表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/40

28: 論山での朝を

論山訓練所。5週間、承勲は初めて「自分より上の人間」と向き合う。走り、射撃、個人戦闘——すべてで朴世勲に負けた。しかし「気分が悪くない」と言った承勲に、朴世勲は答える。「負けることも学ぶことだから」。在俊とは別々の部隊へ。軍服の中に隠された誓いはまだ消えていない——「除隊したら1962年を明らかにする」。

第28話

論山での朝を


2019年10月1日。

論山訓練所入所。

バスから降りた瞬間、教官の声が耳を打った。

「降りろ!早く早く!突っ立ってないで動け!」

承勲はリュックを持って素早く降りた。白い線が引かれたアスファルトの上に訓練兵たちが列を作って並んだ。空は晴れていた。風が冷たかった。

在俊とはバスを降りながら目が合った。

短く頷くだけで十分だった。

生活棟の割り当てが始まった。二人は別々の生活棟に分けられた。


初日の夜。

見慣れない寝台に横になって承勲は天井を見つめた。

軍服の匂い。見知らぬ人たちの寝息。寝台がきしんだ。

1962年3月18日。青文高校近く。変死体。

聞慶で見た新聞記事の文が頭に浮かんだ。同窓会長の声も。

韓鍾洙。その名前、覚えている。

ここに横になっている間も、それは消えなかった。

除隊したらまた始めないといけない。

その考えが静かに降り積もった。

目を閉じた。


数日が経った。

訓練はきつかった。朝の点呼、制式訓練、体力錬成、夜間訓練。休む時間がほとんどなかった。

承勲は黙々とついていった。つらいのはつらかった。しかしできないことはなかった。

しかし同じ生活棟に変わった訓練兵がいた。

朴世勲。

口数が少なかった。眼差しが鋭かった。そしてすべての訓練で静かに先を行っていた。

体力錬成の時間。腕立て伏せの評価があった。

承勲は自信を持って始めた。30回、40回、50回。息が切れ始めた。

隣で朴世勲が同じ速度で、同じ姿勢で続けていた。

60回。承勲が止まった。

朴世勲は止まらなかった。

承勲はその様子を見つめた。初めて感じる感覚だった。

あの人は俺より上だ。


射撃訓練。

承勲は落ち着いて引き金を引いた。10発中9発。

隣の朴世勲。10発すべて命中。

承勲は標的を見下ろした。そして朴世勲の標的を見た。

何も言わなかった。


訓練が終わったある夕方。

承勲は生活棟の前のベンチに一人で座っていた。

朴世勲が隣に来て座った。無言で。

しばらく沈黙が流れてから承勲が先に言った。

「お前、どこの出身?」

「太平高校。」

「水原?」

「うん。」

承勲はしばらく彼を見た。

「なんで海兵隊に来たの?」

朴世勲はしばらく考えてから言った。

「一番きついところに行きたかったから。」

それだけだった。それ以上説明しなかった。

承勲はその答えを噛みしめた。

一番きついところに行きたかったから。

自分がここに来た理由とは違った。しかしその単純さがむしろ重く感じられた。


その夜、訓練所の公衆電話の前に列が長かった。

順番が来て受話器を取った。承勲は在俊の番号を押した。

何度か呼び出し音が鳴ってから在俊が出た。

「ああ、承勲。」

「うん。元気?」

「まあまあ。お前は?」

「俺も。」

しばらく沈黙が流れた。

「もしかして朴世勲って人知ってる?太平高校出身。」

受話器の向こうでしばらく止まる気配が感じられた。

「……朴世勲?太平高校?」

「うん。同じ生活棟。すべての訓練で俺より上だ。」

在俊がゆっくりと口を開いた。

「そいつ……俺が1年のとき少し同じ学校だったよ。転校してきたんだけど。」

「どんなやつ?」

「口数少なくて、静かだけど……何やらせても上手かった。ポーカーも一緒にやったことあるんだけど。」

