表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/40

38: 名古屋の影

名古屋郊外の静かな町で、朴世勲が窓際の車椅子を目にした。「います」——その一言が三人の間に静かに落ちた。しかし承勲は直接動かなかった。インターポル報告、検察連絡、日本警察への協力要請——すべてを法の中で進めて、ソウルへ戻った。一方、韓鍾洙は「あの子らしい方法だ」とつぶやき、初めて正直に思った。「どれくらい耐えられるだろう」と。

# 第38話

**名古屋の影**


---


2024年6月。

名古屋空港。


三人が降りた。


承勲、在俊、朴世勲。


空港を出ると名古屋の春の空気が顔を包んだ。


在俊がスマートフォンを取り出して地図を確認しながら言った。


「名古屋郊外。ドイツ系移民の村の方向だ。車で40分くらい。」


「わかってる。」


朴世勲は無言で周りを一度見渡した。


三人はレンタカーを借りた。


---


名古屋郊外。


狭い路地が続く静かな町だった。古い建物たち、赤レンガの塀。人が多くなかった。


在俊が言った。


「カン・ドユンの方から出た情報がこの町を指している。でも具体的な住所はない。」


「じゃあ足で探すしかない。」


三人は町の入り口から少しずつ動き始めた。


承勲は町を歩きながら周りを確かめた。


*韓鍾洙はここにいるのか。*


確信はなかった。カン・ドユンの情報が意図的に流したものなのか、そうでないのかもわからなかった。


しかし確認しないといけなかった。


---


午後。


三人は町の中の小さなカフェに入った。


在俊が日本語で主人に話しかけた。


短い会話が交わされた。


在俊が戻って座りながら言った。


「この町に韓国人が長く滞在したことがあるって。ここ数ヶ月の間に。」


「どこに?」


「町の端の建物だって。ドイツ系の老人が所有している建物で、韓国人の老人が部屋を借りて使っているって。」


承勲はしばらく考えた。


「直接行ってみないといけない。」


朴世勲が言った。


「俺が先に確認してきます。」


「危ないかもしれない。」


「ただ見て回るだけです。入るんじゃなく。」


承勲はしばらく彼を見てから頷いた。


「気をつけて。」


---


30分後。


朴世勲が戻ってきた。


「います。」


その一言でカフェの中が静まった。


「確かか?」


「車椅子が見えました。窓際に。顔は見えなかったけど、体型と雰囲気が写真と一致します。」


承勲はしばらく目を閉じてから開いた。


*祖父がそこにいる。*


その考えが静かに降り積もった。


在俊が言った。


「これからどうする。」


「直接入るのはだめだ。俺たちにできるのは法的手続きだ。」


「インターポルに所在確認を報告して、日本の裁判所に逮捕令状への協力を要請するということ?」


「うん。それと韓国の検察にも連絡しないといけない。起訴意見書はすでに提出されているから、国際協力の手続きを踏める。」


在俊は頷いた。


「時間がかかるだろうな。」


「わかってる。でもそれが正しい方法だ。」


朴世勲が言った。


「その間に移動したらどうするんですか。」


「監視が必要だ。俺たちが直接するわけにはいかない。日本の警察に協力を要請しないといけない。」


---


その夜。


承勲はホテルの部屋で電話をかけた。


韓国検察庁の担当検事。


「名古屋で所在を確認しました。国際協力手続きをお願いします。」


「確かですか?」


「はい。目視確認しました。」


「わかりました。日本の法務省の方に連絡します。時間がかかるかもしれません。」


「わかっています。」


電話を切った。


在俊からメッセージが来た。


*インターポルにも報告した。所在確認完了として登録された。*


承勲はそのメッセージを読んでしばらく窓の外を見た。


名古屋の夜が広がっていた。


*祖父があの町のどこかにいる。*


その考えが静かに浮かんだ。


---


一方、同じ時刻。


町の端の建物。


韓鍾洙は窓際の椅子に座っていた。


カン・ドユンから連絡が来た。


「承勲さんが名古屋にいます。所在が確認されたようです。」


韓鍾洙はその言葉を聞いてしばらく黙っていた。


*来たんだ。*


窓の外に町の灯りが見えた。


体がかなり弱っていた。歩みが遅くなり、息がすぐに切れた。


*あの子がここまで来た。*


怖くないといえば嘘だった。


しかし同時に、別の感情もあった。


*諦めなかったんだ。*


その考えが長く留まった。


カン・ドユンが続けた。


「法的手続きを踏むと思います。国際協力の要請が入るかもしれません。」


「わかってる。」


「対応の準備が必要です。」


韓鍾洙はしばらく黙ってから言った。


「カン・ドユン。」


「はい。」


「弁護は続けてくれるか?」


