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6/8

:駅の向こう

夕暮れはとっくにすぎている。暗闇につつまれる駅前の商店街。数分前の会話を思い出している。


―駅の、いつも使ってない出口のほうに新しくスーパーができたらしいよ


と、僕が言ったんだった。


―お、開店セール


ズっちゃんはうきうきして返してきて、さっそく外に出る支度をはじめた。


そしていま、僕たちは目指している。駅の向こうに新たにオープンしたスーパー「39ベリマッチョ」に。


「ネーミングセンス、すごいね」


「でも、忘れないよね」


「マッチョな店員がいるとか?」


「裸で?」


「さすがにそれはないでしょ」


いつも使っている駅だけど、出口が違うだけで戸惑いが大きい。自分の行動範囲の狭さに、ちょっぴり情けなくなる。ズっちゃんはというと、そんなことないみたい。まあ、ズっちゃんだし、そこはねえ。


赤と黄色を基調とした新しいお店はすぐにわかった。お店に入りきれないくらいのお客さんを想像していたのだけど、そんなことはなかった。すんなり店には入れた。時間も時間だし、それに各駅しか止まらない駅なんだから、それもそうか。


「裸の店員さんいないね。それに細いし」


店に入って、いきなりズっちゃんはそんなことを言う。


「ベリマッチョってそういう意味じゃないんじゃない」


「ふうん。ねえ、今夜は冷奴で一杯やらない?」


「いいねえ。枝豆は?」


「それはもちろんだよ」


「この店、魚安いね」


「焼き魚? フライ?」


「ここんとこ、くだもの食べてないかあ」


「スイカは?」


「丸ごと一個は無理だよ」


「アイスならいいでしょ」


「そうだね。アイスにしよっか」


いつの間にか、買いものかごのなかは僕たちの好きなもので満杯になった。


「たまには違うお店で買いものっていうのもいいね」


駅の向こうというたったそれだけのことなのだけど、いつもと違う空間は僕たちにはえらく新鮮だった。


その日の夜は、僕たちにしては、まあまあのごちそうといったところだった。


「今日行ったスーパーからちょっと行ったところにおいしいパン屋さんあるんだって」


「よし。今度行こう」


「お。なんかやる気」


もしかしたら、初めて行ったあのスーパーに、少しばかりやる気をわけてもらえたのかもしれない。お礼を言わないとな。


―39ベリマッチョ





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