表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/40

33: アンナの真実

タスマニアの小屋に現れたアンナ。向かい合った二人の間に流れる、60年分の沈黙。「1958年にあの子を追い払うべきではなかった」——韓鍾洙が初めて口にした言葉。そして承勲は弁護士試験に合格し、鄭成浩がまだ大阪で生きているという知らせを受ける。「真実を明らかにする。それが目的だ」——ノートに書かれたその一文が、いよいよ動き出す。

第33話

アンナの真実


2023年春。

タスマニア。

韓鍾洙は小屋の窓際に座っていた。

外に雨が降っていた。この人里離れた町に来てから数ヶ月が経っていた。国際刑事警察機構の追跡があることは知っていた。しかしまだここまでは来ていなかった。

スマートフォンは切ってあった。

ニュースは時々小さなラジオで聞いた。

韓鍾洙は窓の外を見た。

雨がガラス窓を叩いた。

終わりが来ている。

その考えが静かに浮かんだ。


その日の午後、扉の前にノックの音がした。

韓鍾洙はゆっくりと立ち上がった。

扉を開けた。

アンナだった。

白いシャツに黒いコート。歳月をかわしたような姿。長い間変わらない顔。

「どうやってここへ。」

アンナは無言で中に入った。

韓鍾洙は扉を閉めた。

二人は小さな卓の前に向かい合って座った。

しばらく沈黙が流れた。

韓鍾洙が先に言った。

「お前はいつも言っていた。裁きは真実に従って来ると。」

「そう。」

「それがもう来たってこと?」

アンナは答えなかった。

韓鍾洙は窓の外を見た。

雨は降り続けた。


「アンナ、一つだけ聞かせてくれ。」

韓鍾洙がゆっくりと口を開いた。

「1961年に青文高校にロシア語の教師として来たとき。あのとき既に知っていたのか?俺がどうなるか。」

アンナはしばらく考えてから言った。

「知らなかった。ただ見た。お前がどんな人間かを。」

「それで?」

「それで言った。正直に生きろと。裁きは真実に従って来ると。」

韓鍾洙はその言葉を長く見つめた。

「でも俺は聞かなかった。」

「そう。」

短い答えだった。しかしその中に込められたものが重かった。


韓鍾洙は目を閉じた。

1958年の冬。

その記憶が浮かんだ。

雪がたくさん降っていた夜だった。風が強かった。しかし窓を叩く音がした。

開けてみると幼い子供だった。痩せていて、着物が薄かった。雪に濡れていた。熱があるようだった。

「解熱剤ありますか?弟が具合悪いんです。」

その声が震えていた。

鍾洙はその子を追い払った。寒いのに窓を壊したという理由で。きつい言葉を言った。そして扉を閉めた。

翌日、その子が夜通し雪の中に倒れていたという話を聞いた。村の人が見つけて連れていったと言った。

その子の名前を知ったのは後だった。

趙東赫。

そして数年後、1962年の卒業式の夜。

その名前と再び向き合った。

韓鍾洙は目を開けた。

俺がやったんだ。

その考えが初めて、逃げずに正面から降り積もった。


「アンナ。」

「うん。」

「お前はどれくらい生きたんだ。」

アンナはしばらく黙ってから答えた。

「長い間。」

「200年を超えたよな?」

「そう。」

韓鍾洙は彼女を見た。

「なんで少しも老けないんだ。」

アンナは窓の外を見ながら言った。

「それは大切なことじゃない。」

「大切なことじゃないって?」

「私がどれくらい生きたかじゃなく、私が何を見てきたかが大切なんだ。」

韓鍾洙はその言葉を噛みしめた。

「じゃあお前は何を見てきたんだ。」

アンナはしばらく考えてから言った。

「人々が罪を犯して、隠して、逃げて、そして結局向き合うのを。その繰り返しを。」

「いつも向き合うことになるのか?」

「いつも。」

韓鍾洙は目を閉じた。

いつも。

その言葉が重く降り積もった。


しばらくして韓鍾洙が言った。

「承勲が弁護士になったら俺を探しに来るだろう。」

「そうだろうね。」

「あの子が法廷に立てようとしたら……」

アンナは彼の言葉を遮らなかった。ただ待った。

韓鍾洙は言葉を続けられなかった。

窓の外に雨がガラス窓を叩いた。

「あの子を初めて見たときからわかっていた。眼差しが違った。ただの孫じゃない気がした。」

