26: 超大型の悪材料
承勲の名前が刻まれた兵役免除疑惑の記事。青文高校事件の調査直後に流れたこのニュースは、明らかに偶然ではなかった。「世論の目を逸らそうとしている」——承勲はその計算を読んだ。しかし読んだだけでは止められない。弁護士、公文書、父からの電話。そして在俊の一言——「ゆっくり行ってもいい」。今すぐ解決しようとしない。しかし諦めもしない。
第26話
超大型の悪材料
2019年6月。
賛赫から電話が来た。
承勲がソウル駅近くの考試院の部屋でノートパソコンを見ていたときだった。同窓会長との面会以降、日本に行った学生を追跡中だった。
スマートフォンが鳴った。
「韓承勲。今すぐニュースを見ろ。」
賛赫の声は低く断固としていた。
「何のニュースですか。」
「兵役関連の記事が出た。お前の名前が出てる。」
承勲はノートパソコンの画面を開いた。
ポータルのメインに記事が上がっていた。
道峰グループ韓鍾洙前会長の孫、兵役免除疑惑。
承勲は画面を見つめた。
二重国籍。兵役未履行。記事は短かったが見出しが強烈だった。コメントが素早くついていた。
「これ……誰が流したんだ。」
賛赫が言った。
「わからない。でもこのタイミングは偶然じゃない気がする。」
承勲はしばらく黙った。
25話で同窓会長に会ったことが知られたのか。それとも最初から準備していたのか。
「とりあえず静かにしてろ。動くな。」
賛赫が続けた。
「お前が今何か反応したらもっと大きくなる。状況把握が先だ。」
承勲は頷きかけてから止まった。賛赫には見えないとわかりながらも。
「ありがとう。」
「ああ。」
電話が切れた。
承勲はノートパソコンを閉じてしばらく座っていた。
二重国籍。兵役未履行。
事実だった。オーストラリアと韓国の二重国籍状態で兵役を未履行にしたことは事実だった。それが意図的な忌避だったかどうかは別の問題だったが、記事はその境界を曖昧にしていた。
祖父がこれを流したのか。
その考えが静かに浮かんだ。25話で同窓会長に会った直後にこの記事が出たことを偶然とは見難かった。
青文高校事件から世論の目を逸らそうとしているんだ。
承勲はその計算を読んだ。しかし読んだからといって止められるものではなかった。
翌日、兵務庁から公文書が届いた。
二重国籍者の兵役履行有無確認要請。
承勲は公文書を読みながら状況が単純ではないと感じた。記事一本で終わる話ではなかった。
在俊に電話をかけた。
「公文書が来た。」
「どんな内容?」
「兵役履行有無の確認。2週間以内に回答しろって。」
在俊はしばらく黙ってから言った。
「弁護士を選任しないといけないな。」
「うん。」
「俺の知り合いを繋いでやれる。兵役関連の事件をたくさん扱った人だ。」
「ありがとう。」
「それと承勲。」
「うん。」
「これ、お前の祖父が流したんだと思う。タイミングがぴったりすぎる。」
承勲は答えなかった。
在俊が続けた。
「青文高校事件の調査、続けるつもりか?」
「うん。」
「だったらこの兵役問題も同時に処理しないといけない。一方が崩れたらもう一方も揺れるから。」
「わかってる。」
ソウル・江南の邸宅。
韓鍾洙は窓際に座っていた。
秘書が報告した。
「記事が出ました。予想通りコメントがついていて、ポータルのメインに上がっています。」
韓鍾洙は何も言わなかった。
窓の外にソウル市内が見えた。
これで青文高校事件から目が逸れるか。
その考えがしばらくよぎった。しかし同時に、別の考えもついてきた。
承勲はこれを読み取るだろう。
韓鍾洙は手を上げて額を押さえた。心臓の手術後、体がまだ完全には回復していなかった。
孫が青文高校の同窓会長に会ったという報告を受けたのが数日前だった。その直後に記事を流した。計算だった。しかしそれが計算だということは自分でもわかっていた。
俺の孫を盾にしているんだ。
その考えが静かに降り積もった。
韓鍾洙は長い間窓の外を見た。
1962年のあの夜。趙東赫。美子。その後の60年。
正直に生きようとした。寄付もした。人々に仕事を与えた。それで十分ではないということはずっと前からわかっていた。
なのに今自分は、その罪を覆い隠すために孫を使っていた。
これでいいのか。