電話の向こうでしばらく沈黙が流れた。


「会長。」


「うん。」


「正直に申し上げてもいいですか。」


「言ってくれ。」


カン・ドユンはゆっくりと口を開いた。


「法的手続きの中で最善の結果をご提供すると申し上げました。その約束は守れます。しかし。」


「しかし?」


「法の外の方法は私がお手伝いできません。その線は私には越えられません。」


韓鍾洙はその言葉を長い間見つめた。


「法的手続きだけで戦おうということか?」


「はい。それが私にご提供できる最善です。」


韓鍾洙は窓の外を見た。


町の灯りが揺れていた。


「わかった。」


電話を切った。


韓鍾洙は長い間その灯りを見つめた。


*法的手続き。*


承勲も法的手続きで来る。自分も法的手続きで戦う。


*結局法廷で会うことになるのか。*


それが正しいのかもわからなかった。


その考えが静かに浮かんだ。


---


翌朝。


三人はカフェで向かい合って座った。


在俊が言った。


「日本の法務省から連絡が来た。国際協力手続きを検討中だって。時間がかかるかもしれないと。」


「どれくらい?」


「早ければ二週間。長ければ一ヶ月以上。」


朴世勲が言った。


「その間に移動したら?」


「インターポルが監視の要請をした。日本の警察が協力することになった。」


承勲はコーヒーカップを見下ろしながら言った。


「俺たちはソウルに戻ろう。」


在俊が彼を見た。


「ここに残らないで?」


「俺たちがここでできることはすべてやった。所在確認、インターポル報告、検察への連絡。残りは手続きが進むのを待たないといけない。」


朴世勲が言った。


「韓鍾洙会長がまた逃げたら?」


「インターポルが監視している。それに。」


承勲はしばらく言葉を選んでから言った。


「祖父はもうかなり弱っている。体が。これ以上遠くへ逃げるのは難しいだろう。」


その言葉が部屋の中に静かに降り積もった。


在俊が言った。


「それでも万が一に備えないといけない。」


「わかってる。でも今俺たちがここで待つより、ソウルで法的手続きを早く進める方が効率的だ。」


在俊はしばらく考えてから頷いた。


「わかった。」


---


ソウルへ帰る飛行機の中。


承勲は窓の外を見た。


名古屋が遠ざかった。


*祖父を見た。*


いや、正確には見ていなかった。朴世勲が窓際の車椅子を見たのだった。


しかしそこにいるということは確認した。


*これから法的手続きが進めば。*


*法廷に立てられる。*


それがこの戦いの終わりだった。


承勲は目を閉じた。


*趙東赫。*


*もう少し待って。*


その言葉が静かに、心の中に刻まれた。


---


ソウル。


空港を出ながら在俊が言った。


「これから待つんだ。」


「うん。」


「どれくらいかかるかわからないけど。」


「わかってる。」


朴世勲が言った。


「俺は何をすればいいですか。」


承勲はしばらく考えてから言った。


「会社の仕事をしっかりやって。それと日本の方で何か動きがあったら教えて。」


「情報のルートがあるんですか?」


「カン・ドユンの方の情報が今回一度出た。また出るかもしれない。」


朴世勲は頷いた。


三人は空港の出口を出た。


ソウルの夏が始まっていた。


承勲はしばらく空を見た。


*待つ。*


*しかし諦めない。*


その誓いが静かに、深く刻まれた。


---


名古屋。


韓鍾洙は窓際に座っていた。


カン・ドユンから再び連絡が来た。


「承勲さんがソウルに戻りました。」


韓鍾洙はその言葉を聞いてしばらく黙っていた。


「帰ったのか?」


「はい。しかしインターポルの監視は続きます。国際協力手続きも進行中です。」


韓鍾洙は窓の外を見た。


名古屋の夏の空が高かった。


*帰ったんだ。*


その考えが静かに浮かんだ。


直接対面しに来たのではなかった。所在を確認して法的手続きを踏みに来たのだった。


*あの子らしい方法だ。*


韓鍾洙は長い間空を見つめた。


体が疲れていた。以前よりずっと早く疲れるようになった。


*どれくらい耐えられるだろう。*


その考えが初めて、正直に浮かんだ。


*法廷に立つことになるだろう。*


*いつかは。*


それを止められないということを、韓鍾洙は今わかっていた。

第38話を読んでくださり、ありがとうございます。承勲が祖父の所在を確認しながらも、直接動かないという選択をした話を書きました。「法の中でやる」という承勲の一貫した姿勢が、この話でもっとも鮮明に表れています。そして韓鍾洙の「どれくらい耐えられるだろう」という言葉——これが二人の対決の終わりが近づいていることを告げています。次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