↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を巡るルア  作者: 焼肉一番


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/31

どれくらい生きれば

「はぁ……はぁ……しんど……。だけどもう片付きそうだな」


「小型は全部片付けたのか?」


「えーっと、ここに来るまでに一体。あとは全部吸収されたと思うよ」


「確かめたか?」


「そんなもんっ! どうやって確かめれば……」


 ランの感覚が優れているのか、それとも何かコツがあるのか、もうだいぶ小さくなった魔獣に背を向けて少し責めるような気持ちでランに振り返った。

 すると、ランの背中越しでこちらを見ているアイリの背後にどこにはぐれていたのか小型魔獣が襲い掛かろうとしているのが見えた。


「アイリ!!!」


 突然の大声にアイリはビックリして目を丸くしたが反応出来そうにない。咄嗟に手を突き出すエディ。

 さっきは出なかった。出ると思ったタイミングで出す事が出来なかった。今また、そんな事になれば間に合わない。


「来い……!」


 掛け声の代わりに、エディは祈る様にそう呟いた。

 すると……。

 エディの掌から真っすぐに碧い炎が放たれ、音を置き去りにする様なスピードでアイリの背後に迫っていた魔獣に直撃する。そして……。


 ……キィ……ンッ……。


 グラスの縁を指でなぞる様な音が聞こえて来る頃には、もう魔獣は霧散していた。


「……!」


 エディの炎が真横を突き抜けた時、ほとんど表情の変わらなかったランの顔が驚愕に変った。


「えっ……?」


 ランよりも近い位置でエディの炎を感じたアイリは、目を丸くしたまま後ろを振り返った。もう、何も居ないそこを見詰め続ける。

 当たったところだけ穴が開いたり、すぐに修復されたりする事もなく、綺麗に消滅したのだ。

 誰が見ても、かなり強力な炎だと思うだろう。アイリの炎と比べてもだいぶ質の違うものだ。一言でルアンジュと言ってもかなり個人差がある事がわかる。それは練習や訓練ではどうにでも出来ない部分だ。

 エディの炎は強力で、かつ美しい。ランもアイリも、そう感じた。

 当のエディは良かった、と間に合った事に安堵するが、使いたくなかったルアの炎を放ってしまった事にすぐ後悔した。


「悪い! つい……! 大丈夫か?!」


「ふ……ブランクはあってもちゃんと使えるみたいだな。これからもしっかり油は注しておけよ?」


「何流暢な事言ってんだよ! お前俺の炎の特性しってんだろ……?!」


 お返しだとばかりに、ランは喚くエディの真横に槍を滑らせる。それはまだ動き続けていた元大型魔獣に突き刺さり、とうとう大型は弾ける様に霧散した。

 街全体を覆っていた重苦しい瘴気が嘘の様に晴れ、ようやく悪夢から目覚めた感覚になる。この空を見れば、工場に避難している住人達も街が救われたと気付いて出て来るだろう。

 だがエディだけは、より絶望的な悪夢に飲み込まれてしまった。


「ああ……! もう……!」


 両手で頭を抱えてその場に蹲る。こめかみの傷に触れたが、そんな痛みなど忘れるくらにはショックだった。


「顔を上げてくれ。せっかく勝利したんだ」


「勝ったって死んだら意味ないだろ?!」


 お望み通りエディは顔を上げたが、その顔はランの望むものではない。


「俺は死なない」


「……はぁ……」


 まただ……と、エディは膝を抱え、そこに顔を埋めた。


「根拠ねぇんだろ……。俺を慰める為ならありがとよ、自分が死ぬかも知れないのにあんた大した男だな」


「現にピンピンしているだろう」


「いつ影響が出て来るか分かんねぇっての!」


「どれくらい生きれば瘴気のせいじゃないと信じる?」


「……」


 考えた事もない事を聞かれ、エディはまたゆっくりと顔を上げて考えてみた。


「……一年?」


「ながっ! そんなにあったら暴飲暴食で死ねるわよ!」


 会話を聞いて近付いて来たアイリがそこに割り込む。


「セブズ村の住人は五日後には皆亡くなっていたと聞く。俺が五日生き延びれば、信じるか?」


「個人差があるだろ……。お前デカいし、強そうだし……」


「人間の個人差など、ルアからしたら大した差じゃない」


「何それ意味分かんねぇ……お前ルアの気持ち分かんのかよ……いやルアってそもそも何なんだよ……なんかもう概念みたいなもんじゃん……」


 おそらく、自分はランを死なせてしまうだろう。


「……死んだらごめん……。死んだら……」


 そうなったらもう、自分が出来る事をやるしかない。責任を持ってランの意思を引き継ごう。エディはそう覚悟を決めた。


「怪我人が居ないか見て回る。済んだら今日中に街を出よう」


 感傷的になっているエディにはこれ以上付き合う気はないらしい。ランはさっさと歩き出し、先程放置していた鉄の塊を回収した。使っていた槍も分解し、巨大な背嚢の中へ仕舞い込む。そしてかなりの重量があるそれを軽々担ぐと、これまた巨大なマントを羽織り、背嚢ごと身体を隠した。


「ランちゃん、この街の人の為にめっちゃしてくれるんだね」


「砂海の恵雨の理念はまず第一に……」


「あーごめんごめん! とにかくありがとうって言いたかっただけ!」


「そうか」


 面倒そうな話しをアイリが遮ると、エディもようやくのろのろと立ち上がる。


「ここに早速怪我人が居ますけど」


「立って歩ける人は怪我人じゃないんじゃなーい?」


「相変わらず厳しい奴……」


 震える足に鞭打ち、エディはランとアイリの後に続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。