答えはなかった。
数日が経つと記事はさらに大きくなった。
二重国籍者の兵役免除疑惑から始まった記事が道峰グループ全体へと広がり始めた。メディアは毎日新しい角度で記事を出した。
承勲は考試院の部屋で記事をモニタリングした。
青文高校事件関連の記事はその間に埋もれた。
意図した通りだった。世論は素早く兵役問題へと移動した。
世英から連絡が来た。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「うん。」
「お父さんお母さんも心配してるよ。」
「わかった。心配しないでって伝えて。」
「本当に大丈夫なの?」
承勲はしばらく黙ってから言った。
「今は考えることが多い。後で話そう。」
世英はそれ以上聞かなかった。
法律事務所。
在俊が繋いでくれた弁護士は書類を検討しながら言った。
「二重国籍者の兵役未履行自体は法的に処罰対象ではありません。ただし国籍選択の時期と兵役忌避の意図があったかどうかが鍵です。」
承勲は頷いた。
「選択肢は三つです。一つ目、韓国国籍を維持して兵役を履行する。二つ目、オーストラリア国籍を選択して韓国国籍を放棄する。三つ目、現状を維持しながら法的対応をする。」
「三つ目は?」
「訴訟が長引くかもしれません。そしてその過程で世論がどう動くかによって結果が変わりうる。」
承勲はしばらく考えた。
法学部に行くためには韓国国籍が必要だ。しかし今この状況で韓国にいることが正しいのか。
「時間をください。考えないといけないので。」
その夜、英勲から電話が来た。
「承勲。」
父の声は低かった。
「お父さん。」
「お前、今どうするつもりだ。」
「まだ整理中です。」
しばらく沈黙が流れた。
「お前の祖父がこれを意図的に流したということは……俺もわかってる。」
承勲は答えなかった。
英勲が続けた。
「俺が怒るのは、あの方がなぜそうしたかわからないわけじゃないから。何か隠したいものがあってそうしたんだろう。でもそれが何なのかは俺にもわからない。」
「俺もまだ確かじゃないんです。」
「承勲。お前がどんな選択をしても、父さんはお前の味方だ。」
その一言が思ったより重かった。
承勲はしばらく目を閉じてから言った。
「わかった。ありがとう。」
電話を切ってしばらく座っていた。
父は知らない。1962年の殺人事件を。趙東赫を。アンナを。
いつかは話さないといけないことがあった。しかし今ではなかった。
二日後。
裁判所から公文書が来た。
兵役履行有無に関する最終立場を2週間以内に提出してください。
承勲は公文書を机の上に置いて長い間見つめた。
2週間。
青文高校事件の調査はまだ終わっていなかった。日本に行った学生の行方もまだわからない。法学部は1学期が始まっている状態だった。
今軍隊に行けば調査が止まる。
国籍を放棄すれば韓国で法曹人になれない。
どちらも簡単ではなかった。
その夜、在俊からメッセージが来た。
俺、今回現役入隊申請した。ロースクールは除隊後に行けばいいから。
承勲はそのメッセージを長い間見つめた。
在俊が。
次の行にメッセージが続いた。
お前がどんな決断を下しても、俺は俺の道を行く。でも一つだけ言っとく。
この戦い、長期戦だって言ったじゃないか。お前が今すぐ全部解決しようとしたら崩れる。ゆっくり行ってもいい。
承勲はスマートフォンを置いた。
窓の外にソウルの夜が広がっていた。
ゆっくり行ってもいい。
その言葉が思ったより長く残った。
まだ決めていなかった。しかしこの戦いが2週間では終わらないということだけはわかっていた。
承勲はノートを広げた。白いページ。
ペンを取って書いた。
今すぐ解決しようとしない。しかし諦めもしない。
そしてその下に。
趙東赫。韓鍾洙。1962年。
まだ終わっていない。
第26話を読んでくださり、ありがとうございます。承勲を追い詰めようとする韓鍾洙の計算と、それでも揺れない承勲の軸を書きました。「今すぐ解決しようとしない。しかし諦めもしない」——この一文がこの話のすべてです。在俊の入隊申請、父の「お前の味方だ」という言葉。それぞれが承勲をそっと支えています。次話もよろしくお願いします。




