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32: エンドゲームの始まり

呉美子が、61年の沈黙を破ってカメラの前に立った。震える手で取り出した一枚の写真。「趙東赫が韓鍾洙に殺されました」——その一言が、すべての歯車を動かし始める。道峰グループの株価暴落、英勲の記者会見、そしてタスマニアで一人テレビを見つめる韓鍾洙。「お前のせいじゃない」と承勲を抱いた世英。ノートに書かれた一文——「呉美子は61年待った。俺はそれより短く終わらせる。」

第32話

エンドゲームの始まり


2022年初め。

韓鍾洙がカナダへ去って数ヶ月が経った。

捜査は遅々として進まなかった。検察は国際協力を要請したが進展がなかった。韓鍾洙の行方は依然として不明だった。

承勲はソウル大学に復学した。

講義室に座って教授の言葉を聞きながらノートに書き取った。隣の学生たちは承勲が誰かを知っていた。道峰グループの孫。兵役不正疑惑。海兵隊への志願入隊。その名前がニュースに上がっていた人物。

しかし誰も話しかけなかった。

承勲も先に話しかけなかった。

講義が終われば図書館へ行った。民法、刑法、民事訴訟法。積み上げないといけないものが多かった。

その中でも、本棚の間に鄭成浩の手紙の写しが挟まれていた。

韓鍾洙。

その名前が書かれた紙。


在俊はロースクールの入学試験を準備していた。

時々承勲と会った。水原近くのカフェで、あるいはソウルの図書館の前で。

ある日在俊が言った。

「大阪の方で鄭成浩さんの行方を追ってる。知り合いを通じて。」

「進展は?」

「1990年代まで大阪に居住していた記録がある。それ以降が不明だ。」

承勲は頷いた。

「ご存命なら八十を超えていらっしゃるはずだ。」

「そう。時間が多くない。」

二人はしばらく沈黙の中に座っていた。

在俊が言った。

「パンデミックが明け次第、日本に行かないといけない。」

「うん。」


2022年秋。

賛赫から連絡が来た。

久しぶりだった。高麗大学医学部に在学中の賛赫が先にメッセージを送ってきたのは初めてだった。

承勲、ちょっと会える?

