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13: 悪魔の沼

看板のない地下カフェで、承勲は在俊・ソへ・ユメコと初めて対峙する。サイバーポーカーで在俊を静かに読み切り、「これからは俺に賭けたことを後悔するようになるぞ」と告げる承勲。一方、在俊は腐敗した検事の二面性を目の当たりにし、初めて自問する——「俺もあいつらと変わらないのか」。ユメコが差し出した一枚の紙、「ハチマンの家」。新しい場が、静かに幕を開ける。

第13話

悪魔の沼


都心のど真ん中、地下へ降りる階段の先にカフェがあった。

看板もなかった。知る人だけが来る場所。常夜灯だけが灯った内部は昼なのか夜なのかも判別できず、テーブルごとに低い声が敷かれていた。

韓承勲が階段を降りると、隅のテーブルから手が上がった。

桜井ユメコ。きちんと束ねた髪、冷たい目元。その隣に禹在俊とソへが並んで座っていた。

「やっとお越しですね、韓大将?」

ユメコの冗談混じりの言葉に承勲は短く笑いながら席についた。テーブルの上には飲み物が三杯と、ノートパソコンが一台。

在俊がノートパソコンを承勲の方へ向けた。

画面にはサイバーポーカーのテーブルが開かれていた。

「俺たちと一勝負しましょうよ。ちょうど一勝負、遊びに。」

ソへが柔らかく付け加えた。

「怖くないですよね?」

承勲は画面を一度眺めてから在俊を見た。

「未成年の賭け事は違法なんだけど。」

淡々とした一言。在俊とソへの顔が一瞬固まった。しかし在俊はすぐに表情を緩めて低い声で言った。

「これは単純なゲームじゃない。やらないと……お前の話があちこちに広まるかもしれないぞ。あのリムジン通学、かなり目立つじゃないか?」

脅しだった。ユメコは無言で杯を見下ろした。これは彼女が望んでいた方法ではなかった。

承勲はしばらく在俊を見つめてから静かにため息をついた。

「はあ……やっぱり外見だけで判断したらいけないな。」

その言葉が脅しへの降伏なのか、嘲りなのかわからなかった。しかし彼はゆっくりとノートパソコンの前に席を引き寄せた。

賭け金が決まった。ゲームが始まった。


在俊はこの場で負けたことがなかった。

人の眼差し、指先、躊躇い。オンラインなら賭けるタイミング、チェックの間隔、コールの速度。そのすべてが在俊には札だった。相手が何を握っているか、何を恐れているか。彼はカードより人を先に読んだ。

こいつ、最初の賭けが速い。自信があるか、自信があるふりをしているか。

在俊は静かにコールを押した。

ターンが過ぎ、リバーカードが出た。

在俊の手にはストレート。十分に強い札だった。彼は承勲の賭けのパターンをもう一度確認した。チェック、コール、チェック。消極的な流れ。いい札がないか、あっても隠しているか。

隠しているなら……何を持っているんだ?

その疑問が整理されるより先に、承勲が静かにカードを開いた。

「フルハウス。」

静寂。

在俊は画面を見つめた。チップが全部承勲の方へ移っていた。

いつからだったんだ。

彼は過去のターンを素早く振り返った。チェックが消極的だったのではなかった。相手が賭けるよう誘導していたのだ。在俊が自らチップを積み上げていく間、承勲は静かに待っていた。

