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39: ハチマンの家

逮捕令状が執行された。名古屋の小さな部屋で、承勲は初めて祖父と向き合う。「1962年に俺がしたことだ。言い訳はしない」——韓鍾洙が口にしたその言葉を、承勲は「法廷でおっしゃってください」と返した。抵抗しなかった祖父。そして名古屋警察署で、声もなく漂った一言——「ごめん」。趙東赫の名前が、初めて逃げずに正面から降り積もった。

# 第39話

**ハチマンの家**


---


2024年11月。

ソウル。


承勲は事務所で電話を受けた。


韓国検察庁の担当検事だった。


「日本の法務省から協力の決定が出ました。逮捕令状の執行への協力を得られました。」


承勲はしばらく黙っていた。


「いつですか。」


「早ければ今週中に可能です。日本の警察が現場での執行を担当し、韓国側は令状および法的書類の支援をします。」


「わかりました。」


電話を切って在俊に連絡した。


*令状執行の決定が出た。日本の警察が動く。*


在俊がすぐに答えた。


*俺たちはどうする?*


*現場に行かないといけない。法的手続き確認および身元確認の役割で。*


*わかった。いつ出発する?*


*明日の朝。*


---


名古屋。


三人がまた来た。


承勲、在俊、朴世勲。


今回は日本の警察と一緒だった。名古屋警察署の担当刑事二人が同行した。


刑事の岡田が言った。


「韓国の検察から受け取った令状です。日本の法務省の協力承認も出ています。手続き上問題ありません。」


「ありがとうございます。」


「現場への進入は私どもが行います。韓国側は身元確認および法的書類の処理をお願いします。」


「わかりました。」


---


町の端の建物。


前回朴世勲が確認したあの建物だった。


日本の警察が先に扉を叩いた。


しばらく何の反応もなかった。


二度目のノック。


今度は中から音が聞こえた。何かが引きずられる音。ゆっくりと動く足音。


扉が開いた。


カン・ドユンだった。


彼は承勲を見てしばらく止まった。


「承勲さん。」


「カン・ドユンさん。」


カン・ドユンは扉の前に立ってしばらく黙っていた。それから後ろへ退いた。


「入ってください。」


---


中に入ると、小さく古い部屋だった。古い家具。光があまり入らない窓。


そして窓際の椅子に韓鍾洙が座っていた。


車椅子だった。


承勲はその場で止まった。


*祖父。*


最後に顔を見たのがいつだったか覚えていなかった。その間に体がかなり弱っていた。顔が痩せ、眼差しが曇っていた。


韓鍾洙は承勲を見た。


何も言わなかった。


岡田刑事が前に出ながら言った。


「韓鍾洙さん、韓国検察が発付した逮捕令状と日本法務省の協力承認に基づき、あなたを逮捕します。1962年3月18日、聞慶市・青文高校近くで発生した高校生殺人事件に関する容疑です。」


