拷問?
男はそういうと、目をつむり両手を俺に向けた。
「潰れろ」
まただ、、別の言葉に見える。言葉たちは人形のように俺の手にまとわりつく、次の瞬間、
腕にとんでもない圧力がかかる。
ひしゃげる、、、
その圧力が最大限の力を出したとき、俺は抗った。
すると、その言葉は消えた。
幻覚とかではなく、目の前できれいさっぱり消えてしまった。
「やっぱりこうなったか、、、」
仮面の男は頭を抱える。
俺自身も困惑する。俺が打ち消したのか?
「先ほどお前を連行する際に使った魔法も効力が消されていた。一体何をしたんだ?」
そんなこと言われても知らんし。ていうか
「魔法って何ですか?」
男はハッとした表情になり、だんだん青ざめていく。
「どうしよう、間違えて言っちゃった!どうしよう、フラット!」
すごい焦ってんな。そんなに大事な情報なのか?
「落ち着け、言ってしまったからにはもう引き返せねえ。こいつは一級行きだ。」
どこだよそれ。てか俺悪くないだろ。
「・・・仕方ないか。ごめんね、意図せず君は魔法を知ってしまった。けど知ったからにはもう君を五級へは返せない。頑張ってね。」
「はぁ、、、ん?」
「じゃあ一級まで送るから着いてきて。」
「もう?拷問は?」
「君には魔法効かないし、一級行き決まったしもういいよ。」
「せめてもうちょい説明してくれよ。」
「うーん、、、ならひとつだけ。君がこれから向かう一級はご飯出ないから。」
「それは大変だ!じゃなくてそもそもアダムとかアドムとかなんなんだよ。」
「簡単に言えば監獄の等級だよ。上から一級、二級、三級、四級、そして君がいた五級だ。」
なら俺は一番下から一番上まで行くほど大事な情報を知ったのか。
「結局魔法ってのはなんだ?」
「悪いがそれは話せない。自分で考えてくれ」
お前から話しといて、ふざけんなって話だ。無責任な奴だな。
「とりあえず移動するから着いてこい。」
「・・・はい。」
俺は奴らに挟まれて狭い通路に出た。さっきから思っていたがこの辺りは綺麗だな。確か俺がいたアドムは虫が集まってきそうなくらい汚い場所であったが、ここは大企業のビルみたいだ。
長い通路を歩いていくと、扉が見えてきた。大きな扉だ、3mはありそうだ。このデカブツですら開けるのに苦労してる。
「扉を抜ける前に忠告です。ここに入ると永遠に衰弱していくのみです。先ほども言った通り、ご飯は出ませんし、排せつなども仕切りはございません。そして何よりこの部屋は時間の進行がとてもゆっくりです。寿命はほぼ無限であると思ってください。追加でこの部屋に入るにあたり懲役を10000000000年延ばさせていただきます」
突然言われた二つのルール、寿命の無限化と懲役の延長、、、
「おい、それは永遠に苦しめってことか?」
「もちろんそうですとも。」
俺は一級という場所をなめていたのかもしれない。今さら事の重大さに気づくももう遅い。
「では入ってください。ご武運を。」
もう後戻りできない俺は言われるがままに部屋へ入る。すると門がドォンという音を立てて閉まる。ずいぶん乱暴だな。
あたりを見回すととんでもなく広いことが分かった。そして人が三人いた。年を食ってそうな痩せたじいさんとばあさんがひとりずつと40代くらいのおっさん一人だ。
「よお新入り。」
おっさんが話しかけてくる。
ん?なんか文字がはっきり見えない。まるでもやがかかっているみたいだ。
「お前さんは何をしでかしてきたんだ?」
どうしようか、これは答えるべきなのか?
何も言えずに固まっていると、
「まあ大体は分るけどな。お前さんはきっと知ってはいけないことを知っちまったんじゃないのか?」
目を見開く、驚いた、なぜそれがわかったのか
「なぜわかったんだ?」
そう聞くと、男は笑い出した。
「何がおかしい!」
「いやだって、ここにいる奴らは持たされた記憶以上のことを知っちまった奴だけが来る場所だからだよ。その顔から察するに拷問官とかから聞いちまったんだろう。かわいそうな奴だ。」
「どうしてかわいそうになるんだよ。」
「そりゃああれだ、あいつらはたまに意味もなく受刑者をはめて遊ぶ子供みてえな奴らだからだよ。だから奴らは俺に気づかない。」
どういうことだ、気づかないってなんだ、頭が混乱する。一つだけわかるのは、
「俺ははめられたのか、、、」
よく考えたらつじつまが合う。あれほど冷静沈着だった少年が情報を漏らし、焦りだしたこと、それをデカブツがいさめ、俺の処罰をすぐに決め、取り仕切ったこと、もしかしたら何かテンプレのようなものがあったのではないか、、、
なんで気づかなかったんだ、、、
記憶を失い、生きることさえ諦め、掴みかけた希望でさえ踏みにじられた。無性に腹が立つ、この弱くて惨めな自分自身に、、、
「お前さん今つらいか?悲しいか?それとも悔しいか?」
「悔しい。」
気づけば俺は即答していた。
「相分かった。俺がその悔しさを晴らしてやろう。」
そう言ったおじさんの言葉はもやなどは一切かかっておらず、ギラギラと光るルビーのような色で出来ており、何とも魅力的だった。
「さあ青年、人生をはじめよう!」




