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15: 十番目の階段

采恩のお弁当一つ、采原の挨拶一言、賛赫の短い一言——大げさではないものたちが静かにジェウォンの足取りを変え始める。保健室が初めて空になり、ジェウォンは教室へ戻った。そして図書館で賛赫と出会ったジェウォンに渡された言葉、「歴史が好きなら歴史を勉強しろ」——その一言に込められていたのは、まだ遅くはないという静かな信念だった。

第15話

十番目の階段


翌日の昼休み。

李采恩は昨日と同じ時間に保健室の扉を開けた。

ジェウォンは昨日と同じ席にいた。窓際の椅子。ノート。しかし昨日と違い、ノートには何も書かれていなかった。ただ広げたまま、ぼんやりとしていた。

采恩は何も言わずに向かいの椅子を引いて座った。

ジェウォンは顔を上げなかった。

「昨日、誰か来たんだって。」

采恩が静かに言った。問いではなかった。確認だった。

「……生徒会の人。」

「韓承勲。」

ジェウォンは短く頷いた。

「何て言ってた?」

ジェウォンはしばらく黙っていた。

「ただ……ずっと一人でいすぎたみたいだって。」

采恩はその言葉を受け取って静かに頷いた。それ以上聞かなかった。代わりにカバンから小さなお弁当を取り出してジェウォンの方へ押しやった。

「食べて。」

ジェウォンはお弁当を見下ろした。

「なんで。」

「ご飯食べないと何もできない。変わりたくても体がついてこないといけないから。」

采恩の言い方は相変わらず淡々としていた。強要でもなく、同情でもなかった。ただの事実だった。

ジェウォンはしばらくお弁当を見つめてから、ゆっくりと箸を持った。

采恩は無言でその様子を見守った。

窓の外に昼休みの騒がしさが流れていた。保健室の中は静かだった。


その場面を廊下のガラス窓越しにちらっと覗いた人がいた。

韓承勲だった。

彼は采恩がお弁当を差し出すのを見て、静かに足を向け直した。

采恩先輩がいれば十分だ。

彼は生徒会室へ向かっていたが、廊下の端で予想外の人と出くわした。

李采原。

ダンス部の練習が終わったようで体育着姿だった。髪がまだ汗で濡れていた。

「あ、昨日の生徒会の人。」

采原が先に口を開いた。

「昨日頼まれたこと、考えてみました。あの1年生のこと。」

承勲は足を止めて彼女を見た。

采原は少し躊躇してから言った。

「でも……挨拶するだけでいいんですか?それが本当に助けになるんですか?」

「わかりません。」

承勲は正直に答えた。

「でも何もしないよりはいいかもしれない。あの子に必要なのが大したことじゃないかもしれないから。」

采原はその言葉を噛みしめてから短く頷いた。

「わかりました。」

彼女は廊下を曲がってダンス部の方へ歩いていった。承勲はその後ろ姿をしばらく見てからまた歩き出した。


その日の夕方遅く、ジェウォンは保健室を出た。

廊下はほぼ空いていた。放課後の授業が終わった時間だった。

階段を降りていくと、ジェウォンの足が止まった。

階段の下、ダンス部の練習室から出てきた采原と目が合った。

ジェウォンは固まった。顔を背けようとした。

しかし采原が先に言った。

「あ、こんにちは。」

短い一言だった。特別なことでも何でもなかった。ただ通りすがりに出会った人にする挨拶。

しかしジェウォンはその場で固まってしまった。

采原はもう通り過ぎて歩いていた。振り返らなかった。何でもないことのようにカバンを直しながら廊下を出ていった。

ジェウォンはしばらくその場に立っていた。

こんにちは。

その一言がなぜこんなに大きいのかわからなかった。おかしな話だった。挨拶一つで心臓がおかしくなるなんて。

彼は階段の手すりを掴んでゆっくりと降りた。足取りが昨日より少し軽かった。ほんの少し。


その頃、生徒会室には賛赫が一人残っていた。

書類を整理しかけて、彼はしばらく手を止めた。

キム・ジェウォン。

その名前が今日一日ずっと頭に引っかかっていた。采恩の口からその名前が出た瞬間から。

賛赫は席を立って窓の外を眺めた。校庭の端、校門の方向へ一人で歩いていく小さな後ろ姿が見えた。確信はできなかったが、その歩き方が見覚えがあった。

