29: ハン・ジョンスが描いた空
ハン・ジョンスが描いた空——そのタイトルの重さを、この話で初めて実感する。
2020年、パンデミックという予期せぬ壁の中で、ハン・ジョンスはひとり、弁護団を組み、証拠を封じ、孫の動きを読もうとしている。対するスンフンは海兵隊の営舎の中で、除隊後の道筋を静かに描いている。
二人は一度も同じ場面に登場しない。それでも、この話はずっと二人の対話だ。
祖父は孫を恐れながら、誇りに思っている。孫は祖父を追いながら、まだその背中の意味を知らない。
空は一つなのに、二人が見ている景色はまるで違う。
第29話:ハン・ジョンスが描いた空
2020年1月。
ハン・ジョンスは夜明けに目を覚ました。
窓の外にはソウルの闇が広がっていた。まだ陽が昇らない時間。
彼はベッドから起き上がり、机の前に座った。引き出しから古い書類を取り出した。
弁護団名簿。
三つの名前が記されていた。
クリスティナ・ロン。アメリカ。刑事専門。
フリードリヒ・バウアー。ドイツ。国際刑事法。
カン・ドユン。韓国。元特捜部検事。
ハン・ジョンスはその名簿をしばらく見つめた。
スンフンが除隊すれば動き出すだろう。それは確実だった。除隊後にソウル大学へ復学し、法律を学び、資格を取得するまで時間がかかるだろうが、その方向性は明らかだった。
ならば私は、あの子より先に準備しなければならない。
三人の弁護人。十分かどうかはわからない。しかし今すぐできることはこれだった。
クリスティナ・ロン。
ニューヨークを拠点とする刑事専門弁護士。韓国系アメリカ人の依頼人を複数回弁護した実績があった。冷静で実用的な人物だという評判だった。
ハン・ジョンスはすでに彼女とビデオ会議を一度終えていた。
「会長の状況は理解しています。ただ、韓国の法廷での手続きは私が直接担うことが難しい。韓国側の弁護人と連携する形で進める必要があります」
冷ややかな口調だった。感情がない代わりに、計算が速い人物だった。
フリードリヒ・バウアー。
ドイツ出身の国際刑事法専門家。ヨーロッパで企業トップの刑事事件を複数手がけた経歴があった。
ハン・ジョンスが彼に連絡したのは、この事件がいつか国際的に知られる可能性を排除できないという判断からだった。
バウアーはメールに短く返信した。
状況は把握しました。直接お会いして話した方がよいでしょう。
カン・ドユン。
元水原地検特捜部検事。現在は弁護士事務所を運営中。
ハン・ジョンスが彼の名前を思い浮かべたのは、古い縁があったからだ。道峰グループ関連の事件を検事時代に担当したことがある人物だった。その過程でハン・ジョンスと接点ができ、以来、互いに知り合いとして付き合ってきた。
カン・ドユンに電話をかけると、彼はすぐに出た。
「会長、予想していました」
「そうか」
「お孫さんが海兵隊に入隊されたと聞いたときから。その後、連絡が来るだろうと思っていました」
ハン・ジョンスはしばらく黙ってから尋ねた。
「引き受けてくれるか」
「はい。ただ、一つだけ伺います。会長はこの事件で真実が明らかになるのを防ごうとしているのか、それとも法的手続きの中で最善の結果を望んでいるのか」
冷徹な問いだった。
「真実が明るみに出ない方向で行きたい」
カン・ドユンはしばし沈黙した。
「その方向なら、私にもできることとできないことがあります。正確な線引きをしてから始める必要があります」
「わかった。会って話そう」
三人を確保してもなお、ハン・ジョンスは落ち着かなかった。
十分ではない。何かもう一つが必要だという直感があった。
スンフンは法律を学んでから動く。あの子は私に似て、諦めない。
その考えが何度も浮かんだ。
私が1962年に犯したこと。それが法廷で扱われたら、どうなるだろうか。
物的証拠はずいぶん前に処理した。しかし証言は違う。人の記憶は消せない。
同窓会長。あの老人が生きている限り、証言の可能性があった。
そして日本へ渡った学生。その行方をスンフンが追っている可能性が高かった。
見つけなければ。あの人が先に見つけられる前に。
ハン・ジョンスはメモ用紙に書いた。
日本。1962年、チョンムン高校卒業生。行方確認が必要。
2020年3月。
コロナのパンデミックが始まった。
世界中の国境が閉ざされた。クリスティナとフリードリヒとの対面での会議が不可能になった。カン・ドユンとは国内で会うことができたが、国際的な協力体制を構築することが難しくなった。
ハン・ジョンスはカン・ドユンとビデオ通話でつながりながら言った。
「パンデミックのせいで予定が全部狂ってしまった」
「予想より長引くかもしれません。しかしお孫さんも除隊前は動けません。時間はあります」
「スンフンの除隊はいつだ」
「2021年の下半期と予想されます」
ハン・ジョンスはその数字を頭に刻んだ。