最初から俺を読んでいたのか。

在俊はゆっくりとノートパソコンを閉じた。ソへは無言で唇を噛んだ。

承勲は席から立ち上がりながら在俊を見下ろした。

「これからは俺に賭けたことを後悔するようになるぞ。」

彼の目は笑っていた。しかしその中に込められていたのは嘲りではなかった。警告だった。

承勲が階段を上って姿を消すと、テーブルに沈黙が残った。

ユメコが先に口を開いた。

「それで、これがお前の計画だったの?」

在俊は答えなかった。


その日の午後、在俊はユメコについて水原市内のあるホテルの近くを通った。

ユメコに知り合いがいると言った。少しでいいと言った。在俊は特に考えもなくついて行った。

ホテルのロビー横の廊下。ユメコが足を止めて顎をしゃくった。

廊下の端からスーツ姿の中年男性が歩いてきていた。きちんとしたスーツ、真っ直ぐな歩き方。その隣には顔が赤い若い女性が並んで歩いていた。

「あの人、知ってる?」

ユメコが低く聞いた。

在俊は首を振った。

「カン・ドユン。水原地検所属の検事よ。あの女性は今日の取り締まりの現場から連れてきた子で。」

在俊は無言でその後ろ姿を見つめた。二人はエレベーターの前で止まった。男がボタンを押した。扉が開いた。二人が一緒に入った。

扉が閉まった。

在俊は何も言わなかった。ユメコも同じだった。

ただ、見た。それだけだった。

しばらくしてユメコが言った。

「明日あの人、記者会見があるよ。何て言うと思う?」

在俊は答えなかった。わざわざ想像する必要もなかった。


次の日の朝。

在俊はバスの中でニュース映像を見た。

画面の中のカン・ドユン検事は壇上の前に立っていた。きちんとしたスーツ、断固とした表情。

「被害者保護は我々全員の義務です。法は必ず守られなければなりません。」

シャッター音が連続して鳴り響いた。記者たちが頷いた。

在俊は画面を消した。

バスの窓の外を水原市内が流れていった。昨日見た廊下、エレベーターの扉が閉まったあの場面が静かに重なった。

傾いた場だと思っていたんだけど。

彼はこの構造をずっと前から知っていると思っていた。知っているふりをしていた。その上で踊る方法を身につけたとも思っていた。

でも俺は今、この場の上で正確にどこに立っているんだ。

その問いが初めてだった。

昨日のポーカーテーブルでも負けた。最初から読まれていた。自分が札を持っていると思っている間、相手は静かに待っていた。

俺もあの人たちと変わらないのか。

バスが止まった。在俊はゆっくりと立ち上がった。


その夜、ユメコから連絡が来た。

「話があるの。」

在俊が着いたときユメコは窓際の席に座っていた。テーブルの上にはグラスが一つ。彼女は在俊が座るなり口を開いた。

「お前、今日何か違って見える。」

「そう?」

「ポーカーで負けたせい?それとも昨日廊下で見たもののせい?」

在俊は答えなかった。ユメコはその沈黙を確認として受け取ったように静かに続けた。

「私も最初はそうだった。東京からここに来たとき。この街も前の街と大して変わらないだろうって思ってたんだけど。」

「違った?」

「いや。同じだった。でもそれがもっと怖かった。」

ユメコはしばらく言葉を切ってから続けた。

「お前一人でこの場を変えることはできない。それは私もわかってるしお前もわかってる。でも……亀裂を作ることはできる。」

「亀裂。」

在俊はその言葉を繰り返した。

ユメコはカバンから何かを取り出してテーブルの上に置いた。

小さな紙。名刺と言うには単純すぎた。その上に書かれた文字。

ハチマンの家。

「これ何だ。」

「韓承勲の祖父。道峰財団の会長。その人が一生隠してきたものがここにある。」

在俊の視線が名刺の上で止まった。

「承勲があの学校でなぜそんなに静かにしていたか知ってる?天才だという噂が広まっても、誰もその背景を知らなかったか?」

ユメコは在俊の目を見つめながら言った。

「自分で隠したのよ。これを守るために。」

在俊は名刺を見下ろした。手で取ることはしなかった。

「これで何をしようとしてるんだ。」

「このカードを見せれば承勲は動く。あの子が動けば、この場で俺たちが持てなかった札を握れる。」

「脅しじゃないか。」

「違う。」ユメコは首を振った。「真実を利用するんだよ。脅しは相手を崩すことで、俺たちがしようとしてるのはあの子を同じ場の上に立たせることだよ。」

在俊はしばらく黙っていた。

窓の外に水原の夜が降り積もっていた。昨日エレベーターの扉が閉まった場面。今朝画面の中の壇上にあったあの顔。

負けなくても、膝をつかないことはできる。

ユメコの言葉が頭の中を漂った。

在俊はゆっくりと名刺を拾い上げた。裏返した。何も書かれていない裏面。

「韓承勲がこれを見たら……何が変わるんだ。」

「それはまだわからない。」ユメコは正直に言った。「でも一つはわかる。あの子はこの場で一番違う種類の札を持った人間だよ。ポーカーでお前を倒した方法見たじゃない。」

在俊はしばらく考えた。

最初から読んでいた人間。自分が勝っていると思い込んでいる間に静かに待っていた人間。

「あの子を引き込むことが、あいつらを倒す方法だって?」

「違う。」

ユメコは首を振りながら言った。

「あの子と一緒に、別の場を開くんだよ。」

在俊は名刺をテーブルの上に再び置いた。しかし今度は手を離さなかった。

窓の外で風が吹いた。どこかで新しい場が開かれていた。まだ誰も最初の札を出していないまま。

第13話を読んでくださり、ありがとうございます。承勲と在俊の初対決、いかがでしたか?ポーカーで最初から読んでいた承勲、読まれていたことに気づいた在俊——二人の関係がここから大きく動き始めます。そして「ハチマンの家」という言葉が初めて登場しました。この秘密が物語にどんな影響を与えるのか、ぜひ次話も楽しみにしていてください!

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