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レアと中庭でおしゃべりするようになって、学院内で変な噂が流れるようになった。
「レアがあたしを苛めてるって噂が流れてるのよっ!」
「まぁ」
「まぁ、じゃないって。全然そんなことないってのにさぁ」
「気にすることじゃないわ。だってそれで損する人なんていないじゃない。ね」
「いやいやレアの評判が悪くなる、のよね?」
どこからそんな噂が出たのか知らないけれど、こうして中庭にいるあたしたちを見た誰かが勘違いして流した噂だと思う。
その噂を聞いたあたしは憤慨したわ。すんごく怒った。
けど、たかだか村娘のあたしが貴族さまに話しかけることなんてできるわけがない。
「理由は他にもあると思うわね」
「ん?」
「中庭に二人でいるだけじゃなくて、ね。私は教会から聖人指定されているのよ。そしてミラは教会からお墨付き、しかも秘術持ちの特別な女の子。私が嫉妬してイジメても皆様には不思議なことじゃないわね」
「えっ、レアがあたしに嫉妬? ありえない」
横に座るこの美少女にあたしが嫉妬? 周囲のお嬢様方はよっぽど目が曇ってる。家柄も良くて、学院の成績も常に上位。
あたしが訝し気に見つめると、レアはそんなことないわ、と首を横に振った。
「私もミラには嫉妬するのよ。けれどそれが理由であなたを苛めたりはしないわ」
「うーん。どうにかして誤解を解く方法はないのかな」
「別にそんなことをしなくてもいいでしょう。私はあなたを友達と思っている。そしてあなたも私を友達と思っている。それで問題はないでしょう」
「悔しくないの? 絶対あの人たちレアに嫉妬してるんだよ」
「悔しい、ですか。ふふっ、私はミラがこのように私の心配をしてくれていることが嬉しいですよ」
「はぁ、レアってば本当にいい子なのね」
レアは少し照れたように頬を染めた。
「ところでずっと聞きたかったんだけど、どうしてレアはこんな庶民のあたしと仲良くしてくれるの?」
いまだに爵位とかはよくわからない。
王様が一番偉くて、爵位持ちの貴族が次に偉い。そしてお金をたくさん持っている商人。最下層はあたしたちだ。
レアはそんな貴族の中でもすごくすごく偉いらしい。だって他の令嬢たちもレアの前に出るととたんに委縮してしまうもの。
「ミラが特別な女の子だからよ」
「そんなあたし特別じゃない。突然、秘術を持っているとか言われ、王都に連れてこられただけ。いまだに自分の秘術がなんなのかもわからないし。本当は全部勘違いで、あたしはやっぱりただの村娘じゃないかって思うもん」
「そんなことないわ。本当にあなたには秘術があるのよ。私が保証するわ」
「レアに言われると本当なんじゃないか、って思えるわ」
「あら本当よ。ねぇこれから言うことは私とミラだけの秘密」
レアが声を潜めて、顔を近づける。
近くで見るレアの顔は同じ人間なのか疑いたくなるような美しさで、胸が少し高鳴ってしまった。
もちろん声など潜めなくてもこの中庭にいるのはあたしとレアだけだ。けれど、真面目なレアの姿が可笑しくてあたしも声を潜めて返事をする。
「もちろん。誰にも言わない」
「私も秘術を持っているの」
「え?」
「未来を見通す予言の秘術よ。司教様にミラのことを告げたのは私なんだもの。だから本当にミラは特別な女の子よ」
「えっ、ちょっと待って。嘘。だって、え」
突然の告白に驚き、しどろもどろになってしまう。
レアはそんなあたしを見て落ち着いて、と言って笑った。
「予言と言っても断片的な未来しか知ることはできないんだけどね」
「本当……なんだよね」
「えぇ、だから何度でも言うけれどミラは本当に秘術を持っているわ」
「なら、あたしがなんの秘術を持っているのか教えて欲しい! お願いレア」
あたしがそう願うとレアは少し悲しそうな顔をした。
「ごめんなさい。それは言えないの。時が来ればわかるわ。それまでは待って頂戴。でもねこれだけは信じてミラ。秘術なんてなくてもあなたは私にとって特別な女の子よ」
面と向かってそんな照れくさいことを言ってくるレア。思わず顔が真っ赤になってしまう。
「そうだ代わりにひとつ予言をあげるわね。この後ミラは素敵な運命の出会いがある。きっと世界を変えてしまうようなね」




