師弟
「なんでまたこうなってるんだ!」
「そりゃ倒れた男子は膝枕したるのが常識じゃろ。」
そんな常識あってたまるか!たとえそうだとしても、そういうのは若い人だけが許される特権だろ。さすがにこの年の差でやられるのは嬉しさより拒否反応がギリ勝つ。
「はっはっは、そんなことされてそいつが喜ぶわけないだろ。もう男の子っていうより男って感じに見えるしな。」
そういえば俺ってどんな見た目してんだろ?記憶を消されてから鏡なんて見る機会なかったし、
あれえ、よく考えたらめっちゃ気になってきた!やばい、どうしよ!知りたい欲が止まんない!
「おっさん!鏡とかもってねえか?」
「鏡ー?なんでそんなもの、、、あっ!お前さんもしかして自分の姿さえわかんねえのか!そりゃあ見たくもなるよな、でもな、もう鏡なんてのは無いんだ。魔法で見るしかねぇ。」
「じゃあその魔法教えてくれ!」
「やーだね、お前さんにはもっと基礎から学んでもらわなきゃならんのだ。自分の姿なんて見たところでどうせ変わんねえよ。」
「でもー頼むよー。」
「何言われても教えねぇぞー。」
「お・ね・が・い♡」
俺は恥を捨て去り、全力の上目遣いをかます。これでどうや!
「キモッ」
ハッとする。俺の恥はたった二文字で一蹴され、おじさんの顔は今日いち引きつっていた。悲しくなって、涙ながらにこう訴えた。
「何でだよっ!こんなにも、真摯に、頼んでるってのに!」
おじさんはより顔を引きつらせていった。その後、しばらく俺はぐずり散らかした。その熱意に負けおじさんは、
「分かった、教えてやる。だから、ホントに頼むからそれやめてくれ。まじで、頼む。」
そう言ったおじさんの目はひどい哀れみと、泣きたくなるほどの同情心をかけ算して、そのままにしたみたいな目をしていた。
「けどやっぱり基本魔法の基礎が先だ。」
「ええぇーーー」
長めに反応したのち、わざとらしく落ち込む。
「そう言うな、基礎を固めればお前さんがしたいことなら何でもできるさ。というわけで今から1分でお前さんにはまず、家を作ってもらう!」
それなら仕方ないかあ、まあさっさと基本魔法なんてマスターしてやろうじゃんか。で、作るのは家ね、はいはい分かりました、簡単かんたn、
「えっ?、家?」
「ああそうだ。家を作れ。」
「何を言ってんだ?たったの1分で家を作るって、、、いや、俺さっき初めての魔法学んだばっかなんですけど?何をどうしたって不可能だろ!」
「いや出来るはずだ。ていうか、出来るようになれ。じゃないと今後生きていけないぞ。」
「いや嘘だろ。自分で家が建てられないと生きていけないって、それじゃあ外の世界がすべて自然とでも言うのかよ。」
「ああそうだ。」
おじさんの文字がかすかに揺れる。これは、嘘をついた時の言葉だ。
まーた、嘘ついて、、、バレるって分かってんのになんでつくかな。でも家づくりなんて、そんなのはもう趣味の範疇を超えているぞ。俺には分からないが本当に必要とされる理由があるんじゃないのか?もしそうならばこの提案を聞き流すのはあまりにリスキーだ。なら、ここでとるべき選択肢は一つ!
「分かった、やってみるよ。」
ため息交じりで、大げさに納得した感じを出す。とはいえ、何をどうすれば家なんてもんが作れんのか、、、なんも想像できない。
「おっさん、ちゃんとやるからせめて魔法くらい教えてよー。」
「もちろんだ。そのうちの30秒だけみっちりしごいてやる。」
「へ?‼」
どゆこと?急になんで?
「なんでさっきは教えてくんなかったのに、これは教えてくれるんだよ。」
「そりゃあさっきのはお前さんの素質を見るための簡単なテストだったからな。今からやるのは修行だ。これはお前さんに出来るようになってもらわないと困るんだよ。」
この言葉は嘘じゃない。なんで外の世界で家を建てる必要があるんだ?特に自然が広がっているわけでもなさそうなのに、、、考えても仕方ないかもな、素直に修行するのがきっと一番だ。
「わかったよ。じゃあ、これからお願いします。」
「生意気っ!」
おじさんが俺の頭を軽くチョップする。それはまるで我が子に対する愛情のような、そんな優しいちょっつp、、、いや結構痛いわ。普通に少しクラっとして、まあまあイラついたが、グッとこらえ、俺は修行の日々へと向か、、、
「あっ、言い忘れてたが修行するのは現実世界での1分であって、こっちの世界ではだいたい100年くらいだ。」
「えっ、はっ、はあぁぁぁーーー?」
頭の中がこんがらがる。
「何で100年以上もそんなことすんだよー、意味わかんねえよー、俺そんな年取ってからここを出たってなんも嬉しくねえよー」
思いのたけをそのまんまぶちまける。
「そうは言ってもなーこんな短い年月で家作れたらすごい方さ。」
「いや短くねえよ人生のすべての時間を占めるよ普通に!」
「てか言ってると思うがここは時間の流れ方が外の世界とは違うんだ。いくら長くたって現実ではなんと1分間。それなら得しかないじゃねえか。だろ?」
「いやまあ確かに言ってることはあってんだろうけど耐えられんよ、監獄暮らし。」
「そんなこと言ったってどうせやんなきゃあと100億年は監獄暮らしなんだからな。やるぞ!」
チクショォ、、、こうして何も反論の余地すら許さない修行が幕を開けた。