韓鍾洙はその言葉を聞きながら目を閉じた。


しばらく沈黙が流れた。


そして彼は目を開けた。


「わかった。」


抵抗しなかった。


---


カン・ドユンが静かに言った。


「会長、法的手続きで最善を尽くします。」


韓鍾洙はカン・ドユンを見てから頷いた。


「わかってる。ありがとう。」


その言葉は短かったが重かった。


---


承勲は一歩近づいた。


韓鍾洙が彼を見た。


孫と祖父が向き合った瞬間だった。


韓鍾洙が先に言った。


「ここまで来たんだな。」


「はい。」


「諦めなかった。」


「最初から諦めるつもりはありませんでした。」


韓鍾洙はその言葉を聞いてしばらく目を閉じた。


「承勲。」


「はい。」


「趙東赫という子。」


承勲はその名前を聞いて何も言わなかった。


韓鍾洙が続けた。


「1962年に俺がしたことだ。言い訳はしない。あの子が死んだのは俺のせいだ。」


部屋の中に沈黙が流れた。


承勲はその言葉を長い間聞いた。


「法廷でおっしゃってください。その言葉を。」


「そうする。」


韓鍾洙は頷いた。


---


外に出ながら在俊が承勲の隣に立った。


「どうだった?」


「抵抗なく逮捕された。」


在俊はしばらく黙ってから言った。


「そうか。」


朴世勲は建物の外で待っていた。


承勲が出てくると聞いた。


「できましたか?」


「うん。」


三人はしばらくその場に立っていた。


朴世勲が言った。


「これから韓国に行くんですか?」


「うん。韓国で裁判が始まる。」


---


名古屋空港。


飛行機を待ちながら承勲はベンチに座っていた。


在俊が隣に座りながら言った。


「終わった。」


「まだじゃない。裁判が残ってる。」


「わかってる。でもひとまずここまでは来たじゃないか。」


承勲は窓の外を見た。


名古屋の空が高く青かった。


祖父が逮捕された。


その事実がまだ実感できなかった。


恐れでも、怒りでもない何か。まだ名前のつけにくい感情だった。


*趙東赫。*


その名前が静かに浮かんだ。


*今度こそ法廷で真実が明らかになる。*


*もう少し。*


在俊が言った。


「承勲。」


「うん。」


「お疲れ様。」


承勲はその言葉を聞いてしばらく目を閉じた。


「まだお疲れ様というには早いんだけど。」


「それでも。」


二人はしばらく沈黙の中に座っていた。


朴世勲が飲み物を持って戻ってきて座りながら言った。


「飛行機30分後です。」


「うん。」


三人は並んで座って窓の外を見た。


---


一方、名古屋警察署。


韓鍾洙は静かに座っていた。


カン・ドユンが隣にいた。


手続きが進んだ。身元確認、書類作業。


韓鍾洙はそのすべての過程を無言で受け入れた。


カン・ドユンが言った。


「韓国への移送手続きが進みます。数日かかるかもしれません。」


「わかってる。」


「法廷で最善を尽くします。」


韓鍾洙はカン・ドユンを見た。


「カン・ドユン。」


「はい。」


「お前は法の中だけで戦った。それが正しかった。」


カン・ドユンは答えなかった。


韓鍾洙は窓の外を見た。


名古屋の空が見えた。


*承勲は諦めなかった。*


*結局ここまで来た。*


*あの子は俺に似ている。*


その考えが怖くもあり、不思議と別の感情も混ざっていた。


依然として説明できない感情だった。


*趙東赫。*


その名前が初めて、逃げずに正面から浮かんだ。


*ごめん。*


その言葉が部屋の中で静かに、声もなく漂った。


---


ソウル。


空港を出ながら承勲はスマートフォンを取り出した。


世英にメッセージを送った。


*できた。戻ってきた。*


世英がすぐに答えた。


*本当に?よかった。ご飯食べた?*


承勲はそのメッセージを読んで短く笑った。


*うん。食べた。*


*帰ってきたら連絡して。*


*うん。*


在俊が隣で言った。


「これから裁判の準備しないといけないな。」


「うん。起訴状の最終検討して、鄭成浩さんの陳述書を法院に提出しないといけない。」


「呉美子さんの方は?」


「ご連絡しないといけない。法廷での証言が可能かどうか。」


「わかった。」


二人は空港の出口を出た。


ソウルの冬が始まっていた。


風が冷たかった。


承勲はしばらく空を見た。


*裁判が残っている。*


*しかし今、法廷で戦えるものが揃った。*


*趙東赫。*


*もう少し。*


その誓いが静かに、深く刻まれた。

第39話を読んでくださり、ありがとうございます。承勲と韓鍾洙が初めて正面から向き合う場面を書きました。「法廷でおっしゃってください」という承勲の一言——怒りでも、許しでもない。ただ真実を求める人の言葉でした。そして韓鍾洙の「ごめん」は、誰にも聞こえなかった。しかしそれが60年以上かけてたどり着いた言葉でした。次話、いよいよ法廷です。よろしくお願いします。

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