143話「城への道」
父の力を借りて風をきりながらまっすぐ戦場へと向けて飛ぶ。初めて使う力だというのに使い方もどうすればいいのかもわかる、そして体全身から今までにない新たな漲りを感じている。砂漠の大地の先にあるところから大きな光の柱が伸び、その後に続くように赤い閃光が地面を駆け巡る。
(誰が戦っているの?)
「─────ッ!!」
「ブレクトルコクーン!!」
そう思う間を過ぎ去って前を見ればブレクトルコクーンの群れが私の行手を阻むために肉壁を作っていたあの大きい巨体がどこまでも自由な空を狭い空間に作り替えているように感じた。いた早く魔人王のいる場所に向かうためにはここを突破しなければならない。
時限的な理由から消耗をできるだけ避けたいと思った瞬間だった。
豪熱の火球がいくつも弧を描き私を避けるように放たれる。それらはブレクトルコクーンに直撃すると凄まじい爆発を放ち、その巨体を一瞬にして地面へと叩き落とした。その光景に本能的に怯えるブレクトルコクーンと訳がわからない私の肩に手が添えられる。
「お待たせしましたね!」
「クリス!?ど、召喚は!?」
「終わらせてきました。加えて完全回復もさせていただきましたから、この先は私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「……うん。もちろん!」
「では目の前の竜もどきを蹴散らしていきましょうか、目指すは一点、切り込むは魔人王!!」
クリスが腕に数百個の魔術式を展開すると即座にその手から無数の火球が放たれ、その連射速度は1秒に2個ほどの速さであった。同時に私も刀を抜いて真・ライキリを常時発動状態で一点突破を図る。後ろ横からの攻撃を捌くクリスと目の前だけを切り伏せる私のコンビネーションによってブレクトルコクーンの群れは一瞬にして叩き潰され私たちはまだみぬ砂漠の向こう側への空へと迎えられる。
「城っ!」
「さながら魔人王城というところでしょうか?王様は城を作るのが定番と言いますし。」
砂漠を超えた先にあったのは紫雷が轟続ける中に位置する城であった。城というには岩石の塊のような歪な形で、加えて至る所に化け物の顔が現れそうな不気味な城であった。下の方に正面玄関と思わしき入口があることを一目で確認したのち、今の標高と水平の高さに本丸があることを確認した。
私たちは正攻法で挑むほど時間は残されていない。ならばやることは一つだけなのだ。
「真正面から突破する!!」
「了解ですわ!」
私とクリスは共に平行にまっすぐ飛び、城の外壁を一撃で破壊して突き破って本丸の中へと雪崩れ込むような形で侵入した。不気味な外観には不気味な内装が似合うように中も同じような感じだった。城と自分たちが認識できていたのはある意味、変わった部類なのかもしれないと思うほどに私がみてきた城とは比べ物にならないほど粗末な作りだった。ところどころは補修の手が行き届いておらず、これでは廃城とも言えるほどである。
「随分と大きな扉があります。」
「……うん、それと中に。」
口にするのも悍ましい、自分の肉体が晩発するように鳥肌が止まらなかった。下せなかった溜飲をよく飲み込んだのちに私はその名を口にした。
「魔人王がいる……!」
「邪悪な気配。生命体相反するかのようですね、神性がないこの身でも奥にいるのがどんな生物なのか、本当にわかってしまいます。」
「……引き返せないよ。」
「上等というやつです。それに死ぬなら、ラナさんとの方がマシですわ。」
「そっか───」
互いに目を合わせて最後の会話をする。きっとこの奥に進んでしまえば後戻りはできない、生と死の命懸けの戦いは今までで散々慣れてきたつもりだったけど、やっぱり目の前の相手が自分より格上だと本能が告げると怯えてしまうのが私だ、でも隣にいる親友がそんなのを気にしないかのような自信な顔をしているとなんとも笑顔になって前を向きたくなるのだ。
この前向きな姿勢に何度助けられたんだろうと心の中で思う。自分自身に自由のある人生ではほとんどなかったけれども、それでもやり遂げられる勇気と決意をくれたのは紛れもなく彼女なのだと、そう信じた。
『っ!!』
安堵した時だった。扉を開けようとした時だった。扉のわずかにある隙間が紫色の邪悪な光包まれたと知った時、私の背中に滞在し続けていた槍達は一瞬で危機を察知して防御形態を取るように私達の目の前を覆った。クリスも防御魔術を展開し、私も同じくできる限りの防御手段として魔術によるカバーリングとプラノード抜刀術のヤマトを前へと出していた。
そして次の瞬間、目前を覆い尽くす雷を纏った攻撃が私たちを襲った。槍達が互いにバチバチと震えながらかろうじて私たちの身を守ろうとするもそれでも攻撃を軽減するだけであった、大出力のエネルギーを纏った一撃は簡単に槍達の神性の壁を突破して、私たちへと襲いかかる。クリスと私の防御魔術が攻撃を受け止め切るととんでもない負荷が体を襲う。防御魔術を確実に維持するために術式側が強制的に魔術回路の効率を上げようとするのが、私たち上級者が使うテクニックだ、それに則れば体にかかる負荷が大きくなるのは確かなのだ。
だがこの一撃の大部分を受け止めているのはクリスの術式である。では私が何をすべきかというのはすでに決まっているプラノード抜刀術は敵の核を見つけて一撃で叩き潰す技、感知していればどれだけ離れていても今の私なら必中にできる。
この場合はエネルギーの粒子の一つを確実に反発するように打ち返して、相手の一点を断ち切ることで解決できる。
「ぅく!!!!」
「見つけた!!─────ヤマト!!!」
先の先にあるものが確実に目に映る時、私の体は自然と動きが作られていた。本来打ち返すことは難しい粒子の一つをまっすぐ確実にそして正面から打ち返し、とてつもない量の向かい風を突っ切りながらたった一つの核を確実に叩き切る。
「っ────やみました!」
「行くよ!」
エネルギが一斉に終息していく感覚をクリスが言葉に出したと同時に私はその手を引っ張って風穴が大きく開いた扉の奥へと走っていった。




