139話「緑氷は死す」
「はぁぁぁっ!!!」
氷の魔術に深緑のクリスタルの力を込めて一つの塊を作り出す。そしてそれを5つほどに複製したのちに、やっとできたクリスの隙に叩き込む。空中を豪速球で移動する大きな深緑結晶にクリスは反応しきれないままそのまま押しつぶされ空中では外に大きな突起をはみ出していたクリスタル体が出来上がる。
「やったでしょ!」
思わず上がる息、力を一気に使えばこうなることは確かでもそれでもあの完全無欠のような女に隙を作ってこれだけの攻撃を叩き込めたのは僥倖だと思った。
「!?」
だが深緑のクリスタルの色がみるみるうちに赤くなり、ドロドロに焦がされるような様を見た時これは自分の思い上がりだと理解した。パリーンという音共にクリスが五体満足で炎をその腕に纏いながら破壊して破ってきたのはその直後だった。
「ならぁっ!!!」
苛立ちを胸に私は周囲へと飛び散ったクリスタルの破片を指先一つで操作してそれらを一斉にクリスへと浴びせた。もはや封印だの閉じ込めてでの侵食などでは太刀打ちすることはできない、この天才を打ち砕くには殺すほどの覚悟がない。
「だああああああっ!!!!」
私の手ずから作り出した深緑結晶をさらに分断させてそれをクリスへと浴びせる。凄まじい弾幕であるはずだ、人1人のスペースすら作れないようにそのようにした、通ろうとすれば瞬時クリスタルが肉体へと突き刺さる、移動の隙も場所も、ルート全て潰した。先ほどのように炎で打ち払うにしたって流石に連続使用ができるわけでもない!
「勝った!」
そう口にした。
クリスそれと共にクリスの目の色が確実に変わったと理解した。それは哀れみだった、それは悲しみだった、それは惜しむような瞳だった、
「そ、んな。そんな目で私を見るな────ッ………!」
一瞬だった。
クリスは私の叫びを聞きながら炎を纏ってクリスタルの群生攻撃を霧に消えながら避けるように残像を残して本体である私に接近してきていた。人1人すら入れないルートはまさかの人の形を保たずに移動するというあまりにも例外的な戦法で攻略され、私の叫びが終わるその時にはクリスは目前まで迫ってきていた。
「かっ」
「ごめんなさい。先輩。」
何を伝えるべきだったか、喉奥から言葉が漏れるより早くクリスの炎の刃が私の心臓を貫いていた。その瞬間私はまるで夢から覚めたような気持ちになった、先ほどまで抱えていた怒りも憎しみも、いっときの感情のものでいつか人間だった時のような非常に穏やかなものへと心は変わっていた、魔人族になってから私の心は怒りのままだった。全て感情だった理性的なものは何もなく、ただただ感情だけに従う生物だった。けれども指先から確実に肉体が滅びる感覚に恐怖が重なっていても、全てを悟った時のように穏やかだった。
「先輩、安らかに眠ってください。」
「……………ァ。」
体が塵となって、ボロボロと砂のように崩れ始める時、私が思ったのはいつか感じた。誰かに優しく頭を撫でられるような気持ちだった。
「っ、、ずっと。そこに────」
悪雲だったはずの空から光が差し込んでそこから懐かしい人の顔を見た。ずっと会いたかった、ずっと見たかったその笑顔がそこにはあった。それに手を伸ばそうとしてもあるのは自分ではない何かの手、それでも私をずっと見守ってくれていた─────。
<──|||──>
「さようなら。先輩、貴方は何も間違ってはいなかったのですよ。ただ、貴方を救える世界はきっとなかった、残念ですが私は貴方を救えなかった時点で、天才ではないのですよ。」
もう姿形も残っていない先輩に語りかけるように伝えた。