中学の頃もああやって一人で歩いていたな。

賛赫は目を細めた。

ジェウォンを覚えていた。静かで気が弱かった後輩。歴史の授業のときだけ目が輝いていた子。そしていつの間にか学校で見かけなくなった顔。

あの頃、賛赫は気にしなかった。自分のことではなかったから。それが当然だった。

でも今は。

彼は窓から視線を外した。机に戻って書類を再び手に取った。

何も言わず、また仕事を始めた。


翌日の朝。

ジェウォンはいつもより早く登校した。

保健室へは行かなかった。初めて教室の中に入り、自分の席に座った。誰も話しかけなかった。ジェウォンも話しかけなかった。ただ昨日と違い、窓の外を見る眼差しが少し違っていた。

昼休み。

采恩が保健室の扉を開けると、中が空だった。

彼女はしばらく止まってから軽く微笑んだ。

今日は大丈夫みたいだ。


教室へ戻る廊下で采恩は韓承勲と出会った。

「保健室、空いてましたよ。」

承勲が先に言った。

采恩は頷いた。

「そうですね。」

「先輩のおかげです。」

采恩は首を振った。

「私がしたのはお弁当を差し出しただけです。」

「それがすべてだったかもしれないですけど。」

采恩はその言葉にしばらく承勲を見つめた。そして小さく笑いながら先に歩いていった。

承勲はその後ろ姿を見てから生徒会室の方へ足を向けた。

最初の一歩は踏み出せた。

問題が解決したわけではなかった。ジェウォンが急に変わるわけでもなかった。ただ今日初めて保健室以外の場所に座ったということ。昨日の采原の挨拶で立ち止まったということ。

それで十分だった。

人は大したことで変わるんじゃない。挨拶一つ、お弁当一つで変わるんだ。

彼は生徒会室の扉を開けた。

賛赫が書類の山を眺めていたが顔を上げた。

「ジェウォン、今日教室に入ったって。」

承勲が席につきながら言った。

賛赫は何も言わなかった。ただ頷いてまた書類を見た。

しかし承勲は見た。賛赫の手がしばらく止まってからまた動くのを。

生徒会室の窓の外に、午後の陽光が斜めに差し込んでいた。


数日後。

ジェウォンは放課後一人で図書館にいた。いつものように隅の席だったが、今回はノートに何かを書いていた。自己否定の言葉ではなかった。歴史の年表だった。

扉が開く音。

顔を上げると李賛赫が入ってきていた。

ジェウォンは固まった。

賛赫は本棚を眺めていたが、ジェウォンと目が合った。しばしの静寂。

賛赫が先に視線を外し、本を一冊抜き取って向かいの席に座った。

何も言わなかった。

ジェウォンは再び年表に視線を落とした。手が少し震えた。

5分ほど経っただろうか。

賛赫が本から目を上げないまま静かに言った。

「歴史、好きだったじゃないか。」

ジェウォンの手が止まった。

「……覚えてるんですか?」

「ああ。」

短い答え。賛赫はまだ本を見ていた。

ジェウォンはしばらく言葉が続かなかった。そして静かに聞いた。

「なんで何も言わなかったんですか。あのとき。」

賛赫はしばらく黙った。

「知らなかった。お前がそうなっていたとは。」

「……知っていても、違ったでしょうか。」

賛赫は答えなかった。その沈黙が答えだった。

ジェウォンは顔を伏せた。涙が出そうだったが堪えた。

賛赫が本を閉じながら言った。

「歴史が好きなら、歴史を勉強しろ。」

それだけだった。

大仰ではなかった。手を差し伸べもしなかった。ただその言葉の中には、まだ遅くはないということが込められていた。

ジェウォンは顔を上げて賛赫の横顔を見た。彼はすでにまた本を開いていた。

ジェウォンは年表に視線を戻した。そして止まっていたペンをまた手に取った。

窓の外に午後の光が図書館の床に長く差し込んでいた。

第15話を読んでくださり、ありがとうございます。人は大きなことで変わるのではなく、小さなことで変わる——この話にそのすべてを込めました。采恩のお弁当、采原の挨拶、そして賛赫の一言。誰一人として「助けてやろう」とは思っていなかった。ただそこにいた。それだけで十分だったということを、この話で伝えたかったです。次話もよろしくお願いします。

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