14: 新入り生徒会員、韓承勲
脅迫を受けた賛赫が承勲に手を差し伸べる。「一時的にな」と握手を交わした二人の間に、はじめて不思議な同盟が生まれた。そして承勲は保健室で一人抱えるものを持つ1年生・ジェウォンと静かに向き合う。正解を与えようとせず、ただ傍にいた承勲の一言——「お前はただ、ずっと一人でいすぎたんだと思う」。点数でも背景でもなく、人を見ようとする承勲の眼差しが、この話の核心です。
第14話
新入り生徒会員、韓承勲
2016年5月。中間テストが終わり、体育祭を数日後に控えたある日。
教室の扉が勢いよく開いた。
「おい、このクラスに韓承勲いるか?」
1年生徒会書記のチェ・ジュヨンだった。無表情な顔で教室を見渡しながら言った。
「会長が呼んでる。」
韓承勲は顔も上げずに答えた。
「昼休みに行くって伝えて。」
数時間後、彼はしぶしぶ生徒会室の扉を開けた。
「俺が生徒会に興味ないって何度言ったんだ?そういうのやりたいなら自分でやればいいだろ。」
扉を開けるなりぶつぶつ言う承勲。その前に座っていた李賛赫は何も言わずに写真を一枚机の上に置いた。
承勲は無関心に写真を手に取った。
見慣れた顔だった。少し前にサイバーポーカーで対決したあの顔。
「禹在俊じゃないか。」
「知ってるのか?」
「先週ネット賭博で俺に負けたやつだ。」
賛赫の眼差しが微かに揺れた。彼はしばらくしてから低く口を開いた。
「そいつが道峰財団の会長、韓鍾洙の秘密を知っている。そして俺に協力しなければ黙っていないと脅してきた。」
承勲の手が止まった。
写真に視線を固定したまま、彼は何も言わなかった。
頭が素早く回転した。禹在俊。ポーカーの場で最初から自分を読もうとしていた人間。そしてユメコが取り出したあの名前。
ハチマンの家。
承勲はその言葉を思い出した瞬間、額に冷たい気配が走った。祖父。韓鍾洙。その名前と結びついているものを承勲は誰よりも知っていた。そして誰よりも長く目を背けてきた。
「……それで俺にどうしろと。」
声はまだ冷たかった。しかしそれだけではないということを、賛赫は感じ取った。
賛赫はゆっくりと席を立って机を回ってきた。そして手を差し出した。
「同盟を組もう。俺一人じゃこの件は止められない。」
承勲はその手を見つめた。
この人間を信頼できるか。
できなかった。賛赫がどんな人間か、承勲は入学初日から見てきた。弟を無視し、生活記録簿を武器に動く人間。その手を握るということは、その構造の中へ自ら踏み込むことだった。
しかし。
禹在俊が祖父のことを持ち出せば。
その想像は短かったが深かった。承勲は目を閉じてから開き、手を伸ばした。
「わかった。一時的にな。」
賛赫の顔に安堵が滲もうとした瞬間、承勲が目を上げた。
「勘違いするな。俺はあなたに興味はない。これは家族のためだ。あなたと仲良くなりたい気持ちは一ミリもないから。」
言い終えた彼は荒々しく手を振り払って席についた。
賛赫はしばらく彼を見てからフッと笑った。
「それでいい。座れ。」
賛赫は封筒一つを承勲の机に置いた。
「禹在俊の個人情報だ。連絡先、住所、彼が要求した条件たち。」
承勲は封筒を開けた。思ったより整理されていた。一人で集めた資料ではなかった。
「7月中に秘密裏に接触することにする。禹在俊も条件を受け入れた。」
承勲は資料を眺めながら無言で頷いた。
「ただし条件がある。」
賛赫が続けて言った。
「10月の生徒会長再選。演説文と公約集をお前が仕上げてくれ。正直そっちはお前の方が俺より上手いだろ。」
承勲はしばらく黙った。死刑宣告を受けた人のようにため息をついてから頷いた。
「やってやる。ただし。」