アンナは何も言わなかった。

「趙東赫に似ていた。あの眼差しが。」

その言葉が部屋の中に静かに広がった。

韓鍾洙はしばらく黙ってから口を開いた。

「俺は間違いを犯した。」

その言葉が初めてだった。

誰にも言ったことのなかった言葉。

「1958年にあの子を追い払うべきではなかった。1962年にあんなことをすべきではなかった。その後に隠れるべきではなかった。」

韓鍾洙の声が低く震えた。

「遅すぎたな。」

アンナは彼を見た。

「遅くないことはない。」

「それはどういう意味だ。」

「まだ生きているなら、できることがあるということよ。」

韓鍾洙はその言葉を長く見つめた。


一方、ソウル。

2023年冬。

承勲は試験会場を出た。

弁護士試験。

最後の科目が終わった瞬間、承勲はしばらくその場に立っていた。

ソウルの冬の空が高く青かった。

ここまで来たんだ。

除隊後の復学。卒業。ロースクール。そして今日。

長い時間だった。

在俊が試験会場の外で待っていた。

「どうだった?」

「わからない。全部やった。」

「うまくいった?」

「やった。」

在俊はフッと笑った。

「お前の表情、悪くないぞ。」

二人は並んで歩いた。

在俊が言った。

「俺も今回受けた。結果一緒に待とう。」

「うん。」


結果発表日。

承勲は一人部屋で画面を開いた。

合格。

その言葉が画面に浮かんでいた。

長い間その言葉を見つめた。

弁護士。

2019年、聞慶でノートに書いたことが浮かんだ。

目的:真実。

趙東赫。韓鍾洙。1962年。

まだ終わっていない。

その文たちが一つずつ浮かんでから静かに沈んでいった。

スマートフォンが鳴った。

在俊だった。

「俺も合格した。」

「そうか。」

「それだけか?」

承勲はしばらく考えた。

「ありがとう。一緒にここまで来た。」

在俊はしばらく黙ってから言った。

「いよいよ本当の始まりだな。」

「うん。」

「鄭成浩さんを見つけた。大阪に住んでいらっしゃる。八十二歳で、お元気な方だって。」

承勲はその言葉を聞いてしばらく目を閉じた。

ご存命だ。

「いつ行ける?」

「お前が準備できたら。」

「来月。」

「わかった。」


世英に合格の知らせを伝えた。

世英は電話を受けてしばらく黙ってから言った。

「立派になったな。」

「うん。」

「ご飯は食べた?」

「うん。」

「よかったよ、承勲。」

短い言葉だった。しかしそれで十分だった。


その夜、英勲から連絡が来た。

メッセージだった。

弁護士になったと聞いた。お前がどんな道を行こうとも父はお前の味方だ。ただ一つだけお願いする。祖父を憎んでいい。でもその憎しみがお前を壊さないようにしてくれ。

承勲はそのメッセージを長い間見つめた。

祖父を憎んでいい。でもその憎しみがお前を壊さないようにしてくれ。

22話でアンナが言っていた言葉が浮かんだ。

目的が復讐の人と真実の人は、結局違う道を歩むことになる。

承勲は返信を送った。

わかってます。心配しないでください。


夜。

承勲は机の引き出しを開けた。

鄭成浩の手紙。

色あせた紙。かすれた文字。その中に書かれた名前。

韓鍾洙。

来月には大阪に行く。

鄭成浩に会う。

目撃者の声を直接聞く。

それがこの戦いの次の段階だった。

承勲は手紙を再び折って封筒に入れた。

ノートを広げた。

2023年冬。弁護士資格取得。

次の段階:大阪。鄭成浩。

その下に。

真実を明らかにする。それが目的だ。

ノートを閉じた。

窓の外にソウルの夜が広がっていた。

遠くで灯りたちが揺れていた。

趙東赫。

その名前が静かに、深く降り積もった。

まだ終わっていなかった。

しかしいよいよ、始めることができた。

第33話を読んでくださり、ありがとうございます。韓鍾洙がアンナの前で初めて「俺は間違いを犯した」と言う場面を書きました。60年以上かけてたどり着いた言葉。その重さをできるだけ丁寧に書きました。そして承勲の弁護士合格——長い道のりがここで一つの形になりました。次話では大阪へ向かいます。次話もよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