「結果は?」

「俺が勝った。でもそれはそのときそいつが初めてやったからだと思う。」

承勲は頷いた。

「とにかく、そいつは普通のやつじゃない。何か目標がある人間特有の眼差しがあるんだよ。」

「空軍志望だって言ってた?」

「そんな話聞いたような気もするし。確かじゃないけど。」

電話を切ってから承勲はしばらくその場に立っていた。

何か目標がある人間特有の眼差し。

在俊の言葉が頭に残った。


個人戦闘訓練があった日。

二つのチームに分かれた。承勲のチームと朴世勲のチーム。

待機中、朴世勲が承勲の方を見ながら言った。

「走りと射撃では俺が前に出たけど、これはどうかわからないな。」

挑発ではなかった。ただ事実を言うトーンだった。

承勲は短く答えた。

「見ればわかる。」

教官の笛が鳴った。

承勲は体を低くしながら草むらの中へ飛び込んだ。

7分間の訓練だった。承勲は全力を尽くした。判断が速く、動きが落ち着いていた。

しかし結局朴世勲に制圧された。

床に座り込んで息を整えながら承勲は彼を見た。

朴世勲も息を切らしていた。ここでも楽ではなかったのだ。

それでも勝った。

承勲はその事実を淡々と受け止めた。


退所式の前日。

承勲と朴世勲は生活棟の前に並んで座っていた。

朴世勲が先に言った。

「除隊後、何するの?」

「法学部に復学。」

「弁護士になるの?」

「うん。」

朴世勲は頷いた。

「俺は空軍将校に志願する。パイロット。」

承勲は彼を見た。

「だから海兵隊を先に来たの?」

「一番きついのを先にしたかった。」

承勲はしばらくその言葉を噛みしめた。

「今回の訓練で全部負けた。走り、射撃、個人戦闘。」

「うん。」

「なのに不思議と気分が悪くない。」

朴世勲が短く笑った。

「負けることも学ぶことだから。」

二人はしばらく沈黙の中に座っていた。

朴世勲は小さな紙を一枚取り出して承勲に渡した。

「連絡先。後で縁があるような気がして。」

承勲は紙を受け取った。

「なんでそう思うの?」

「わからない。ただなんとなく。」

承勲は紙をポケットに入れた。

「後で連絡する。」


退所式。

承勲は列を揃えて立って前を見た。

5週間。思ったより多くのことを学んだ。体力がついて、規律が身についたこともあった。

そして初めて、自分より優れた人間としっかりと向き合った。

それが不思議と良かった。

この経験が後で役に立つだろう。

その考えが静かに浮かんだ。


退所後、部隊配置。

承勲と在俊は別々の部隊に配属された。

別れる前、二人はしばらく向かい合って立った。

在俊が言った。

「それぞれの場所でうまく耐えろ。」

「うん。」

「それと除隊したら、また始めるんだ。」

承勲は頷いた。

1962年。趙東赫。韓鍾洙。

軍服の中に隠されたその誓いが、まだ生きていた。

「わかってる。」

二人はそれぞれの方向へ歩いていった。


その夜、部隊の生活棟。

承勲は寝台に横になって天井を見つめた。

論山で学んだこと。朴世勲という名前。負けることも学ぶことだと言っていた言葉。

そして変わらないもの。

除隊したら法学部に戻る。弁護士になる。そして1962年を明らかにする。

その文が静かに、深く刻まれた。

目を閉じた。

外から風の音が聞こえた。

第28話を読んでくださり、ありがとうございます。承勲が初めて「敵わない相手」と出会う話を書きました。朴世勲というキャラクターは、承勲とは全く違う種類の強さを持つ人物です。「負けることも学ぶことだ」——この一言が承勲の中で静かに根を張っていきます。在俊との別れも、言葉より沈黙に込めました。次話もよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