彼は目を上げて賛赫を見た。
「俺を引き入れたなら全力を出せよ。俺は中途半端にやるのは嫌いだ。」
思いがけない挑発に賛赫はフッと笑った。
「いいよ。その言葉、覚えておく。」
隅の席でその場面を見ていた趙英民が腕を組みながら朴允成に小さくつぶやいた。
「ついに本当の意味で引き入れられたな。」
朴允成は意味深な微笑みを浮かべながら頷いた。
「でもさ……李賛赫は今回ちゃんとしたのに触ったかもしれない。韓承勲は俺たちが思ってたレベルじゃないかもな。」
それから数日後。
書類の整理をしていた承勲は廊下で奇妙なパターンに気づいた。毎日同じ時間、同じ方向へと消えていく顔。
2年生の李采恩。生徒会副会長。静かで端正な印象だったが、眼差しにはどこか重みが宿っていた。
承勲は廊下で彼女を引き留めた。
「先輩、最近毎日どこへ行ってるんですか?」
李采恩は少し躊躇してから言った。
「1年生に摂食障害を抱えてる子がいて。一人でいるのが好きみたいだから……毎日少しずつ会いに行ってるの。」
承勲はその言葉を静かに受け止めた。傍らで書類を整理していた賛赫がため息をついた。
「今俺たちはやることが山積みだ。そんな子にまで構う余裕はない。」
そのとき采恩が何気なく付け加えた。
「キム・ジェウォンって子だよ。」
賛赫の手が止まった。
「……何?キム・ジェウォン?」
彼の声が低く掠れた。
「あいつ……俺の中学の一学年下の後輩だったんだが。」
生徒会室の空気が静まった。賛赫の目には複雑な感情が揺れていた。
采恩は慎重に言葉を続けた。
「もともと気が弱くて自己否定が強い子でした。歴史と英語は得意だったんですが……中学2年から学校生活にうまく馴染めなくなって。ある時期から口数が少なくなって、外見に対するコンプレックスが深くなっていきました。自分を否定する言葉を繰り返していました。」
彼女の声には抑えていたものがあった。
「結局摂食障害になったんです。今は保健室や図書館にだけ隠れて過ごしています。」
「そういう子は……」
承勲が静かに口を開いた。
「自分の中に閉じこもってしまうんです。周りが何を言っても聞こえない。」
采恩は頷いた。
「そうなの。だから一度くらいは誰かがその子に『大丈夫だよ』って言ってあげないといけないかなと思って。」
「どうせ今ここでも苦しんでいるなら……采恩、そのままにしておくのも一つの方法じゃないか。」
傍らで聞いていた趙英民が慎重に言った。心配そうな声だった。
「日本のアイドルに似たいって体重を落としてるって聞いたよ。最初は単純な憧れだと思ってたけど……最近はちょっと怖い。」
その話を聞いた承勲はしばらく黙った。
そして静かに立ち上がった。
「俺が一度行ってみる。」
「お前が?」
「采恩先輩もリハーサルがあるって言ってたし……どのみち気になってたから。」
1階保健室の前。
扉の向こうからかすかなラジオの音と、断続的な咳の音が聞こえた。
承勲は扉を開けた。
窓際の席に一人座っていたキム・ジェウォンが顔を上げた。頬が細くこけた顔、落ちくぼんだ眼差し。ノートの上には読み取りにくい文字がびっしり書かれていた。
「……キム・ジェウォン。」
ジェウォンはぎくりとしてから顔を背けた。
「誰?」
「韓承勲。生徒会。」
ジェウォンはすぐに視線を下げた。興味がないような反応。しかし承勲はその場を離れなかった。ただ隣の椅子に座った。
しばらくして、ジェウォンが体重計の前へ歩いていった。数字を確認してから低くつぶやいた。
「……50.4。まだ。」
その声には焦りが滲んでいた。
承勲はその様子を無言で見ていた。割り込まなかった。直そうともしなかった。ただ傍にいた。