一年半。その間に準備を終えなければ。
そのころ、ハン・ジョンスは古い名前を一つ思い出した。
日本・神戸。八幡の家財団。
キョウコ・ユキオ。2000年に東京で最後に会った人物。
彼女はずいぶん前に亡くなったと聞いていた。しかし財団はまだ運営されているという話があった。
八幡の家。
スンフンが聞慶でその箱を開けたことを、ハン・ジョンスは知っていた。秘書を通じて聞いた。箱の中に何があったかは正確にはわからなかった。しかしその場所そのものが1962年と繋がっているというだけで、十分に危険だった。
神戸に行かなければ。
パンデミックで日本への出国が難しかった。しかし状況が改善されれば、直接確認しなければならなかった。
ハン・ジョンスはメモに書いた。
神戸。八幡の家財団。確認が必要。
一方、同じ時期。
海兵隊でスンフンとジェジュンはそれぞれの持ち場で服務中だった。
2020年4月、褒賞休暇が出た。
スンフンは水原の家に帰った。
セヨンがドアを開けながら言った。
「来たの?」
「うん」
「随分変わったね」
スンフンは短く笑った。
「そうか?」
セヨンは彼を上から下まで一度見てから、台所へ入った。
「ご飯食べて。用意してあるから」
スンフンは荷物を下ろして食卓に座った。
温かいご飯。久しぶりの家の匂い。
その瞬間、頭の中で1962年が再び浮かんだ。
除隊したらまた始める。
その誓いが、食卓の前でも消えることはなかった。
休暇中、ジェジュンと少しの間会った。
喫茶店の隅の席。二人は向かい合って座った。
ジェジュンが言った。
「うまくやってるか?」
「うん。お前は?」
「まあまあかな」
しばらく沈黙が流れた。
スンフンが先に口を開いた。
「除隊したら同窓会長にもう一度会いに行かないといけない。日本へ渡った学生の行方がまだ掴めていない」
「わかってる。俺も考えてた」
「パンデミックで日本側へのアクセスが難しいけど、国内でできることから始めなきゃ」
ジェジュンは頷いた。
「弁護士の資格を取るのにどのくらいかかる?」
「ソウル大復学後、卒業まで最低2年。ロースクールはその後。早くても5年はかかる」
ジェジュンはしばらく考えた。
「じゃあ、その間に俺はロースクールを卒業できる。俺が先に資格を取れば力になれると思う」
スンフンは彼を見つめた。
「それで?」
「同じ方向だってこと」
二人はしばらく、沈黙の中に座っていた。
窓の外から春の陽射しが降り注いでいた。
休暇が終わり、部隊へ戻る日。
スンフンはバスの中で窓の外を眺めた。
水原が遠ざかっていった。
ハン・ジョンスは今、何をしているだろうか。
その考えが短く過ぎった。
準備しているだろう。きっと。自分も準備しているのだから。祖父も同じ方向で動いているはずだ。
それでもいい。
スンフンは目を閉じた。
私は法律を学ぶ。資格を取る。そして真実を明らかにする。
その誓いが静かに、再び刻まれた。
ソウル・江南の邸宅。
ハン・ジョンスは窓際に座り、ウイスキーを手に取ってから置いた。
最近は酒も以前ほど飲みたくならなかった。体が先に知っているようだった。
カン・ドユンが送ってきた書類を広げた。法的対応シナリオ。様々なケースが記されていた。
証拠が不十分であれば、公訴提起そのものが難しい。
証言だけでは有罪判決は容易ではない。
ただし、新たな物的証拠が出れば状況が変わる。
ハン・ジョンスは最後の行をしばらく見つめた。
新たな物的証拠。
八幡の家の箱の中に何があったか、いまだに正確にはわからなかった。それが不安だった。
彼は書類を閉じた。
窓の外に、ソウルの夜が降りてきていた。
スンフン。お前は私に似ている。諦めないだろう。
その考えが恐ろしくもあり、不思議と誇らしくもあった。
その二つの感情が同時にある。そのことが、ハン・ジョンス自身にも説明しきれなかった。
この話を書きながら、一番時間がかかったのはハン・ジョンスの最後の一文だった。
「恐ろしくもあり、不思議と誇らしくもあった」
加害者が被害者の孫を誇らしく思う——それは矛盾だ。しかし人間はそういう矛盾を平気で抱えて生きている。ハン・ジョンスはその矛盾の中に長年生きてきた人間として書いた。善悪の外側にいるのではなく、善悪の両方を知りながらも動き続けた人間として。
スンフンとジェジュンが喫茶店で話す場面は、この物語の中でも好きな場面の一つだ。大きなことは何も言わない。ただ「同じ方向だ」という一言だけ。それで十分だと思った。
パンデミックをこの物語に入れるかどうか、長く迷った。しかし2020年という時代を書くなら、避けることはできなかった。国境が閉ざされ、人が会えなくなった時代——それは皮肉にも、ハン・ジョンスに猶予を与え、スンフンに沈黙の時間を与えた。歴史は時に、意図せぬ形で人の運命に割り込んでくる。
次の話では、時間が少し進む。




