白かったら何か商品でも出そうか」なんて言うものだから皆さん結構力を入れて余興に取り組んでいたようです。私はというと、特撮もののサイボーグ刑事のモノマネで弾けもしないギターを背負い、歌を歌いながら事件現場に登場し決め台詞を言うだけ、のことをやってみました。当然のように他の皆さんからは、ナニソレシラナインダケド?的な雰囲気に包まれましたがパーティ会場で給仕をしてくれている年配の従業員さんと上田さんには伝わったようで、マイナーすぎるで賞ということで商店街の商品券をいただきました。なんやかんやありましたが余興をやった全員に配られていましたけどね。
食事会と余興が終わるとそれぞれ飲む人はラウンジに、温泉を楽しんだりゲームコーナーにと自由に過ごす中、私はスーパー・ポジティブ・スクワッドの異世界転生希望3人と一緒にあちらの世界に行ったらどうするかの検証会に巻き込まれてしまいました。
いわく、便利な魔法があるから文化的なことや技術的なことはあまり高くないだろうと。そこへ質の高い料理や工芸品などを売り出したら変に目立ってしまい悪徳貴族に目をつけられやしないか、娯楽が少ないだろうからリバーシやトランプなどを作ったら時代劇の越後屋みたいな悪行三昧の商人にバレて地下室で寝る暇もなく作らされるとか、使えるだけ使われてあとはポイっとされないかとか。剣と魔法の中世ヨーロッパ的な世界だと現代の日本と比べるとマナーとか秩序とかってそこまで高くないと思うんですけど、そのあたりはどうするんですか?そんな質問をぶつけてみました。
「そこは私たちも考えたの。小説みたいにいい人ばかりじゃないからね。だから、まずは力をつけるまで周りの溶け込むように暮らし、ひたすら訓練をしていくの。そこから冒険者になって力をつけて、味方を増やしながらギルドに信頼されるようになって、盗賊やモンスターの襲われている貴族や商人を助けて協力者になってもらうつもりよ」
なるほど。じゃあ魔法はどうしますか?そういう世界だけど自分たちが使えるとは限らないじゃないですか?
「いや、ソレはないと思います。転生の場合はあちらの世界の体を使えるので魔法がない世界以外は大丈夫だと思います。勇者召喚の場合はそういう要素があるから呼ばれるので魔法が使えないことはないはずです」
おお?そういうものでしょうか?
「そして、自分の体に魔力が備わっていれば毎日倒れるギリギリまで魔法を使っていけば回復するときに自分の魔力量も少しずつ増えていくのよ。そうすればどんな派手な魔法でも使えるようになるし、アニメを見ていればどんな魔法ができるかなんてすぐでしょ?」
そういうものなんですね。じゃあ魔法を使いながら料理や工芸品を作った、らあちらの世界の普通のものより品質が良くなったり特別な効果があるものができそうですね。
「そうなのよ!晴子さんわかってるわね!ゆくゆくは何でもいくらでも入るマジックバックやデコボコな道でも中の人は揺れを感じない冷暖房完備の馬車も作れるわね」
おおー、なんか盛り上がってしまいましたが、そんなことしたら余計に狙われたりしませんか?
「そうしたら3人で未開地とかの現地の人が禁忌とする山や森林に逃げるわ。そしてそこを開拓してゆったりのんびり暮らすのよ。もしかしたらエルフとか獣人とかと争うかもしれないけど仲良くなってみせるわ」
「そういうところってさ、きっと瘴気に汚染された湖とかあるのよ。それを浄化して湖の精霊から感謝されるのよね」
「そして感謝の気持ちって精霊特有の魔法を教わるのよ」
「そう!火・水・土・風・光・闇の6大魔法とは系統が違う精霊魔法ってやつね!それで森全体が操って追いかけてきた悪徳貴族を打ち負かすことができるのよ。もちろんこちらからは攻めたりしないけどね」
なるほどね。私ツヨーーーーーーイっ!ってやらないなら平和に過ごしそうですね。じゃあそもそもの話、何で異世界に行きたいんですか?
「何でってねえ、そこに異世界があるからよ。細かい理由なら魔法を使いたいとかモンスターを倒したいとかモフモフしたいとか、それこそゲームの世界で見た風景を実際にこの目で見たいとか色々あるんだけど、結局はそこなのよ」
「そうそう、こっちで知識や技術を身につけているのもそのための手段であって、何にも縛られず悠々自適に暮らしていきたい、その世界を見て回りたいのよね」
何だかわかったような、前提が都合よすぎるけど大丈夫かなーと思っていると、キャプテンのクミさんがやってきました。
「ほーら、そろそろ時間よ。晴子さんだっけ、ありがとうね」
と3人を引き連れてお部屋に戻っていきました。しばらくして堀田さんがやってきます。
「晴子ちゃん、あの3人がすごい機嫌が良かったんだけど何を話してたの?」
そうですね、異世界に転生したあとどうやって暮らしていくかとかですかね?
「はぁー、だからか!あんな話を聞いてあげてたのね。私とかクミさんはそんなことあるかい!ってちゃんと聞いてなかったから余計に。相手してくれてありがとうね」
いえいえ、それなりに興味深い話も聞けましたから。今まで読んできたような異世界に転生できたら大丈夫そうですよ?
「そんなところまで心配しなくてもいいと思うんだけど、よっぽど嬉しかったみたいでさー。ほら、3人とも見た目はモデル級だからグループの仕事よりそっちの方が多いけど、モデルはモデルでイロイロ大変そうだし他の子たちと話が合わなさそうだったからね。最近はゲーム配信の話は出てくるみたいだけどそれ以上はねー。あっ、そんなことより私たちも部屋に戻るわよ。久しぶりに同期で女子会よ」
立野さんが合宿所を出てからなかなか機会がなかったので、明日も休みだし遅くまでゆっくりお話しできそうです。
次話は4月25日を予定しています