しばらくしてジェウォンが席に戻ってきた。承勲がまだそこにいると、彼は短く言った。
「なんで帰らないの。」
「特に行くところないから。」
ジェウォンは承勲をちらっと見た。そして何かに疲れた人のようにゆっくりと口を開いた。
「みんな言うんだ。ガリガリだって。風が吹いたら飛んでいきそうだって。かと思ったら男は肩幅がないとな、筋肉がないとな。何をしても足りないんだ、俺は。」
彼の声は低く平坦だった。むしろそれが重かった。
「だからただ……何もしたくないときがある。全部手放して。」
承勲はその言葉を受け止めながら何かを整理した。ジェウォンが話しているのは体重のことではなかった。数字のことではなかった。
そのとき窓の外の視線に気づいた。ジェウォンの目が保健室のガラス扉の向こうのどこかへ一瞬触れてから戻ってきた。
承勲はその方向をちらっと確認した。廊下の端、ダンス部の練習室。ガラス越しに一人の女子生徒がリズムに合わせて動いていた。髪が額に張りつき、動きは集中そのものだった。
承勲はジェウォンの眼差しをもう一度見た。その中に何が宿っているかは難なく読めた。
あの子が好きなんだな。
そして同時に別のものも見えた。
あの子に近づけないと自分で思い込んでいるんだな。
承勲はしばらく黙っていた。
そしてゆっくりと口を開いた。
「ジェウォン。」
「何。」
「お前はただ……ずっと一人でいすぎたんだと思う。」
ジェウォンは何も言わなかった。ただノートの上の手が止まった。
承勲はそれ以上言わなかった。正解を与えようとしているのではなかった。直してやろうとしているのでもなかった。ただその場に、もう少しいた。
保健室を出た承勲は廊下の端で足を止めた。
練習室の扉の前。ダンス部のリハーサルが終わろうとしていた。汗を拭きながら扉を開けて出てきた女子生徒と目が合った。
李采原。2年ダンス部。李采恩とは名前が似ているが違う人物。この学校で目立つ数少ない顔の一人だった。
「生徒会の人ですよね?何か用ですか?」
承勲は少し彼女を見てから言った。
「保健室にいる1年生のキム・ジェウォン、知ってますか?」
采原は少し躊躇した。
「……知ってるような気もして。廊下でたまに見かけたことがあって。」
承勲は背を向けながら短く言った。
「次会ったときにただ一度挨拶してあげてください。大したことじゃなくてもいいので。」
采原はその言葉の意味が正確にはわからないまま承勲の後ろ姿を見つめた。
「……それだけですか?」
承勲は振り返らずに答えた。
「それだけです。」
生徒会室へ戻る廊下。
承勲はゆっくりと歩きながら考えた。
ジェウォンが体重を落とそうとしている理由。憧れているアイドル。眺めている窓の外。そのすべての下にあるもの。
あの子は今、自分がなぜ苦しいのかも正確にはわかっていない。
そして自分も同じだという考えが過った。
祖父。禹在俊。賛赫の手。自分がその手を握った理由。
俺も今、自分がなぜこうしているのかを全部わかっているわけじゃない。
承勲は生徒会室の扉を開けた。賛赫が書類を見ていたが顔を上げた。
「どうだった?」
「たいしたことない。」
承勲は席につきながら淡々と言った。
「ただずっと一人でいた子だよ。」
賛赫はその言葉を聞いてしばらく何も言わなかった。彼の眼差しの片隅で、何かが静かに通り過ぎた。
生徒会室の窓の外に、午後の光が傾いていた。
第14話を読んでくださり、ありがとうございます。賛赫と承勲の同盟、そしてジェウォンとの出会いを書きました。承勲がジェウォンに言った「ずっと一人でいすぎた」という言葉は、実は承勲自身にも向けられた言葉でもあります。次話もどうぞよろしくお願いします。