ソウル近くのカフェで向かい合って座った。

賛赫はコーヒーを一口飲んでから言った。

「最近どう。」

「まあまあ。お前は?」

「俺も。」

しばらく沈黙が流れた。

賛赫が先に口を開いた。

「ジェウォンの話、聞いたか?」

承勲は顔を上げた。

「何の話。」

「英民から聞いたんだ。地方のどこかで暮らしてるって。連絡は取れないって。知り合いもほとんどいないって。」

承勲はしばらく黙っていた。

賛赫はコーヒーカップを見下ろしながら続けた。

「高校のとき、俺が図書館で歴史の年表の話を一言したじゃないか。それが最後だった。その後一度も連絡してない。」

「俺も同じだ。」

「あの子が今どうしているか誰も知らないというのが……なぜか気になってしまってる。」

承勲は窓の外を見た。

秋の陽光が降り注いでいた。

ジェウォン。

23話で雪の中に倒れた子。図書館で歴史の年表を書いていた手。允成が手を差し伸べたとき掴んだその手。

「生きてるだろう。」

承勲が言った。

「どこかで。」

賛赫はその言葉を長く見つめてから頷いた。

「そうであってほしいな。」

二人はしばらく無言で座っていた。

賛赫が席を立ちながら言った。

「俺、来年軍隊に行こうと思ってる。」

承勲は彼を見た。

「医学部を休学して?」

「うん。どうせ行かないといけないなら、今やった方がいいと思って。」

「そうだな。」

賛赫はしばらく承勲を見てから言った。

「お前がやっていること。うまくやってるよ。」

その言葉は短かったが重かった。

承勲は頷いた。

「ありがとう。」


2023年2月。

呉美子。

その名前を承勲が再び思ったのはニュース速報を通じてだった。

80歳の老人がカメラの前に立った。

震える手で古い写真を取り出した。

「この人が……私の婚約者、趙東赫です……」

彼女の声が画面を通じて聞こえた。

「61年前、あの夜に趙東赫が亡くなりました。何の罪もなく……韓鍾洙に。」

記者たちの間に沈黙が流れた。

承勲はモニターの前でその場面を見つめた。

全身が固まった。

心が沈むような感覚がした。

呉美子。趙東赫の婚約者。6話で精神病棟にいるという話を聞いた人。その人が今カメラの前に立っていた。

61年。

その数字が静かに降り積もった。

美子がまた言った。

「私はあの日以来、長い間苦しみました。言えなかったんです。怖くて。でも今は言わないといけないと思いました。」

彼女の涙が画面を通じて見えた。

承勲はモニターを見つめながら長い間座っていた。

趙東赫。

その名前が浮かんだ。写真の裏に書かれていた名前。ハチマンの家の書類で見た名前。

そして手のひらの中でずっと前から漂っていた残像。

承勲は目を閉じた。


道峰グループの株価が急落した。

メディアは連日記事を出した。韓鍾洙。1962年。趙東赫。殺人。

オンラインコミュニティでも話が広まった。情報提供が上がってきた。正体不明のユーザーたちが資料を分析した。

その中で承勲は静かにすべてをモニタリングした。

韓鍾洙は逃げたけど、真実はもう出始めている。

その考えが静かに浮かんだ。


数日後、道峰グループ公式記者会見。

英勲がマイクの前に立った。その傍らに三人の娘が並んで立っていた。

「罪を犯したのは私の父、韓鍾洙であり、道峰グループの役職員と事業パートナーたちは今回の事件と無関係であることを申し上げます。」

声が震えた。しかしその言葉には真心が込められていた。

「私たち家族は遺族への補償と真相調査に誠実に協力いたします。」

承勲はその記者会見を家で一人見た。

父の声が画面を通じて聞こえた。

罪を犯したのは私の父。

その一言が長く残った。


その夜。

世英が居間で承勲を探した。

ニュースが終わって家の中が静まり返った時間だった。

世英は承勲の隣に座った。

何も言わなかった。

しばらくして世英が先に言った。

「承勲。」

「うん。」

「お前のせいじゃない。」

その言葉が部屋の中に静かに広がった。

承勲は答えなかった。

世英が彼を抱いた。

承勲は目を閉じた。

お前のせいじゃない。

その言葉が不思議と長く残った。


オーストラリア・タスマニア。

人里離れた田舎町の小さな小屋。

韓鍾洙はリモコンを握ったままテレビの画面を見ていた。

呉美子の記者会見。道峰グループの株価暴落。英勲の記者会見。

そして国際刑事警察機構の国際指名手配リストに上がった自分の名前。

韓鍾洙は長い間その画面を見つめた。

リモコンを置いた。

部屋の中が静かだった。誰もいなかった。

窓の外から風の音が聞こえた。

61年。

その数字が静かに浮かんだ。

1962年。趙東赫。あの路地。あの夜。

ずっと前に埋めてきたものが今すべて水面上に浮かび上がっていた。

韓鍾洙は目を閉じた。

アンナが言っていた。裁きはいつもお前が最も油断しているときに来ると。

その言葉がまた浮かんだ。

まだ生きていた。しかしこれが生きているということなのかわからなかった。

国際刑事警察機構が追跡していた。メディアが名前を呼んでいた。遺族が出てきた。

終わりが来ている。

その考えが鮮明に来た。

韓鍾洙は窓の外を見た。

タスマニアの空が暗かった。星がいくつか見えた。

承勲。

その名前が静かに浮かんだ。

お前はやり遂げたんだな。

その考えが怖くもあり、不思議と別の感情も混ざっていた。

説明できない感情だった。

韓鍾洙は長い間その空を見つめた。


承勲はその夜、机に座った。

引き出しから鄭成浩の手紙を取り出した。

色あせた紙。かすれた文字。その中に書かれた名前。

韓鍾洙。

いつか法廷で取り出す日が来るだろう。

まだその日は来ていなかった。卒業もしないといけなかった。ロースクールにも行かないといけなかった。資格も備えないといけなかった。

しかし方向は明らかだった。

真実を明らかにする。

それだけだった。

承勲は手紙を再び折って引き出しに入れた。

ノートを広げた。

白いページ。

ペンを取って書いた。

鄭成浩。大阪。必ず見つける。

そしてその下に。

呉美子。61年待った。俺はそれより短く終わらせる。

窓の外にソウルの夜が広がっていた。

遠くで灯りたちが揺れていた。

承勲はノートを閉じた。

いよいよ始まりだった。

第32話を読んでくださり、ありがとうございます。呉美子が語り始める場面を書きながら、胸が熱くなりました。61年間、誰にも言えなかった言葉。それが今ようやく世に出た。タスマニアで一人星を見上げる韓鍾洙の「お前はやり遂げたんだな」という言葉——裁く側と裁かれる側の間にある、説明できない感情を込めました。次話もよろしくお願いします。

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