↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を巡るルア  作者: 焼肉一番


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/32

アイリ

「さーて、そろそろ行こうか……なあぁぁっ?!」


 もらった果物を平らげおもむろに立ち上がると、そこに居たのはエディが悪魔と形容した少女である。


「ありがと、ヤンちゃん」


「なんっ……なんっ……なぁぁっ?!」


 混乱して振り返ると、ヤンゼンの付けた指輪の石から緑の光が真っすぐ空に伸びていた。石には開閉式の小さな蓋が付いていて、それを開いたり閉じたりして点滅させてる。どうやらエディが見ていない隙にアイリに合図を出していた様だ。


「何それ?!」


「ん? 子供の迷子防止に使うルア製品」


「そうじゃないよっ! 何でそんなもんおっさんのヤンゼンがチカチカさせてんだよ!」


「すまんなエディ、俺はアイリちゃんの味方なんだ。晩飯食えないのはかわいそうだが、多少は腹の足しになっただろ?」


「あんなちっせぇ果物一個で足しになるかよっ!」


「じゃ~あとは若いお二人だけで~」


 微妙にそぐわない言葉を残しそそくさとヤンゼンがその場を去ると、アイリはそれを笑顔で見送ってから表情を一変させた。なるほど、悪魔と言いたくもなるだろう。


「さぁ、寄越しなさい」


 スラリと伸びた足で堂々と立ち、細い腕を組んで威圧する。


 露出の多い服から見える肌には痣が出ていた。


「暮らしていけなくなっちゃう! 来月じゃダメ?!」


「まさか……あんたもうあの店に行ったんじゃないでしょうね?!」


「えっへへ」


「借金返す気あるわけっ?!」


 ふざけた態度のエディにアイリがますます激昂する。


「あるよ! あるさ! その為にも店に通う事は必要なの!」


「しがない何でも屋のくせに見た目なんか気にしてどうすんのよっ! だいたいあんたの身体……」


 言うが早いか、アイリが素早くエディの服をめくりあげる。 


「いやぁっ! えっちえっち!」


 エディが自分の身体を抱き締めるようにしてアイリに背中を向けたが、一瞬ですっかり見られてしまった様だ。


「全然綺麗じゃん。そんなに見た目が気になるならまずは筋トレでもしたらって感じ~。ま、本当の目的は分かってるけどね……」


 つまらなそうに言った最後の言葉はエディには届かない。


「人の価値観にあれこれ言ったらいけないんだぞ! 俺は気になるの! 気になってまめに通ってるからこそ綺麗なの!」


「返すもん返してくれたらあたしだって文句言わないってーの!」 


 これ以上の問答は無用だと、アイリはとうとう動いた。狙っているのはエディの尻ポケットに入っているであろう財布だ。


「待って! せめて晩飯代!」


 エディが背中を取られない様に立ち回る。


「ヤンちゃんに何か貰ったんでしょっ!」


 ちょこまかと背中を守るエディに焦れたアイリは公共のゴミ箱の上にひょいと乗り、そこからジャンプしてエディの背後を取った。そのままスルリと尻ポケットから頭を出していた財布を奪う。エディはもう抵抗しなかった。


「大人しく取られるんだ?」


「ふんだくっといて良く言うよ!」


「ううーわ、全然入ってないじゃん」


 アイリが財布の中身を確認して嘆く。


「必要経費を抜いたらそうなんの!」


「あのねぇ、回収出来たお金から一パーセント還元する約束でヨーズにあんたの依頼の詳細教えてもらう事にしたから。これからはごまかそうとしても無駄よ」


「はぁっ?! それじゃコーニコちゃんに会えないじゃん!」


 思わず本音が口をつきエディは慌てたが、そんな事はとっくにアイリに知られている事である。


「だっっさ! ちゃんと告白して彼女にしたらどう?」


「お……俺なんかに好かれても困らせるだけだろ……だったらお店に通う方がコーニコちゃんの為……」


「あっそ、でも残念、もうお店には通えません」


 アイリが意地悪くそう言って財布を掲げると、突然何者かにそれを上から掴み取られる。


「?!」


 驚いたアイリは咄嗟に奪われまいと抵抗したが、財布を掴んだのは二メートルはありそうな大男。なんと財布ごとアイリを持ち上げてしまう。


「お……おい!」


 突然の乱入者にエディが間に入ろうとそう言ったが、男はそのままアイリを払う様に軽く腕を振り、それだけでアイリは吹っ飛ばされた。


「きゃっ……!」


「!」


 街灯にぶつかる寸前、エディが先回りしてアイリが直撃しないよう受け止める。そのまま二人で尻もちを付いたが、アイリもエディも怪我はしていない。

 アイリは背中を支えられたまま、そっと真後ろのエディの顔を覗き見る。

 そこには借りた金を返せない、吸瘴師通いの冴えない男は居なかった。


「おい……何すんだ」


 聞いた事がない様な、怒気を孕んだ声。


「財布を取り返してやったんだ」


 しかし男は低い声で悪びれずに言う。またムッとしたエディだったが、アイリの視線に気付いたのかいつもの空気を纏った。


「大丈夫か?」


「う……うん」


 アイリはそう言うと立ち上がったが、エディは街灯に身体を預けたままで続ける。


「あのねーお兄さん、俺この子にお金借りてるの。むしろ悪いのは俺の方なの。事情も分からないで女の子に乱暴な真似するの、俺はどうかと思うよ?」


 情けない事を言うエディを上から下から眺めまわし男は短い質問を投げた。


「……エドワード・エイマーズじゃないのか?」


 ピクリとエディの眉が動き、また見た事のない表情を見せる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。