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星を巡るルア  作者: 焼肉一番


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心残り

 大股で後ろを振り返らずに進むランとの差が開いたところで、すぐ前を歩いていたアイリがくるりと振り返った。


「……あたしは、助かったから」


 何の脈絡もなく言われた気がしてエディは首を傾げる。


「あんたの炎であたしは助かった」


 あ……と理解して反応に困る。咄嗟にとは言え、命を選ぶような事をしてしまったと思うからだ。


「だからありがとう」


 しかし、アイリはそう続けた。

 少し頬を赤らめ、変に口を尖らせ、それでも目を見て、そう言ってくれた。


「!」


 忌むべき炎だと思っていた自分のルアに、こんなに真っすぐ感謝してくれる人が居るなんて思った事がなかった。エディの鼻がツンとなる。


「あ……いや……」


 嬉しい。だけどそんな風に思ってしまっては奪ってしまった命に申し訳ない。エディはそれを難しい顔で隠す。


「ま! ランちゃんも死なないって言うから死なないんだと思うしね! ねーランちゃん! さっき使った武器さぁ~……」


 天邪鬼なアイリは、ちゃんとお礼を言った事が急に気恥ずかしくなったのか、ランに追い付こうと走った。


「……」


 胸が温かい。


「おい待て! あの武器に関して俺にも聞かせろ!」


 もしかしたらランは死なないんじゃないか。なんの根拠もないのに、なんだかそんな気にさえなって来る。ありがとうには沢山の効果がある様だ。


「あれはルア製品。俺にしか扱えない。その辺のルアンジュの炎には負けない威力が出るが扱いが難しく連発は出来ない」


「その辺のルアンジュで悪かったわね」


「いやその辺にルアンジュ居ないから。てか、ランにしか扱えないのにルア製品ってどう言う事だよ? 売れないじゃないか」


「ああ、売りものじゃない。砂海の恵雨の技術者が俺用に作った」


「え……でもルアを使った製品って……」


 公国がすべて把握しているのが本来のルア製品だ。しかし、砂海の恵雨は反公国組織。そんなルールに従う筈もない。


「ま、そりゃそうか。そうだとしても、ルア製品を作れる人間が居るってのも凄い話しだな。公国に抱えられていなければノウハウもなかっただろうし天才なんじゃ?」


「うんうん! ランちゃんもルアンジュ並みに強いしさぁ! 公国にとっちゃなかなかに脅威なんじゃないの?」


「その技術者は、もう死んだ」


 一見変らぬ調子でそう言ったランだったが、少しだけ重いものを感じた二人はどちらからともなく視線を合わせ、黙った。きっとランにとってただの仲間ではなく、大事な人だったのではないかと思ったのだ。


「なんて人?」


 もうこの話しは掘るべきではないと思ったエディに反し、アイリがそう言った。


「何故そんな事を聞く?」


「そうだ、別に誰だって良いだろ。聞いてもどうせ分かんねぇんだから」


「そうだけど……リンカネーションがルア製品使うんだな、しかも作っちゃうんだなって思ったら……興味沸くじゃん」


「だから、俺達はリンカネーションではない。当然、砂海の恵雨の主張はルアを使うなでもない」


「あれっ? そうなんだ? そう言う事は先に言っておけよ」


 ランはちゃんと説明しようとしたが、エディが聞く耳を持たなかったのだ。そのこと自体を忘れているエディをチラリと横目で見てランは小さく溜息を吐いた。


「お喋りは後だ。緊急の助けが必要な現場がなければすぐこの街を出る。誰かがルアを飛ばしているだろうから時期に騎士団も来るだろう」


「あ……ああ……とね、ルアは、昨日のうちに飛ばしてるみたい」


「は?」


 アイリが怪訝そうに片眉を上げ、ランが視線で説明を求めた。

 二人は昨日エディが大はしゃぎでコーニコとのデートに向かった事を知っている。事の顛末を説明するのはとても……辛かった。自分がたくさんの人の命を奪い、公国に処刑されるべき人間なのだと言う事も伝えねばならない。


「あはははは! だっっっさ! 結局最初からコーニコにその気はなかったんだぁ~!」


 傷口を抉る様にアイリが盛大に笑った。アイリにとってはエディにどんな過去があると言う事よりも、コーニコにカッコ悪く振られていた事の方が興味がある様だ。


「笑い事じゃない。怪我人の救出はもう無事な人間に任せてすぐに街を出なければ」


 騎士団はここに、魔獣退治ではなくエドワード・エイマーズの処分と、リンカネーションの処分にやってくると言う事だ。


「あははは! ねぇ後でもっと詳しく聞いて良い?!」


「やだっ! 早く行くぞっ! もうっ!」


「騒々しいな。もう来ていてもおかしくないんだ、これから極力目立たない様心掛けて行動してくれ」


「目立つな? そんなデカい図体したランちゃんに言われたくない」


「だからマントで隠している。お前の金髪は派手だから気を付けろ。エドワード・エイマーズ、お前は地味だが騎士団に顔を知られている。遠回りになるがメイン通りを避けで西から街を出よう」


「いや上背は隠せないでしょ……」


「ま……、言う通りにしますよ」


 地味だなどと余計な事を言われつつ、これまでの行動でランを信用したエディは大人しくランに従う事にする。騎士団を辞めて八年、戦いから身を引いて隠れるように暮らしていた自分よりよっぽど色んな事に関する勘が鋭い筈だ。


「心残りもないし、身一つで付いて行くぜ」


「それはこっちもやりやすいな」


 じゃり……パキ……と、色々な音を立てながら蹂躙された街を歩く。


「エディ君!」


 と、そこへ、エディの心残りになり得た人物が汗にまみれて姿を現した。だいぶ息も切れている様で、瘴気が晴れてからエディを探し回っていた様だ。


「コーニコちゃん……」

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